アスパルテームについて主に畝山さんのブログ他を片っ端から読んでみた

最初に言っておきますが私は専門家の端にも引っかからない素人です。間違いが有ったらなるべく対応したいと思いますが、手に余る場合はそのように申し上げるかもしれません。
で、アスパルテームだかアステルパームだか判らなくなるアスパルテームですが。(ならない?)
ダイエットコークを始めとして様々な飲料・食品に使われている合成甘味料で、アスパラギン酸フェニルアラニンというアミノ酸でできています。砂糖よりも甘味が強いので、砂糖を減らしたり使わないことを売りにした製品に入っているワケですね。
ところがコレ、毒だと主張する人がいます。本当に毒性があるんでしょうか?
断って置きますが、私は別にアスパルテームを摂取しろと言うつもりなどありません。自分自身わざわざダイエットじゃない普通のコーラを選ぶぐらいで、なぜかと言うと味が気になるからです。アスパルテームだけでなくアセスルファムもエリスリトールも避けて砂糖の入ったものを選びます。
しかし気にならないのであればアスパルテームのような合成甘味料は糖分の取り過ぎによるリスクを避けられるメリットがあります。ですが嫌いだったり不安を感じているのであればアスパルテームなんて口に入れなくても生きていけますから我慢する必要はありません。また、合成甘味料は嫌だけど砂糖を避けたいのならこういうものも有ります。

マービー甘味料はトウモロコシなどの澱粉(デンプン)から作られる還元麦芽糖水飴を100%使用しています。
体内でインシュリンの分泌をほとんど促さないので、脂肪分と同時に摂っても大丈夫。つまり脂肪が体内に蓄積されず、血糖値も上昇させません。さらに、マービー甘味料は、糖尿病や肥満症などのカロリー摂取制限を必要とする方に適した低カロリー甘味料として厚生省の許可を受けており、発売以来25年以上にわたって、病院や薬局を通じて多くの方に使われています。カロリーコントロールが必要な方や、健康にダイエットしたい方など、ご家族皆様で、安心してご利用いただける甘味料です。

原料はトウモロコシなどのデンプンですし、麦芽糖もなじみがありますよね。食品は天然ものじゃないと心配な人でも大丈夫ではないでしょうか。これなら砂糖も合成甘味料も両方避けられます。
その気になれば果物の甘味を利用するとか砂糖が貴重だった時代の知恵も使えるでしょうから、探せば色々な方法を実践している人がいるのかも知れませんね。
ただし天然の材料を使った甘味料だから絶対安全というワケではありませんから注意するにこしたことはありません。砂糖でもそうですが、何であれ際限なく使うのはやめた方が無難です。

・妊娠中、授乳中の安全性については充分な情報がないので、通常の食品に甘味料として添加される量を超える大量摂取は避けた方がよい。

・血糖降下作用のあるハーブ、サプリメントや糖尿病治療薬との併用では、血糖コントロールに影響を与える可能性がある。II型糖尿病患者は注意が必要である。

ステビオサイドは血圧を下げる作用があるため、ベラパミルなどのカルシウム拮抗剤、血圧降下剤、血圧低下作用のあるハーブやサプリメントの作用に相加的に働く恐れがある。注意して用いること。臨床検査値などでもステビアが血圧に影響することがある。

ステビオサイドには変異原性、遺伝毒性、避妊活性、催奇形性などはみられない。しかしながらステビオールとステビオールの代謝物はin vitro で変異原性がみられた。
ステビアは、生殖に関して副作用をもつ可能性がある。ステビアの水性抽出物は雄のラットの精子の数を減少させ、精巣の重量を減少させる。ステビオールを食べたハムスターのメスでは子孫の数とその体重が減少する。

まぁ普通は大量に摂取しないでしょうから大丈夫だと思いますが。正直脅かしすぎですよね。「in vitro で変異原性」というのは培養した動物の細胞とか微生物で実験して見つかったということで、生きた動物だとまた違うのでしょう。でも妊娠中などは一応警戒してください。持病のある方も。
さてアスパルテームに戻ります。

えー、これはちょっと極端過ぎますかねぇ…でもアスパルテームが有害だという主張の根っこにあるものは見えていると思います。
具体的な害については発癌性・催奇形性・脳の異常・失明・躁鬱病などなど、重大なものが並んでいますが、根底にあるのは食品産業への不信、大企業と政府の癒着を疑う猜疑心、さらにアメリカの便利さにまかせたドラッグカルチャーみたいなものが日本の食文化を侵食しているという不安、といった所ではないでしょうか。
しかも「アスパルテームをめぐる攻防戦はFDA*1史上最大と言われ、いまだに語り草になるほどのもの」だそうで、そのような大反対にあっていながらレーガン政権になるとFDA局長が「元国防省の研究者アーサー・ヘイズ」に交代、アスパルテームが認可されてから現在に至るまで世界的なシェアで利益は莫大…疑いたくなるのも仕方ないかもしれません。

しかし仮に癒着が有ったとして、それはアスパルテームの有害性と関わりのある事なのでしょうか?
明確に害が有るのならそれを証明すれば済む話です。しかし害が無い事を証明するのは難しいでしょう。「強硬な反対にあっているが害は無かった」としたら?
十分な安全性を確認しないまま押し通したのであれば問題です。しかし現在まで長い間アスパルテームは使われ続けているワケで、本当に害が有るなら人体実験をしているようなものじゃないかと思います。それで害は証明されたのでしょうか?
「食品安全情報blog」にはアスパルテームの安全性を巡る記事が多く有ります。論文からの引用なども有ってかなり専門的な内容ですが、参考にさせて貰いましょう。

アスパルテームは毒か

「ADI」という見慣れない言葉が登場します。先にこういったサイトを見ておくと良いでしょう。

化学物質が有害な作用をしない量が「NOAEL」です。動物実験ですね。個体差が有るので複数の固体に投与して全て影響の無かった量を使います。*2
この時点でかなり安全な量ですが、動物と人間では違いもあるので念の為10分の1にします。それでも個人差で敏感な人がいるかもしれないのでまた10分の1にします。合わせて100分の1。
つまり動物に影響が無い量の100分の1が「ADI」です。
他にも「LD50(半数致死量)」とか「ED50(半数作用量)」とか載ってますが、半数致死量のような数値を出すにはそもそも死んで貰わないといけませんから、それだけ強力な毒性が無いと判らないでしょう。半数作用量にしても半数に害を与える程度の強さが必要ですよね。
量を増やすにしたってあまり膨大な量になってしまうと実験動物のラットなりに食べて貰うのが大変です。甘味料だったら甘味料を加えた餌というより甘味料しかない様な状態になってしまうでしょう。それで害が有ったとして、それは普通の餌をほとんど食べてないからじゃないの?ってことになりかねなません。偏食のラットじゃなぁ。
さて問題のアスパルテーム

イタリアのEuropean Ramazzini Foundation of Oncology and Environmental Sciencesが、2005年と2006年にアスパルテームを含む餌を与えたラットでリンパ腫と白血病が増加したと主張する二つの報告を発表した。EFSAがこの報告及びその他の研究を評価し、2006年5月に現行のADI 40mg/kg bwを変更する理由はないと発表した。

*3
「European Ramazzini Foundation of Oncology and Environmental Sciences」長いですが略して「ERF」は何度も出てきます。アスパルテームの有害性を主張する研究団体みたいです。

FSANZはアスパルテームの安全性を評価して食品への使用を認可した。FSANZはさらに2003年9月にアスパルテームの現状の摂取量を詳細に調査した。その結果平均的消費者はADIのわずか6%、高摂取群でADIの15%を摂取していることがわかった。この調査に基づきFSANZはオーストラリアにおけるアスパルテーム摂取量は健康に有害な影響が出る濃度より充分低いと結論した。

*4
「高摂取群」でさえも「100分の1」のADIと比べて15%の摂取量。仮に有害性が有ったとしても、この量で害なんて出るんでしょうか?

アスパルテームは砂糖の約200倍甘い甘味料で世界中でこれまで25年間ソフトドリンクや低カロリー食品などに使用されてきた。膨大な研究が、たとえたくさん食べたとしても、アスパルテーム代謝物が有害影響をもたらすほど蓄積することはないことを示している。アスパルテームをADI相当量摂るには成人で14本の砂糖無し飲料を毎日飲まなければならない。そしてなんらかの悪影響が出るにはそれを生涯毎日続けなければならない。

想定されたドリンクのサイズを知りませんが350ミリリットルでも14本はキツイですね。
わずかな使用量である事はアスパルテームのような高甘味度甘味料に共通のメリットで、様々なものが使われていますがいずれも微量です。

人工甘味料は、米国栄養学会ADAによれば、消費者がカロリーを削減し体重をコントロールすることや糖尿病のような慢性疾患を管理するのに役立ち、虫歯予防の可能性もある。

今日FDAが認可しているのは5つの人工甘味料で、これらは食品添加物として市販前に安全性を評価されて認可されている。認可された甘味料の典型的米国消費者の使用量はADI未満である。

アスパルテームは砂糖の200倍甘い。そのカロリーは砂糖同様4kcal/gであるが、使用量から考えるとカロリーなしとみなすことができる。ブランド名としては NutraSweetや Equalがある。1981年に初めて卓上用やガム、朝食シリアルや他の乾燥製品用として認可され、1983年には炭酸飲料に、1996年には全ての食品と飲料に一般用甘味料として使用認可が拡大された。

承認前にFDAはガンや有害影響がないという膨大な数の動物実験結果をレビューした。 この中にはヒトの摂取量の100倍以上高用量をラットに投与した研究も3つある。

アスパルテームはカロリーゼロでは無いんですよね。でも200倍甘いので使う量が200分の1です。
「ヒトの摂取量の100倍以上高用量」というのは通常摂取している量に対して100倍ということなのかADIに対してなのかどっちだろう。

アスパルテームは食べると体内でメタノールと二つのアミノ酸アスパラギン酸フェニルアラニン−に分解される。これらの物質は他の普通の食品からもっと大量に生じている。

フェニルアラニンが含まれるため、アスパルテームは遺伝的疾患フェニルケトン尿症の患者にはリスクとなる。この疾患の患者はフェニルアラニン代謝できないため、アスパルテームを避けるべきである。アスパルテームの規制には製品にフェニルアラニンを含むことを表示することを求めている。

どうもこの話が脳障害を起こすという誤解に繋がっているように思います。フェニルアラニンは他の食品にも含まれているのでアスパルテームに特異な問題ではありません。
工業用アルコールを使った劣悪な酒などで有害と知られるメタノールも微量なら食品に含まれる可能性があるようです。

アスパルテームは消化管でフェニルアラニンアスパラギン酸の二つのアミノ酸メタノール加水分解される。メタノール代謝によりホルムアルデヒド、次いで蟻酸に変換される。Soil & Healthの主張に欠けている重要な情報は食べる量が少ないということである。

実際メタノールをもっとたくさん含む食べ物は柑橘類やジュース、トマトなどたくさんある。どのような食品由来であってもメタノールは同じである。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070823#p13

2006年7月25日の記事は人工甘味料全般に触れていますが、サッカリンも不安を抱く人が多いと思います。

サッカリンは砂糖の200-700倍甘くカロリーはない。ブランド名としてはSweet'N Low、Sweet Twin及び Necta Sweetがある。サッカリンは卓上甘味料、焼いた製品、ソフトドリンク、ジャム、チューインガムに使用されている。

サッカリンは 1879年に発見され、1972年にリストから外されるまでは一般的に安全と認められる(GRAS)と見なされてきた。GRASは法律の定義では食品中に安全な使用の長い歴史があるか科学的根拠による。しかしもし新しい根拠により安全性に疑いがあればFDAはその使用を禁止したり安全性試験を要求したりできる。

1977年にFDAサッカリンが高濃度投与によりラットの膀胱ガンを誘発するとの懸念から使用禁止を提案した。それに反応して議会はサッカリン試験及び表示法Saccharin Study and Labeling Actを採択した。この規制は安全性研究が行われる間禁止を一時停止するものであった。同時にサッカリンを含む食品には、この甘味料に健康上のハザードがある可能性があり実験動物でガンを誘発することがわかっているという警告表示を要求した。サッカリンについてはヒトにおいて30以上の研究が行われた。

国立ガン研究所NCIによれば、さらなる研究の結果、サッカリンはヒトではガンを誘発せず、ラットにおける膀胱ガン発生メカニズムはヒトでは当てはまらない。

2000年にNTPはサッカリンは最早「発ガンの可能性のある物質」ではないと決定した。

2001年に連邦規制でサッカリンの警告表示の要求は取り除かれた。

*5
安全と認められていたものが後から使用を禁止された事で不信を招いたんですね。しかし現在は使用可能です。それはなぜでしょう。

このうち,グループ2Bに分類されるのが,実験動物に癌をおこすがヒトでは発癌性の問題はないと考えられる化合物などである。

この事例,つまり,かつては発癌性があり危険だといわれていた化合物が科学の進歩によって安全であることがわかった有名な例はサッカリンである。サッカリンはラットに膀胱癌をおこすが,これはラット特有の反応に由来し同様の反応は存在しないヒトには全く問題がないことが明らかにされている。

http://members.at.infoseek.co.jp/gregarina/I1H.html

リンク先に記述によればサッカリンは「グループ2B」です。

サッカリンが雄のラットの膀胱に対して弱い発癌性を示すことが報告され、ヒトでも可能性があるとしてFDAサッカリンの使用を禁止するよう勧告したのが1977年だそうです。ところがその後の研究で、サッカリンが雄のラットの膀胱にのみ発癌性を示すのは、高濃度の検体がもともと結石を作りやすい条件の雄のラットの膀胱で結石を生じ、その物理的刺激によるものだということが明らかにされました。これはヒトでは起こり得ないことで、その結果サッカリンは「ヒトに対して発癌性があると考えられる物質リスト」から外されています。

http://hw001.gate01.com/uneyama/sacch.html

猿を使った実験も行われ、その結果からも人に対しては安全であると考えられています。
他にアセスルファム-K・ネオテームスクラロースも紹介されています。ERFの話も出ていますが2005・2006年ということで前のと同じ話でしょう。
でもこのERFっていうのはどんな団体なのかな?

ERFって信用できるの?

イタリアの研究者らがアスパルテームの安全性に疑問を呈している。

研究者等は甘味料を投与されたラットが現在ヒトへ推奨されている量より少ない量でガンを誘発すると報告しているが、これはこれまでのアスパルテームが安全だとするほとんどの研究に矛盾している。

専門家らはこの研究は正統ではない方法で行われたもので、どうしてこの甘味料がガンを誘発できるのかを理解するのは困難であるとしている。アスパルテームは血流に入る前に分解されて通常体内に存在する物質になるからである。

イタリアのボローニャにあるCesare Maltoniガン研究センターのMorando Soffrittiらは8週齢のラット1800匹に最大3年の生涯にわたりこの甘味料を与えた。死亡後に組織を観察している。その結果20 mg/kgから雌の白血病が増えたとしている。WHOによればヒトにおけるアスパルテームの安全量は40 mg/kg体重/日で、これを超えるにはダイエットコーラ28缶以上飲まなければならない。

米国環境健康科学研究所の毒性計画議長のJohn Bucherによれば、通常このような試験ではラットは2年でと殺される。ガンは加齢とともに増えるので、発症するガンを全て見たい場合には死ぬまで生かす。しかし死ぬまで生かした場合、年齢の違う動物を比べることになるので通常の統計解析は問題がある。そのほかにもこの研究には奇妙な部分がたくさんある。

*6
まず、アスパルテームは分解されてタダのアミノ酸になるので、どうして害を及ぼすのか判りません。どういうメカニズムなの?という疑問があるワケです。そして今までの研究では害があるというデータが無いということなので、ERFの報告は他の研究と矛盾します。
通常の試験では2年でお終いの所を、死ぬまでずっと観察して癌になるものを探したみたいですが、どうも統計のやり方に問題があるようです。年を取ると癌になりやすくなるので年齢が違うと比較が難しいんですね。

実験の詳細は実験室内コロニーのSDラットを用いて生後8週間から0-10万ppmアスパルテームを生涯与えたものである。これは平均体重400gで20gの餌を食べるとしてFDAによるアスパルテームのADI 50 mg/kg bw/dayの0-100倍に相当する。対照としてこの研究所で過去20年間に行った実験の結果と比較しているが、個別の実験内容や全体の中のどういう例なのかは示されていない。RAMAZZINI研究所はこの実験で20mg/kg bwでもアスパルテームが多臓器発ガン物質であると主張し、これまでのバイオアッセイと結果が異なることについては自然死するまで飼育することと動物種の違いが原因である可能性を示唆している。COCの意見としては、自然死するまで飼育するというプロトコールは普通ではないこと、投与濃度の幅が非常に広いのに用量反応性が非常に少ないこと、最高用量はOECDの推奨する栄養状態に影響のない最大5%を超過し10%となっていること、飼料の説明がないが呼吸上皮の変化はアスパルテームの吸入による刺激である可能性があることなどを述べている。

*7
過去の実験結果というのがどういうものか示されていないというのは問題ですね。それじゃ比較した相手と何が違うのか判りません。死ぬまで観察するのも普通やらないということで使いにくいデータのようです。それに栄養状態に影響が無いように決めた量を超えて与えているので、その点でもやっぱり使いにくいでしょう。
「呼吸上皮」が変化したと報告されているみたいですが、飼料の説明がないということでアスパルテームをどうやって与えたのか判らないので、吸入させたとすれば吸入の刺激で変化したんじゃないかと疑われています。毒じゃなくてもそういうことは起きるでしょう。
「用量反応性」についてはこちらなど。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/kyh/res/dose.html
塩や砂糖みたいに安全と考えられているものでも大量摂取すれば毒になりますが、問題にならない量というのがあるワケですね。少量では安全な物質ならグラフにすると最初は横這いで途中から立ち上がる形になります。アスパルテームはADIが定められていますからそういうグラフでしょう。
タバコの例では真っ直ぐですがこういうのはどんなに僅かでも量に比例して影響があるということで、いわゆる発ガン物質はこうなるようです。この「閾値なし」になる物質はできるだけ排除した方が良いワケですが、アスパルテームの場合もそうなら過去の研究で判りそうなもんです。
投与濃度の幅が「0-10万ppm」ということで幅の広いデータが提出されたワケですから、それを見ても害が認められないというのはどんな結果だったんでしょう?
結局こんな評価に。

「毒性学のデータは非常に複雑なもので解釈には注意が必要である。全ての生命科学においてと同様偽陽性偽陰性がよくあり、そのようなデータを適切に解釈するには専門性が必要である。過度に単純化した解釈は間違った結論を導く。」

「最もわかりやすい例は最近のイタリアのラットでのアスパルテームがガンを誘発すると主張している研究である。これらの研究はアスパルテームやその他の食品成分の毒性について何らかの情報を提供できるようなものではなかった。実験に使用された動物は自然死するまで生かされ、すなわち加齢の結果を示すように、(加齢の結果、誰もが知っているようにそれは自然のプロセスで、必然的に死亡する)計画された。」

「実際この結果から言えることは、毎日ADIの100倍以上も与えられたにも関わらず、投与群も未処置群と同じだけ長生きしたということで、アスパルテームは安全であるようだということである。もしアスパルテームが彼らの言うように恐ろしく毒性の高いものであるなら、アスパルテーム投与群のラットは早く死ぬと考えるのが論理的である。イタリアの研究者らの主張は彼ら自身のデータから支持されない。」

間違った解釈だと言われた上に主張と逆の結果が見て取れると結論されちゃいました。
もっと詳細なのがこちら。

ERF研究の知見に関するAFCパネルの結論は以下のようなものである。

1. リンパ腫/白血病の頻度増加は、背景となる肺の慢性炎症性病変の高頻度と用量相関性の無さからアスパルテームとは関係ない。このような腫瘍は慢性呼吸器系疾患を患うラットの肺のリンパ肥大の結果生じることが良く知られている。この知見を説明する最も可能性の高いものは、このコロニーが慢性呼吸器系疾患に罹患しているため生じたということである。アスパルテーム投与群で僅かに増加したというのは偶然であると考えられ、従ってこれは無視できる。
2. 雌ラットの腎石灰化に沿った腎盂・尿管・膀胱の前ガン病変及び腫瘍性病変は、少なくとも高用量では投与に関連したものである。刺激性のある化学物質や腎盂石灰化を誘発する化学物質の高用量投与による影響は、ラットに特有のカルシウム代謝不均衡によるものである。従ってこれらの影響はヒトには当てはまらない。
3. 総悪性腫瘍数に関するデータはアスパルテームの発がん性の根拠とはならない。AFCパネルの意見としては、全ての腫瘍数の合計や腫瘍を持つ動物の合計を統計学的に処理することは正しくない。上述したように白血病や腎腫瘍は除外されるべきである。
4. 悪性神経鞘腫については、AFCパネルは腫瘍の数が少なく、用量相関が例え雄 で正の傾向があったとしても、幅広い濃度で非常に少ないことと診断の不確実性から、ERFの関連試験における全てのスライドの病理組織学的ピアレビューを行わなければ評価できないと結論した。

*8
1の「偶然であると考えられ」に引っかかる人もいるかも知れませんが、偶然でない場合にはある程度差が出るハズだということで、偶然と区別が付かない程度の差しか出なかったので無視されたという事です。
2では量が多いと障害が出る事を認めていますが、それはラットに起こりやすいもので人間は心配無いようです。
3は他の原因を考えられるものまで一緒に処理するなという話ですね。
4はもっと詳しく見ないと何も判らないということかな。
で、2007年に再びERFの試験が。

2007年に発表されたラットを用いた2つ目のERFの試験では、400及び2000mgアスパルテーム/kg餌の濃度(20 及び100 mg/kg体重/日)が用いられている。ラットへの投与は妊娠12日目から自然死までの間で、数は対照群が雌雄各95匹で低用量及び高用量群が雌雄各70匹である。著者らは悪性腫瘍のある雄の数が用量に関連して増加している、雄のリンパ腫/白血病頻度が高用量群で有意に増加した、雌のリンパ腫/白血病頻度が高用量群で有意に増加した、雌の乳腺腫瘍頻度が用量の関連して増加したと報告している。

ANSパネルは以下のように結論した:

・ 悪性腫瘍の頻度を合計して試験対象化合物の発がん性を評価するには、全ての腫瘍について発生時期や、腫瘍性でない、過形成、および前がん病変に関するデータを検討する必要がある。しかしながら著者らはこれらのデータを提出していない。リンパ腫や白血病のある動物の肺における炎症性病変の有無に関する情報が限定的にしか提供されていない。

・ 観察されたリンパ腫や白血病のほとんどが、慢性呼吸器疾患の特徴である肺の炎症性病変のあるラットで見られている。AFCパネルの先の見解通り、これらはアスパルテームの投与とは関係しないと考えられる。

・ 雌ラットの乳腺腫瘍の頻度ががん原性試験によりかなり違っていてしかも高頻度であることから、乳腺腫瘍頻度の増加はアスパルテームの発がん性の指標とは考えられない。さらにERFがもっと高濃度のアスパルテームを使用して行った先の試験では乳腺腫瘍の頻度増加は報告されていない。

全体として最新のERFの研究を含む全ての現在入手できるデータを基に、アスパルテームに遺伝毒性や発がん性を示唆するものはなく、アスパルテームのADI40 mg/kg体重/日を改定する理由はない。

*9
「著者らはこれらのデータを提出していない。リンパ腫や白血病のある動物の肺における炎症性病変の有無に関する情報が限定的にしか提供されていない。」ってまたかよ。
「観察されたリンパ腫や白血病のほとんどが、慢性呼吸器疾患の特徴である肺の炎症性病変のあるラットで見られている。」ダメじゃん。
「ERFがもっと高濃度のアスパルテームを使用して行った先の試験では乳腺腫瘍の頻度増加は報告されていない。」をい。
ついにはこんなことに。

2007年のRamazzini財団によるラットでのアスパルテームの発がん性試験論文について、Bernadene MagnusonとGary M. Williamsから、既に世界中の食品安全評価機関から問題点を指摘されていてそれらに全く答えていないこのような欠陥だらけの論文を掲載したEHPの編集者やレビューワーの見識を疑う、という手紙。

それに対するRamazzini財団のMorando Soffrittiの回答がすごい。用量相関の無さや偶然有意差がつく場合がある(単純計算でp<0.5を有意と判断するなら20回のうち1回は偶然有意差がつく)などの指摘に対して「どんな用量や年齢や体重でも、なんらかの影響が見られれば問題にすべきだ(whatever the doses at various ages and weights, the finding of any effect should be a cause for concern)」と答えている。

そういう意見が通るのがEHPという雑誌なのだけど・・・呆れるしかない。そんな理屈なら何だって有害判定されてしまう。環境系の人たちはそれがおかしいとは思わないのかな。それともわざと?

*10
ねぇ?

       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\      
    /   ⌒(__人__)⌒ \    <どんな用量や年齢や体重でも、
    |      |r┬-|    |      なんらかの影響が見られれば問題にすべきだ
     \     `ー'´   /
    ノ            \
  /´               ヽ              
 |    l              \
 ヽ    -一''''''"〜〜``'ー--、   -一'''''''ー-、.    
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒)) 

これって…

             /)
           ///)
          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
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      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     / 

って言ってるようなもんじゃないの?
はい結論。ERFの主張は信用できないし、アスパルテームの毒性は証明されませんでした。

10大学及び医学部から参加した国際専門家委員会が、1970年代以降からこれまでの500以上のアスパルテームに関する毒性学・臨床・疫学研究論文を調査した結果がCritical Reviews in Toxicologyの9月号に発表される。

委員会のメンバーであるBernadene Magnuson教授は、「メディアやインターネットでアスパルテームの安全性に関する疑問が常に話題になる。我々の研究はアスパルテームに関する全ての研究を包括的に評価したものである。」と述べている。

アスパルテームは現在の摂取量で、たとえ高用量摂取者でも安全である。アスパルテームに、たとえADIの何倍も摂った場合でも、発ガン性・神経毒性又はその他の有害影響があるという信頼できる証拠はない。

具体的に:

アスパルテームに発ガン性や発ガン促進作用はない
・ 記憶や学習能力などの神経学的影響はない
・ 行動や認知機能、神経機能や痙攣などへの影響はない
・ 生殖や乳汁分泌への有害影響はない
・ 糖尿病患者が使用しても安全で糖尿病患者の砂糖抜き食事に耐える一助となるかもしれない
アスパルテームと肥満に関連はない。逆に長期体重コントロールの一助となるかもしれない。
・ 脳腫瘍や血液系腫瘍発生との関連はない

ERFがあれだけ実験したんですからもう良いでしょう。「彼ら自身のデータから支持されない。」のです。
それでも心配だという人は居なくならないでしょう。害が有ると思ってるとそう見えるということだってあります。

気のせい?でもやっぱり気になる?

自分の息子(5-7才)は砂糖過敏症だと信じている35組の母子を対象にした試験で、研究者は子どもたちが砂糖群とアスパルテーム群に無作為にわりつけられると母親に話したが、実際には全ての子どもに与えたのはアスパルテームだけだった。この実験で自分の子どもには砂糖が与えられたと考えた母親は子どもの行動が多動になったと報告した、という有名な実験がある。保護者の期待が行動評価に影響することを指摘。

この場合砂糖を疑っているのにアスパルテームを与えたワケで、アスパルテームのせいだと思う人もいるかもしれませんが、重要なのは同じ条件なのに違う結果になったということですね。砂糖だと思い込んだ母親は影響があったと感じたワケです。
化学物質過敏症とか電磁波過敏症なんていうのもありますが、そういう症状は心因性だとも言われてます。そしてアスパルテームが体調不良の原因だと主張する人はやっぱり居るみたいです。
そういうものを気のせいだと言って片付けるのは簡単かも知れません。しかしイギリスのFSA*11は「逸話的根拠」も集め調査するそうです。

私は科学者としてある種の根拠は他のものより信頼できるものとみなす。例えば最良の方法で実施されてピアレビューを経て出版された二重盲検クロスオーバー試験の結果は誰かの経験談より重要である。

ピアレビューというのは専門家同士で審査しておかしな所がないか確認してから学術誌に載せてる、査読というヤツですね。
二重盲検クロスオーバー試験は…えーと。
薬の効果を試験する時、その薬の効果と比較する為に別の薬を用意します。可能で有れば何の効果も無い偽薬(プラセボ)を使うと判りやすいのでそうします。(例えば抗癌剤と比較するのには使えません。効かないと知ってて使ったら殺人になっちゃいますよね。)医師も被験者もどちらの薬か知らないのが二重盲検(ダブルブラインド)で医師だけ知ってるのが単盲検とか一重盲検(シングルブラインド)です。
クロスオーバー試験(交差試験)はグループAとグループBでそれぞれ違う薬を使った後、薬を入れ替えて続けます。グループAが薬A・グループBが薬Bの後は逆にしてグループAが薬B・グループBが薬Aです。公平ですね。
両方組み合わせて、正体を知らない薬を順に入れ替えて使えば完璧に近いだろうというワケです。
病は気からと言いますが、実際調子が良くなったり悪くなったりすることは知られています。ズバリ、プラセボ(プラシーボ)効果ってヤツです。さらに医師が薬の効果を知ってる場合はそこで思い込みが結果に対する評価を左右するかも知れません。だから二重盲検が必要なんですね。

とはいえFSAがリスクアセスメントを行う場合には、情報源による重み付けは行われるものの全ての根拠は重要でどれも割引されたりはしない。私は英国女性協議会の今年の10月の年次会合で逸話的根拠の利用に関して議論が行われ、「英国政府に意志決定の才に逸話的根拠の重要性を認めさせ、逸話的根拠を探し、記録し、厳密に調べてもしそれが本当であることがわかったら対応できるようなシステムを作るよう働きかける」動議が採択されたことに興味を持っている。

再現性のある根拠を示してピアレビューにより批判されることは科学の基本的プロセスであるが、FSAは科学だけを仕事にしているわけではない。FSAが助言を行ったり政策を決定したりする時には、より広範囲の根拠(個人の自由、規制上の制約、社会的経済的文脈、消費者のリスク嗜好)をもとにしている。この二番目の段階は科学とは異なり、最終的結論を出すまでに何度か繰り返される協議による。

私は逸話的根拠は、より厳密な科学的研究のきっかけとなると思う。その結果再現性のある根拠が得られればリスクが評価できる。

最近FSAはアスパルテームに関する逸話的有害事象についてどう対応するのかと尋ねられた。最近のEFSAの助言フォーラムで、私は人工甘味料アスパルテームの影響に関する消費者の逸話に基づく懸念に対応する研究プロジェクトを提案した。この提案は、自称アスパルテーム高感受性集団と普通の人との間で、報告された症状と生化学的パラメーターを二重盲検クロスオーバー試験により比較するというものである。EFSAはこの提案に好感触を示し、さらに検討するための会合を予定している。

「自称アスパルテーム高感受性集団と普通の人との間で、報告された症状と生化学的パラメーターを二重盲検クロスオーバー試験により比較する」もしもこの結果に差が認められたなら、アスパルテームの安全基準が見直されるかも知れません。アスパルテームが原因で調子が悪くなるという人が無視されているワケではないのです。
それは具体的には頭痛や胃の不快感であるようですが…

FSAはアスパルテームに反応すると主張している人たちに焦点を絞った新しいアスパルテーム研究を始める。アスパルテームについては一部の人々が頭痛や胃の不快感などのいろいろな症状が出ると逸話的に主張してきた。

FSAの主任研究者Andrew Wadgeは次のように述べている。「この研究はアスパルテームの安全性を調べるためのものではない。アスパルテームが安全であることは既に確認されている。この研究はアスパルテームの性だと狩猟されている逸話的報告を含む消費者の懸念に対応したものである。FSAの見解は、アスパルテームは安全に消費できるというもので、現状の使用法を変更することは薦めない。しかしながら我々は一部の人々がこの甘味料を食べると調子が悪くなると考えていることを承知しており、そのため何が起こっているのかについての知識を増やすことが重要だと考えている。」

ひらたく言えば「何が起きてるか判らないので調べます」って感じですね。さんざん調べて安全なハズのアスパルテームで問題が起きているのはなぜ?どうして?

科学にとって「逸話的根拠」の役割は何か?本当のところ逸話的根拠は科学的意味での根拠とはならない。それは観察で、しばしば主観的で、見られた影響は同時に変動した多くの要素による可能性がある。観察は我々に何かの問題の理解を助けることもあるが、それだけで終わるものではなく、試験可能な仮説にむけた最初のステップである。

従って逸話的報告は、関係のない人々の間で同じことが多数報告されるような場合には特に、しばしばさらなる検討に値する。科学に基づいた機関として、 FSAは科学的根拠に注意を向けているが、逸話的報告についても継続して寄せられる場合にはより詳細な検討が必要だと感じることもある。

本日開始するアスパルテームの予備的研究の場合がそうである。一部の人々がアスパルテームを含む食品や飲料で頭痛や胃の不快感を報告している。何年にもわたる膨大な研究とリスク評価によりアスパルテームは安全であることが示されているが、反応するという報告は継続している。従って何故人々がそのようなことを報告するするのかが理解できるのであれば良いだろうと感じた。

単にアスパルテームの毒性ということであれば科学的にはこれ以上調べてもしょうがないって感じなんでしょうね。調査するのもタダじゃないので、こういう問題は無視されてもおかしくない様に思います。しかしあまりに多くの訴えがあるのでしょう。アスパルテームは沢山使われていますしね。
アスパルテームが不調の原因だと思っている人を調べたら別の原因が出てくることだってあるかも知れません。みんな同じ条件だった場合にはそれが解決の糸口になるでしょう。
まるで違う条件の人から同じような訴えがあるなら?それは「しばしばさらなる検討に値する。」のだそうです。

*1:Food and Drug Administration:アメリカの食品医薬品局。有名ですね。

*2:LOAEL(Lowest Observed Adverse Effect Level:最小有害影響量)とかBMDL(Benchmark dose lower confidence limit:ベンチマーク用量信頼下限値)の時もあるみたいですね。

*3:EFSAはEuropean Food Safety Authorityで欧州食品安全機関です。

*4:FSANZはFood Standards Australia New Zealandでオーストラリア・ニュージーランド食品基準局です。

*5:GRAS(グラス)はGenerally Recognized As Safeで「一般的に安全と認められる」と訳される言葉。NTPはNational Toxicology Programで米国国家毒性プログラムです。

*6:WHOはWorld Health Organization世界保健機関…なんてみんな知ってるか。

*7:COCが何か私には良く判りません。イギリスのCOT「Committee on Toxicity and Chemicals in Food, Consumer Products and the Environment:食品・消費者製品・環境中の毒性と化学品に関する委員会」の発ガン物質に特化した部会であってるのかな?OECDって経済協力開発機構ですか?

*8:AFCパネルは「Panel on Food Additives, Flavourings, Processing Aids and Materials in Contact with Food:食品添加物・香料・加工助剤及び食品と接触する物質に関する科学委員会」らしい。

*9:ANSパネルは「Panel on food additives and nutrient sources added to food:食品に添加される食品添加物と栄養源に関する科学委員会」かな。

*10:EHPは「Enviromental Health Perspectives:環境衛生展望」かな。

*11:Food Standards Agency:食品基準庁