「犬と猫と人間と」しろえもんと二人のインストラクター

犬と猫と人間と - neko73のつめとぎ
ドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と」を観て書いたこちらのエントリなのだけど、大きな間違いがあることを指摘して頂いた。
監督が通い詰めた愛護団体でトレーナーを招きしつけを行った「しろえもん」の部分なのだけど、そのトレーナーに関して、最初に出てきた叱る方法の方を山本央子氏として紹介していたが、全くの別人である。
少し考えれば分かることで、叱るトレーナーに関しては非難が殺到することを避ける為か映画のパンフレットには載っていない。記憶が薄れないうちに紹介しようと急ぎ、ロクに確認もしないままパンフレットの丸写しで終わらせてしまったというのは酷い失態であり、反省しなければいけません。(丸写しにしても、セラピードッグに関わる様な方であるのにしつけ用の首輪で体罰を行うようなことがあるか考えれば気付いたはずで、重ねてマヌケと言わなければならない。)
全く逆の方法を用いる方と取り違えていた山本氏には大変失礼致しました。コメントで指摘頂いたホーリードッグ氏に感謝します。

また私は叱るしつけについて、

しろえもんの態度から考えると、叱る方法は番犬を作るには向いている。主人に従う一方で他の人間には従わず、自分の仲間と認めない人間がテリトリーに入ってくれば警戒と敵意で迎える。そういう犬を育てるにはあの首輪が最適なのではないだろうか。

と書いているけれど、それも妥当ではないとの意見を頂きました。
たとえ外敵に吠え立て遠ざけるのが目的の番犬であっても飼い主との信頼関係が無くては上手く機能しないという考えは当然でしょう。またしても浅はかですね。
苦しい弁解をすれば、叱る方法でも番犬ぐらいはなんとか務まるかもしれないし、人間の側が犬に配慮しなくて良いので気を使わず機械的に番犬を「生産」できるという程度のことなら言えるかもしれない、などと思うのですが、それを「向いている」というのは明らかに無理です。「なんとか使える」レベルの方法ではやはりダメでしょう。

二人のインストラクター

「犬と猫と人間と」の飯田監督はパンフレット掲載のインタビューでこう言っている。

その方に対して、文句を言うつもりはないんです。保護している犬に対して、それを依頼しているのは、愛護協会ですから。でも、この体罰式のしつけに対して、僕はやっぱり、ただ観察するだけということはしたくなかった。それは、この映画を見るお客さんに対して、自分の姿勢をそう見られたくない、ということでもある。言い訳というのか、僕はこれを納得していない、ということを表明しておきたかった。体罰式ではない、ほめるしつけの方を紹介して、できればそっちに切り替えてほしいと、意見を言わせてもらいたかった。

では、その褒めるしつけをする二人のインストラクター、山本央子(やまもとなかこ)氏と藤本聖香(ふじもときよか)氏とはどういう方なのだろう。

こちらの方は山本央子さんを講師に招いた「動物活用プロジェクトセミナー」に参加し、その様子を伝えている。
適性がすべて: 笑う犬のふやし方
「米国デルタ協会認定セラピーアニマルハンドラー」である山本さんはセラピードッグの第一人者であるようだ。ドッグセラピーを行う為には犬が人間を信頼していなければならない為、その教育方法も穏当なものになるのが当然というワケですね。

 人間にとって好ましい行動には報酬(→強化)を。好ましくない行動には罰(→消去)を。ただし、「罰」というのは決して体罰ではなく!体罰を与えるとその人を避けるようになる最悪の結果となります。山本さんは「無視」をいちばんオススメしています。

犬が人間を恐れるようになってしまえば、目的が上手く果たせないばかりか危害を加える可能性も出てきてしまう。だからセラピードッグに体罰はご法度だろう。痛みを与えるようなものでなくても、恐怖を感じさせる方法で罰を与えてはいけないことになるハズだ。

 犬の勉強を始めてから、セミナーや書物でたくさんのプロやアマチュアの方のしつけ方法論に触れてきました。みんなそれぞれ少しずつ違ったことを言います。犬という生き物を理解するための根底は同じなのですが、末端の部分は見事に違うんですよね・・。

 結局は、どれを取るか決める、ということなんですよね。自分の思いと、それぞれの犬に合った方法を自分で決めるしかないのです。罰ひとつとっても、無視がいいのか、ひと言叱るのがキクのか、天罰系がいいのか・・。目の前にいる犬の観察と判断です。あとは経験なんですね。
 でも、今回の山本さんの理論はわたしにとって、かなりしっくりくるものでした。この方の方法をウチのアリの今後のトレーニングに当てはめてみたいと思いました。
 最後に、山本さんが特に強調しておっしゃっていたこと。
「飼い主のことが大好きな犬に育てましょう」!!

「行動の強化と消去」がしつけの基本となっている。犬がどうしたいと思うのか、人間が望む方向に動機を与えて誘導する。望ましくない行動には罰も与えるが、それによって人間を避けるという、また別の望ましくない行動に繋がるのが体罰であるから体罰はやらない。犬と人間の望みが一致すればそれで上手くいくハズなのだ。*1
あなたの犬のこと、どれだけ知っていますか: 笑う犬のふやし方

飼い主さんがもっと自分の犬のことを知り、信頼関係を深めてくださいと。自分の犬をしっかりコントロールし、行動を予測し、ストレスサインが出たらそれを100%回復させる術ををもっていなければならない、ということを重ねて言っていました。犬にしてみれば、目の前に戸惑うものがあっても、「この人がいて励ましてくれればこわくない!」と思えるようなリーダーには安心してついていくものなのです。もっともっと飼い主さんがそういう存在になってください、とおっしゃっていました。

成程「頼れる飼い主であること」が犬のコントロールには重要であるワケだ。普段から不安を与えたりしていては頼ってくれないので、その意味でも罰で恐怖を与えてはいけないことになる。

 更にもうひとつ、山本さんのお話でなるほどと思ったは、しつけが行き届いている犬は、人ひとりVS犬一頭で暮らしているケースが多いということ。なぜなら、しつけ方や対応が統一してるから(ひとりの人が100%しつけるから)。もし家族3人が様々なレベルでしいろんな対応をすれば、犬は覚えるのに3倍かかると言っていました。そりゃそうですよね、同じ行動をしてもAさんとBさんの対応が違ったら、その行動がどのくらいいいことなのか、悪いことなのか、混乱しちゃいますよね。つくづく、一貫性というのは必要だと思いました。

これは犬に限った話でもないですね。相手によって必要な対応が変わるというのは人間だって混乱する。


こちらは新松戸動物病院による、山本さんを招いた市民向けしつけセミナーの紹介です。
第3回 山本央子(なかこ) 先生の 実用 犬のしつけ方セミナー 開催報告

山本先生のお話によれば、ほとんどのワンちゃんが人に対して歯をむいて攻撃してくる原因は、「恐怖」によるものと、いうことでした。特に、近年飼育頭数が増えている小型犬でのケースは、ほとんどが、人を恐れていることに原因がある、と説明されていらっしゃいました。
先生のお話は、冒頭から、
「犬に何かを教えるとき、報酬を与えてください」と始まりました。犬を飼い始めて、犬に人との暮らし方を教えるとき、それは、すべて人の都合に合わせてもらいたいために教えることばかりですから、「叱る」どころか、「ほめて」教えていくべきでしょう・・、ということです。ところが、私たち人間は、「いけない」「だめ」と「叱責」をしながら、犬に何かを教えようとしてしまいがちであり、これが、犬に人に対する恐怖を与え、攻撃性を呼び起こしてしまう原因となっていることがほとんどです、とご説明されていました。

人間の家庭という新しい環境に来て叱られるばかりでは、その犬は怖がるようになってしまうのですね。

たとえば、私たちは、よく「だめよ、じっとしていて!」とワンちゃんに呼びかけ・・そして、ワンちゃんがじっとしていてくれたら、そのあとで、「そう、いい子でした」とほめることがあります。このような場合、犬の理解力から考えてみると、「だめ」といわれたことが怖くて「じっとしていた」のであって、安心できたわけでもなく、また、じっとしていなければならない理由が理解できたわけでもないのです。そして、怖くてじっとしていたあとで、「いい子でした」といわれても、飼い主さんは、また、同じことをするわけですから、ワンちゃんは、飼い主さんとは、「いやなことを繰り返す人」と学ぶことになってしまうのです。これが続くと・・・ある日、我慢ができなくなって、うなったり、噛んで抵抗してみたり・・という行動を起こしてしまうようです。
では、どうしたら、飼い主さんの願っていることを、ワンちゃんにわかってもらえるのでしょうか・・。たとえば、じっとしていてほしいときは、動かないでいることを促すように声をかけ、表情も軟らかくしてほめ続け、同時にワンちゃんにとって良いことが起きるように、フードを与えてあげてください、と、いつも、山本先生はおっしゃっています。人の指示に、従ってもらいたときは、このようにすることが、犬の学習原理に基づいた方法なのです。私たち人間は、犬が、人の言葉の意味を理解できると思いこんでしまい、ついつい言葉で説得しようとしがちです。でもそれでは、飼い主さんの愛情は、伝わらないのですね。愛情のこもった、「叱責」や、「警告」の言葉は、言語の「意味」を理解できるわけではないワンちゃんには、伝わらないのです。ワンちゃんに何かを教えたいときは、「安心させながら、また、ほめ続けながら・・」ということが、とても大切なポイントなのです。そのことを改めて感じました。

褒める、安心させる、報酬をあげる。それが犬を従わせる為に必要なこと。犬にとって嫌な相手になってしまうと攻撃的に拒絶されるのですね。
第4回 山本央子先生の実用!犬のしつけセミナー「もっと楽しもう! 犬との生活、子犬を迎える準備」

アメリカの犬のしつけの漫画に「私の名前は、NO、NO、NO」と黒板に書いている犬というのがある・・と先生は、紹介してくださいました。つまり、飼い主は、犬のことを叱ってばかりいる・・それに対して、犬は、「NO=ダメ」が自分の名前だと認識してしまっていたりして・・という意味だそうです。日本語にすれば、「私の名前は、だめ、だめ、だめ、です」と犬が、自己紹介してる・・ということになります。そして、やめさせたい行動は、ちっとも減らないという事態です。さて、ご自分のワンちゃんの場合は、どうでしょうか。いつも、子犬に何か言うとしたら、「だめ」とばかり言っていませんでしょうか。ワンちゃんには、通じていないのですね。気をつけておきたいポイントだと思いました。

この漫画、どこかで紹介されているのを見たことがあるような。ともあれ、印象的な話ですね。
飼い主がなぜ叱っているのか、犬が解っているという保証は無いワケです。


今度は藤本聖香さん。
この方は獣医として動物病院勤務を経て渡英し、イギリスのトレーナー資格を得て帰国後Canine Relationz DogSchoolを設立しました。

トレーナーの紹介
自身で色々書かれているのでしつけに悩まれている方は参考になると思います。
ペットエコ トレッサ横浜店で“お悩み相談会”を開催してきました!

「犬は吠えます」「犬は咬みます」…これらは、犬にとって“当たり前”の行動です。その当たり前の行動を止めさせる、ゼロにさせるということは無理!です。ではどうするか? 1つの解決策として「これ以上吠えたらダメ」、「コレは咬んじゃダメ!!」、と一定の制限を設けることです。ただし、一方的に犬に対して「ダメ!」と連呼するのではなく、お互いに妥協点を見つけて下さい。そして、それを犬にわかるように伝えて下さい。犬も我慢、人も我慢です。その方がお互いに楽ですし、満足度も高いと思います。

「犬は犬」というのが藤本さんのよく書かれることです。吠えるのも咬むのも犬本来の性質だから妥協点を探るしかない。その為にはその犬を良く知る必要があるでしょうね。

片方の手はグー(こちらのご褒美が入っています)、もう片方の手をパーの状態で、ワンちゃんの前に出します。当然、ワンちゃんは素晴らしい嗅覚でグーの手を叩いたり、鼻で突っついたり、舐めたりしますが、ご褒美は出てきません。この時、パーの手をワンちゃんが興味を引くように動かします。ココが飼い主さんの腕の見せ所です! どうすれば自分のワンちゃんがご褒美を持っていない手に興味を持つか、飼い主さんが考えなければいけません。(*この時、絶対に答えをズバリ教えてはいけません。また、言葉で指示を出してもいけません。ワンちゃんに考える“ヒント”を与えて下さい。)そして、ワンちゃんがパーの手を触ったら、グーの手を開いてご褒美を与えます。最初は偶然で構いません。何度かやっている内に、ワンちゃんはこのゲームのルールに気が付きます。このルールに気づいた時!ワンちゃんの素晴らしい笑顔が見られるはずです! 試してみて下さいね(^^)v

学習能力は犬の性質として目立った部分です。犬はルールを覚えて行動する能力がある。

ワンちゃんの困った行動は、一見、飼い主さんに対して反抗しているように見えたり、困らせようと思ってやっているように見える場合があります。しかし、犬はそんなことを思って行動しているわけではありません。ただ単に、飼い主さんが犬にわかるように伝えていないので、“犬として”正しい行動、理にかなった行動をしているに過ぎません。犬にわかるようにちゃんと伝えて下さい。もちろん、犬なので、こちらの思い通りには動いてくれないこともあります。その時は、妥協点を見つけて下さい。ワンちゃんは自分にできる範囲で、ちゃんと答えてくれますよ!

間違ったことをした時だけ熱心に対応すると、犬はそれを期待してしまうことがあるようです。そういえば山本さんも間違った行動に対する罰は「無視」が良いと教えていましたね。
「犬との付き合い方」をお話させて頂きました...

犬に何度も言っているのに 同じ失敗をする、問題が悪化している…その様な場合、考えられるのは、飼い主さんの言っていることが犬には伝わっていないということです。人に話すように言っても、犬には伝わりません。また、伝わったとしても、犬が犬なりに解釈して、思わぬ誤解を生むこともあるのです。そしてその誤解が問題へと発展することもあるのです。

犬がどう考えているのか、犬からはどう見えるのか。それが大事なことですね。

「また失敗した…」「また〇〇した…」と、いつも悪いことばかりに注目しているとイライラが増し、さらに悪いことにしか目を向けられなくなります。犬からすれば、「悪いことをした方が飼い主さんが注目してくれる!」という解釈になってしまいます。誤解させないようにして下さい。

私は犬を飼ったことがありませんからその辺の機微は分からないのですが、構ってくれないより叱られた方がまだしもマシということもあるのでしょうか。人間にもそういう人、いますかね。

犬は指示されて動くより、自ら考えて動くことで、良い意味での自信をつけることができます。
自信がつくと、何か困った状況に陥っても、自分で対応を考え、行動ができるようになります。また、不安を感じることが少なくなっていきます。その歩みは犬によって違いはありますが、犬の表情や態度が変化していくことで、その成長を確認することができます。

自信をつけて、自分で行動する。飼い主も楽ができますね。問題になる犬というのは不安を抱えていて自立できないのかも知れません。
イギリスに行っていた時の話も書かれているのでいくつか紹介しましょう。
Doggy Trip in UK 28th - 30th  May

公園でオフリードにしたら、3時間帰ってこなかった…から始まり、どうやって外したのか未だにナゾなのですが、ハーネス(彼女の使っていた物は簡単に外せないんです)を無くすこと3回。それと一緒に付けていたロングラインも紛失。他の犬に対して攻撃を仕掛けた事もあるとか。他にも色々な問題を抱えて、 Sallyの家にrehoming(譲渡)されてきたSapphiです。

ココだけ聞くと、『ダメ犬』とレッテルを直ぐに貼られてしまいそうですが、彼女は“人が大好き”“子供が大好き”なんだそうです。ですから、時々学校で行っているEducational Talksでは大活躍しているそうですよ。

全部が完璧にできるワンちゃんだけが“良い子”ではありません。ほとんどのワンちゃんが“完璧”からは程遠いはず! ワンちゃんにはそれぞれ“個性”があります。それを伸ばしてあげること、理解してあげることが重要だと私は思ってます。もしワンちゃんが問題を抱えているのなら、その原因を一緒に考え、どうすればワンちゃんが良い方向に進んでいけるのかを考えていく。場合によっては、飼い主さんがワンちゃんを上手にコントロールしてあげられれば、問題が軽減される 場合もあります。まず、ワンちゃんを理解するように努力して下さい。そうする事によって、ワンちゃんも飼い主さんを 信頼し、お互いにとって良い関係が出来上がっていくと思いますよ。

問題のある行動をしていても、もしかしたら長所を持て余しているのかも知れません。やはり、どんな犬なのかを知ることです。
Doggy Trip in UK 31th May - 1st Jun

ワーキングライン(血統)の犬たちは、1日に10時間以上仕事をしています。そういうことが可能な、活発な血筋の犬たちなんです。その子たちがペットとして、家庭に入ったらどうなるでしょうか? 暇過ぎるんです。また、農場で飼われていた多くの犬たちは“社会化”なんてことは一切行われていません。なので、人間社会に連れて来られても、順応できない子が多いのです。この地域では、そういった問題を抱えた犬たちによく会いました。この話は何も、“ワーキングライン”のワンちゃんたちだけに限った話ではありません。形は違っても日本でも似たようなケースはあります。特に“社会化不足”という事に関しては、とても身近な話です。みなさん、ワンちゃんを選ぶ時には“ひと目ボレ”ではなく、じっくり本人の性格を見て、できれば母犬の性格を見てから選ぶ様にして下さいね。

渡英記録を読んでいると何度か話に出てくるジャックラッセルテリアなんていうのはそもそもが狩猟犬で、それはもうパワフルな犬種であるようですね。
どんな犬なのか知らずに飼ってしまうと、飼い主の負担も限度を超えたものになりかねません。よくよく調べておいた方が良いものです。
まぁ犬に限った話でもないですが、犬というのは人間との関わりが深いだけに多用な犬種がありそれぞれ個性が強いワケで、自分が知っている犬のイメージで決め付けてしまうと失敗に繋がると思います。
その犬種の生活というものを知った上で決められれば一番良いワケですが、実際は店頭で一目惚れなんていう人も多いんでしょうねぇ…


さて、こうして見てみると二人のトレーナーに共通しているのはなんでしょうか。
山本さんに関してWeb上で見られる情報はセミナーの参加記録みたいなものだけのようですが、犬が意味を理解しにくい叱責にはあまり効果が無いので褒めて育てるというのが彼女の方針なのですね。
家庭でのしつけをベースに信頼関係を醸成することでセラピードッグ普及に役立ててきた方ですし、犬が人を信頼することを最も大切にしていると考えて間違いないでしょう。
藤本さんはご自身で色々書かれているのでそれを読んで貰うのが一番ですが、獣医を経てトレーナーになったこともあり、人が犬の性質を理解してその犬に合った接した方をすることを考えています。あくまで犬は犬であり、犬なりに考えている。そのことを理解して良い関係を築ける様に指導している方だと思います。
結局どちらの方も、犬が人を好きでいられることを大事にしているのですね。ドッグセラピーは人間の為にする仕事ですが、人間を好きな犬でなければ上手くいかない仕事です。
そして、犬は社会性が高くルールを学習する生き物。人間を好きな犬は人間が褒めてくれることを進んでやります。だから、褒めてしつける。
人間が好きな犬であればこそ、無視すれば罰になります。犬は犬なりにどうしたら褒めてくれるか考えている。飼い主がするべきことは、犬の為にわかりやすい「状況」であることなのでしょう。
人間の都合や考え方は、犬にはわかりません。でも、犬は犬なりに考えている。そのことを大事にすれば、嫌われずにしつけることができるのでしょう。

*1:ちなみに行動分析学的にはその行動を増加させないものはその行動を強化する因子=好子としないようです。http://www.naruto-u.ac.jp/~rcse/s_atom/basics.html

今更ながら蒟蒻コラ騒動で思ったことを書いてみた

もう結構前になるが、マンナンライフ蒟蒻畑がパッケージに注意書きを加えたことに対して、その対応の過剰さ(ひいてはそのような対応をするまで追い込んだ消費者庁やメディア)を皮肉ったコラージュが広まり、意図が理解されずに非難される結果となり、ついに作者が謝罪するという騒動があった。

「お子様や高齢者は食べると死にます」…蒟蒻畑のコラ画像にTwitter民が釣られまくる → コラ画像作者が謝罪 | ニュース2ちゃんねる

常識的に考えればまともな企業が「死にます」なんてデカデカと書かれたパッケージで食品を販売するはずがない。画像の作者も謝罪文に「皮肉である」旨を書いている。

http://ideapad.jp/b350a73b/show/

私自身、蒟蒻畑が好物で、購入したパッケージをみて「絶対にたべないでください」の文言に、
いつも、もやもやした気持ちを感じていました。

それで「いっそ、こうすりゃいいだろ」という皮肉を込めた意味で、あの画像を作成しました

しかし画像が公開された当時の反応は様々なものがあって、中には真に受けてマンナンライフに問い合わせをする者もいたとかいないとか。このあたり正確に把握しているワケではないので、もしかしたら話に尾鰭が付いてるだけなのかも知れないのだけど、コラージュだとわかった時の「悪質なコラでした」と作者を非難するような反応はそれを想像するに十分だし、こういったまとめでも確認した者がいることになっている。

マンナンライフ 蒟蒻畑のパッケージコラ画像の拡散と収束?模様 - Togetter

蒟蒻畑ネタ画像の件
(1)マンナンライフのサイトの商品写真は当該メッセージのものに置き換わっていない
(2)画像を見るとメッセージ印刷エリア境界線が パッケージに対して斜めに走っている
(3)マンナンライフに問い合わせたという人が「事実ではない」旨の回答を受けたとの証言がある

よくある炎上騒ぎのようにマンナンライフが対応に追われるということがあったかどうかは知らない。マンナンライフの対応が話題になることは無かったことを考えると、大した影響は無かったのかも知れない。
それでも、過剰な規制を求めるような風潮に対する皮肉として「蒟蒻畑を愛好する人間」が作った画像であるのに、その蒟蒻畑を作っている企業の手をわずかでも煩わせてしまったというのは、何よりも作者にとって好ましい成果ではなかっただろう。
それに、こういった画像を見せて笑い飛ばせる人は最初から蒟蒻畑を問題視していない人だ。一方で真に受けてしまった人というのはどういう人なのだろうか?蒟蒻畑を問題視していて、マンナンライフが無責任に開き直ったと受け取り糾弾する意味で画像を取り上げたのではないだろうか?あの画像はマンナンライフにとってマイナスにしかならなかったと思う。
とはいえ謝罪文が本心とは異なる建前だということだって有り得る。騒がせることが目的で注目されればそれで良かったとか、面白いことを思いついたから作ってみただけで何も考えてなかったというのなら、目的はもう十分に果たしている。
ここで勘違いしないで欲しいが私は画像の作者を非難したいワケでは無い。端的に言ってあの「皮肉」は失敗しているし、失敗だから叩かれるのだという認識は持っているけれど、そのことによって改めて非難しようとは思わない。作者は失敗を受け入れ謝罪までしているのだからもう十分だと思う。不謹慎なジョークで怒られた、アレはただそれだけのことだ。
ここからが本題になる。

「騙される方が悪い」のか

この騒動を受けてこんな反応があった。
nabokov7; rehash : 蒟蒻畑コラ画像作者に謝罪させるような世の中じゃ、記者クラブだってクローズトなままだろう。

こんなの本気にする方がどうかと思うのだが、それでも「世間をお騒がせ」すると謝罪をしないといけないのが世の習わしらしい。いかにも日本らしくてくっだらねぇ。誰かが謝罪させたのか、作者が勝手に謝罪しちゃったのかは不明だけど、確かになんとなく騒ぎの責任を原作者に求めるような空気はあったようだ。リツイートの中には、騙された自分の情弱っぷりを棚に上げて「悪質なコラでした!」と追記しているものまで見うけられた。

こういう反応をしたくなる気持ちはわからないでもない。twitterではしばしば誤情報が飛び交う。安易に情報を拡散させておきながら自分の不見識は棚に上げ、「悪質なコラでした!」と作者を非難して終わりにするような中継者を無責任だと批判することには意味がある。
ブログやtwitterによって誰でも情報を発信できる時代になっている現在、誰かが発信した情報の再発信といえどもその情報を発信する責任は存在する。中継しているだけだからといって結果に知らん顔でいるワケにはいかない。その情報を中継するか否かを選択する権利があり、行使してしまっているのだから。
それを言っているのがこの部分だろう。

(1)キュレーションという行為によって与えられた(もしくは失われた) 新しいコンテクストに対する責任は、原作者にはない。

それには同意する。
しかしこちらはどうだろうか。

(2)情報は、発信した側ではなく受け取った側が責任をもつ。(それが嫌なら表現の自由と、知る権利とを捨てろ。)

中継者に再発信の責任が生じたり、受信者がその情報を信じたことによる不利益の責任を自ら負うとはいっても、そもそも発信された情報が無ければ受信者の責任も生じないのである以上、第一の発信者が追う責任というのは末端の受信者や中継者よりも重いハズではないのだろうか。
(所で、はてなブックマークに「汝、他人のリテラシーを試すことなかれ」*1というコメントがあったけれど、上手いことを言うものだ。他人のリテラシーをみだりに試すようなものではなく、然るべき時それが働くことを期待するに留めるべきものということか。)
さらにこのようなことが書かれているが、私はそれに同意できない。

空に向かってぼうっと口を開けていれば神様が美味しいものを口に入れてくれる、そういう呑気な世界はもう終わったのだ。かわりに、マツタケから毒キノコまで何でも自由に採り放題だけど、自分の目で全部見分けなければいけない厳しい世界になったのだ。

だから、基本的には、騙されたら騙された側に責任がある。
世間がお騒がせされちゃったのなら、騒いだ世間に問題があるのであって騒がさせた方には責任はないし、求めるべきではない。

「騙されたら騙された側に責任がある。」そういう考え方は支持できない。それはなぜか。

情報弱者」は守らなくて良いのか

世の中には一体、どれだけ詐欺事件の被害者が居るのだろうか。
詐欺の被害者はこう言っちゃ悪いが騙され易い人達だ。無知で人が良すぎるのに付け込んで食い物にされている。そして良い人とバカは紙一重だったりもする。
騙されるような「良い人」を対象にした悪徳商法で身近なものはなんといっても健康に関するものだろう。健康・医療に関する悪徳商法なんてものは大体が無知に付け込んで売るものだ。悪徳商法とまではいかなくても、ある商品に大きな効果を期待させる文脈で法律に違反しない程度の嘘があったとして、それに気付くだけの知識を持つ人は少ない。(意味の無い商品を買っていたとしても、健康を害するような危険なものよりはマシなのだけど。)

ある健康法や治療法が本当に効果のあるものなのか、専門の教育を受けていない素人が判断するのは難しい。長く関心を持って調べ続けていればある程度判断することは可能になるだろうけど、普通はそんなに手間隙かけて頑張ったりしないだろう。いくらネット上に専門家も居て情報が提供されているといっても、それを受け取る為の時間というコストだって馬鹿にならないから、全員に必要な情報を網羅して貰うことなんてとてもできない。
医療にはそういう「情報の非対称性」というものがある。医者が知っていて当然のことを患者は知らない。だから誰かが患者に間違った情報を与えた時、医者が一笑に付すようなデタラメでも信じてしまい不利益を被る可能性というのは決して低くない。しかも「良い人」は教えられた情報を疑わない可能性も高いし、そればかりか他の人に広めてしまうかも知れない。そういう良いカモがいるワケだから、医療・健康ネタの悪徳商法は後を絶たないのである。(間違った治療・健康法を伝えるのは悪徳商法だけではなく、間違いを信じてしまった善意の人ということもあるけれど。例え善意でも結果は同じことだ。)
保険医療制度というのはそのような悪徳商法(あるいは間違いを信じてしまった善意の人)による健康被害から患者を守る効果がある。保険が利く治療方法というのは既に効果が確かめられている治療法である。だから、患者は保険が利く治療を選択する限り自身の無知による失敗の可能性を逃れられる。
これが医療における「パターナリズム」の例だ。患者は保険制度によって守られている。専門知識を有するものが十分に安全で効果があると認めた治療法にしか保険が適用されないことで、保険診療を選ぶ患者は自分が知識を持たなくても正しい治療を受けることができる。
もし「パターナリズム」を全面的に否定するなら、このような保護は余計なお世話ということになるのだろう。患者は自分自身の判断によって、無効な治療を選択する権利があると考えることもできる。例えば癌患者がホメオパシーを選択して死ぬことが有ったとしても、それは患者自身の選択なのだから他人がとやかく言うことではないワケだ。意味の無い治療に金を突っ込んでドブに捨てるような真似をした挙句、症状を抑えることもできず苦しみながら死んでいったとしても、それさえ本人の意思によるのだから肯定して然るべきだと、そこまで言い切るならパターナリズムを否定したと言えるのかも知れない。
だけどそんな無茶な話が通るとは思えない。それでは多くの人が耐え難い苦痛と不幸を背負うことになってしまう。それに私は無知なせいで損をするような世の中を肯定したくない。医療の様に情報の非対称が問題となる場合にはパターナリズムを支持する。
人は自分が無知であることから守られるべきだ。何かについて他人と同レベルの知識を持っていない、持っていないということさえも必要に迫られるまで気付かなかった、そんなことは珍しくない。なのにそれを知らないことによって損害を受けるような仕組みがあっては安心して生活することができないだろう。(健全な社会を維持する為には最低限必要な知識を見積もって教育する必要もあるだろうが、何をどれだけ教育すれば良いのか、その話はここではしない。)
蒟蒻コラ程度の問題なら、大した被害も出ていないのだから、騙されるヤツが悪いと言って「自己責任」で片付けることもできるだろう。正直を言えば私だって、コラ画像を拡散させておきながら「騙された!」と作者を責めるような人間のことは好きではない。「情報の中継は自己責任だ、見抜けなかったお前も反省しろ。」という感覚も理解できるものだ。
けれど「騙される方が悪い」という態度が許容できるのは、これがかなりどうでも良い問題だからだ。医療に関するデマだったらどうだろう?誰かの人生を左右しかねないような嘘が拡散している渦中にあって、「騙される方が悪い」なんて言っていて良いのか?
そんな態度を取っていると嘘がどんどん広まってしまう。そうなれば得をするのは騙す側だ。なにも医療に限った話ではない。政治絡みの嘘が広まったらそれで世の中が動くかも知れない。情報を独占する立場にある者が嘘を広めて利益を得ようとした時、自己責任で放置する態度というのは騙す者にとって有利に働くことになる。
嘘を嘘だと見抜く為には適切な知識が必要だろう。けれど我々は全ての分野で適切な知識を持った人間になれる様な膨大な時間も持っていなければ専門的な資料も用意できない。誰だって知らないことが沢山ある。
勿論ちょっと調べれば判る嘘も多い。「ググれ」で終わることだって多い。専門知識を持っていなくても理屈がおかしいせいで嘘だと判ることもある。そんな稚拙な嘘には騙されない「賢い人」も少なくないだろう。だけど自分さえ騙されなければそれで良いのだろうか?
騙される人が多くなれば社会レベルの影響になってくる。健康被害が増えれば医療費が増加し保険料に反映されるだろうし、政治的デマの蔓延は正しい政策の実行を妨げるだろう。有りもしない危険が信じられれば安全なものが規制されて自由が損なわれるし、間違った環境保護活動は逆に環境を破壊する。それらのツケは結局自分も払わされることになるのだ。
そんなの冗談じゃない。

「自己責任」って良い事?

「自己責任」という言葉は分かり易くて気持ちの良いものだけど。これは強者の論理であることを忘れていると結局自分にも跳ね返ってくる。
騙される人を責めた所で状況は良くならない。責められたからって騙されなくなるのなら、騙されて苦労する人なんかいなくなる。だけどそんな風にならないのは、知らないことを一から勉強して理解するのは大変な上に、その知らなければならないことは沢山出てきてキリがないからだ。
勿論、騙される人が反省しなくて良いということにはならない。騙そうとするヤツが得をする状況を作ってはいけない。自分は悪くないという態度を取って平気でデマを拡散するなら、それは無自覚であっても悪事に手を貸しているに等しい。
守られるべき弱者であるからといって無知を正当化するのなら、パターナリズムの実行に必要なコストは上がっていく。自分の責任というものを自覚するのは大事なことだ。自己責任、大いに結構。それは立派な心がけであると思う。
けれど今現在無知な人間に対して、自己責任だから自分で判断して被害の責任も取れというのでは、結局デマが拡散することになってしまう。それもまた無自覚に悪事に手を貸しているということにならないだろうか?
パターナリズムを自分が無知であることの言い訳にするのも、自己責任論を他者に要求するのも、両方ダメだ。それは話が逆で、自己責任を心がけて自分は騙されないようにしつつ、他人にも目を光らせて無知な人間の被害を防ぐ様にしたら、色々なコストが下げられるだろう。そうすれば結局は自分の為になる。もっと単純に言うと「自分に厳しく人に優しく」という言葉になるけど、良くこの言葉で表されるような「人格者になれ」という意味じゃなくて、その方が効率が良いからそうするべきだと思う。自分と社会の為に。
例え一人で生きていくつもりだったとしても社会は大切だ。「人間は一人で生きているワケじゃない」なんてなんだか鬱陶しい言葉だけど、事実我々は一人で生きているワケじゃない。友人・知人と一切縁を切ってご近所付き合いもしない、家族も居ない、そんな状況で金だけは沢山あって引きこもるという選択ができたとしても、日々消費する食糧や水、電気、それに引きこもるなら何より重要な通信手段だって、この社会が無ければいくら金を払っても利用できない。
直接的な繋がりが無くても間接的には繋がっている以上、我々は一人になろうとしても「なりたくたってなれない」のだ。むしろ一人でもやっていけるような便利な社会に属している程、その人が社会システムに依存して暮らしている度合いは高い。都会に比べて地方は物価が安いけれど、代わりに「付き合い」を避けることが難しく、いざと言う時人に頼らなければならないし自分も頼られる。*2他人と関わらずに生活するというのは、人手の手配という面倒なことをシステムに任せてそのコストを金銭で支払うことのできる社会があるから可能な贅沢なのである。
そういう社会の恩恵を受けて暮らしている人間が、自分は大丈夫だからと言って他人の不利益を黙って見過ごすような真似をしていれば、いつかは自分に返ってくるのは当たり前の話じゃないだろうか。
多分「公共」についての話なんだろうな、これ。

こんなの蒟蒻コラごときでする話じゃないかも知れないんだけど、だからこそ考えてしまった。こんなのは大したことじゃなくても、「騙される方が悪い」という考え方がクセになっているとマズイ場合もあると思う。ことによっては自分が責任を取れる範囲なんか越えてしまうから自己責任論が何にでも通用するワケではないし、自分がそういう世界に生きているからって他人にも同じ感覚を要求するのは何か違うんじゃないかと思う。
「喧嘩上等、結果は自分で引き受ける。」という態度も決して嫌いじゃないんだけど、それは個人主義が貫かれて他人を巻き込まないからこそ見ていて清々しいと感じるのだろう。「騙される方が悪い」という考え方を広めることは、「オレが殴り合ってるんだからお前も殴り合え」と言ってるようなことにならないのだろうか。それだと喧嘩ができないヤツは困る。
喧嘩弱いくせに人の尻馬に乗って殴りかかったら殴り返された、みたいなのはしょうがないけど。

新しいメディアとネット

こういう話もあった。

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ツイッターは日本ではまだ新しい交流サイト。年齢制限もないため、コラ画像というものが存在することを知らないユーザーも多かったのかもしれない。

ツイッターは一度情報が拡散していくと、ねずみ算式に異常なスピードで膨大に伝播する特徴がある。そこを理解しておかないと、 今回のような騒動になることもある。制作者は「今回の件に関しては、私が思っていたネット文化……いわゆる2ちゃんねるのようなものと、ツイッターは性質 が異なるものであるという認識を欠いていた事が、一番の要因であると思います」とも述べているが、2ちゃんねるツイッターも匿名の文章投稿サイトなのだ から、基本は同じである。

同じじゃない、と思う。

twitter2chのユーザーは、重なる部分もあるが違う層も居る。
蒟蒻コラの作者が認識している通り、2chとか二次裏みたいなネット特有のノリそのままで問題ないと思っていたから、「普通の人」がする反応を予測してリスクを避けることができなかったのだ。
だから反応は二つに割れた。ネットに慣れていない「普通の人」が騙されたことにショックを受け「悪質だ」と感じ非難した一方で、「ネットのノリ」に慣れている人は騙された者を情報弱者と揶揄して「情弱畑」と呼んだり、「謝罪なんかする必要があるのか」と憤りさえもした。
twitterというメディアの特徴というのは、こういう層の違いを越えて情報が伝わっていく横断性にあると思う。RTの慣習が広まってシステムに組み入れられたことでも判るように、情報の回覧が手軽であることはユーザーの間で重視されている。
mixiなんかで友人を6回辿ると大統領に行き着くという話*3があるけれど、相手の許可が要らないtwitterのフォロワーだったら、友人を辿るよりもっとずっと無関係な人に辿り付くことだろう。
といっても6回も違う人のTLを経て孫RTされるような情報を発信することは稀だろう。その場合RTした人数の総計はどれ程になるのか、6回全て2人ずつRTすると考えても128人に達するから軽く3桁ということになるんだろうけど、余程注目を集める発言でなければ100はいかないものだ。
だけどそんなに極端な話じゃなくても、自分の発現が思わぬ人の目に届いてしまうことは十分に有り得る。それは何かの専門家かも知れないし、物凄く非常識な人かも知れない。自分のフォロワーというのは、自分の発言を見ようとするぐらいだからある程度自分に近い感覚の人が揃っているけれど、「フォロワーのさらにフォロワーの…」と辿るごとに感覚の違いは開いていく。それに誰かをフォローする動機は友好的なものばかりとは限らず、気に入らない人がおかしな発言をしないかチェックする為にフォローしている場合*4だってあるのだ。
一体誰が見ているか判ったものじゃない。
しかも届く先の相手の方では、特に自分の発言を見たいと思っているワケではない。知らないヤツなんだから。自分が2ch的な感覚では冗談で済むような嘘を発言しても、面白がって中継されるうちに2ch的なノリを知らない人の目に触れて、縁もゆかりも無い人から「本当のこと」として再発信される可能性が十分にあるのだ。
こんな誤解は2chの中だったらほとんど起きない。わざわざ見に来ている人しかいないのだから嘘があることぐらい分かってるハズだ。どこかのサイトへ転載された場合にもそれが2chの情報であるということは分かる様になっているか、明示しなくても特有な雰囲気をかもし出していたりして区別し易い。(区別できないようにしても多分2chユーザーに発見されて、荒らされまくって露見する。)2chというのはネットの悪い面を代表して「便所の落書き」としても知られているものだから、2chを嫌うような「良識のある人」が見るサイトはあまり2chの情報を出さないだろうし、どうしても必要なら後で嘘が発覚しても困らないように2chの情報であることを断っておくだろう。(リスクをちゃんと認識してれば、だけど。)
ところがtwitterでは注釈なんて付かない。自分が選んでフォローした人物はいつも見ているから発言の意図が追えるが、RTで流れてくる発言はどういう背景があるものか分からない。コメントが付けられた非公式のRTはともかく、公式RTは改変できない為に発言自体を見るしかない。そして、発言者が前後で補足していたとしてもRTは前後の文脈を無視して単独でされることが少なくない。そういうワケで発言者のアカウントを見に行って確認しないとその発言が2ch的かどうかは区別できない可能性があるけれど、そもそもtwitterでも2ch的な嘘が流れているという発想が無ければわざわざ確認はしないかも知れない。
だから2ch的なものをそれと知らずに見せられて心の準備ができていなかった人は騙されて、中には怒る人もいた。twitterが無かったら、もしかすると一生そんなものに触れないで済んだかも知れない人達と言ったらさすがに言い過ぎだろうか。
こうして考えてみると、蒟蒻コラに騙されて怒ってしまった人達も作者とは逆の意味でtwitterについての認識を欠いている。twitterはある意味「嘘の方からやってくる」メディアだ。2chみたいに心の準備をしてから嘘の中に分け入っていくのではなく、何の用意も無く油断している所に突然嘘が降ってくる。
それを認識していなかった為に理不尽さを感じて蒟蒻コラの作者を責めてしまったのだとしたら、作者にも被害者的な面がある…と言えないこともないのかも知れない。
まぁもっとも、コラなんか作れる人なんだから、何年ネットやってたんだって話もあるんだろうけど、そこは大した被害もなかったし自己責任で謝罪と削除までしたんだから十分だよね。あれ以上の対応なんて無かったんだろう。
twitterは確かに新しい部分があるメディアだから、2chで「嘘を嘘と見抜ける」ようなネット文化に慣れたベテランでも、それとは違う所に足を取られて失敗してしまうかもしれない。それにネット自体が利用者の増加で変質しているという部分もあるのかもしれない。新しいサービスはどんどん出てくるし、その利用者も新しい人が多くを占めるようになっていく。古い感覚に迎合する人も少なからずいるのだろうけれど、そうならない人が少なくて済むという保証はない。
古い「ネット文化」が通用しない機会は増えていくのだ。そこを認識せず旧態然とした態度でネットを利用していたら、衝突の機会は多くなるのが当然ではないだろうか。
見えない所で起きている変化に気付いていないとすると自分も危ないワケで、そのうち酷い目に逢っちゃうのかも知れない。
ちょっと怖い気もするね。

*1:「汝、神を試すことなかれ」というのはサタンが神の力を試してみるよう誘惑した時にイエスそれを退けて言った言葉。

*2:っていう話を聞きます。「リアル住職略してリア住」の蝉丸Pなんかも「マンパワーとコストのトレードオフで地方の安い葬儀が成り立っている」という話を度々語っている。

*3:ていうか元ネタは海外でfacebookかこれ。

*4:敵対的フォローってそうそうされないと思うけど、敵の多い人っていうのもいるんだよなぁ。

マーガリンはプラスチックだって?

はてなキーワードの「トランス脂肪酸」が余りにもアレだったので色々知恵を貸して貰って編集したっていう。おかげで色々見られました。
トランス脂肪酸とは - はてなキーワード
元々はこんなん。
このキーワードはまだ作成されていません - はてなキーワード

クローン病、アレルギー、痴呆、動脈硬化、脳血管障害、ガン、糖尿病、精神病やその他の様々な疾患との関係が懸念されている。
この様な危険性を懸念する者から「狂った油」などの異称も与えられている。
また、化学的な構造がプラスチックに似ているとされ「食べるプラスチック」とも呼ばれる。

食べるプラスック?(゚∀゚ )
どうもフレッド・ローという「自然派運動で有名な人」が発信源らしい。
このフレッド・ローなる人物は1965〜1973年まで自然食品店を経営していて、常連客の食品工業技術者から「水素添加した脂肪分子はプラスチックそっくりである」とか「脂肪専門の化学者たちは水素添加を『オイルをプラスチック化する』と言う」などと聞いたそうです。
1965〜1973の間に聞いた話ということで、この頃にはまだトランス脂肪酸というものが存在することは知られていなかったのではないでしょうか。トランス脂肪酸が注目されたことで発掘され結び付いた説なんですかね。
502 Bad Gateway

「ケーリー博士のガン療法」「自然食事典」の著者でアメリカの自然派運動で>有名なフレッド・ローは、つぎのような記述を残している。1965年から73年まで数軒の自然食品店を経営していた私は、ある日サン・フランシスコの常連客と話をした。彼は食品工業の技術者で、水素添加した脂肪分子を顕微鏡で覗くと、プラスチックそっくりであること、脂肪専門の化学者たちは水素添加を「オイルをプラスチック化する」と言うことを説明してくれた。
その言葉に、私はちょっとした実験をやってみた。マーガリンの小さな塊を小さな皿にのせ、その皿を店の裏部屋の窓ぎわに置いたのだ。これがバターであれば蝿や蟻やカビがむらがるに違いない。
しかし、この塊は2年たってもそのままで、ほこりにまみれ汚くなっただけだった。私は実験をここで止めた。すでに私はマーガリンが「プラスチック食品」なのだという結論に達していたからだ。

2年放置したってスゴイね。

「フレッド・ローのマーガリン大実験」・「腐らないフライドポテト」・「常温保存のショートニング」。これらに共通するのは、トランスファットを含む油脂を使っているということです。

水素添加した油脂は、変質しにくく日持ちするという特性から多くの加工食品に使用されていますが、これは防腐剤の代わりのプラスチックコーティングであると言っては言い過ぎでしょうか。

いやいや、「腐らないからプラスチックだ!」ってそりゃないでしょ。
ちょっと前に腐らないハンバーガーが話題になったことがあったけど、それは結局水分が少ないから腐らないのでした。
半年腐らないハンバーガーは果たして保存料だらけなのか(タイトル変更しました) - 趣味:科学

食品に水分が飽和水蒸気量の9割“も”ある状態でも微生物は殆ど繁殖できず、カビに至っても7割が限界という事ですので、パンが速やかに乾燥してしまったのならば、カビる事も腐ることもなく保存されたのは(素人感覚には)信じがたいですが、科学的にはおかしく無いという事になります。

ということで信じがたい事ですが、別段特になにをする必要もなく、カビや細菌が繁殖する前に乾燥してればカビない腐らないという結論になるようです。(追記)これはハンバーガに限らず、放置されて乾燥した食品や、自由水が少ない食品(油脂類とか保存食)にも通用する考え方という事になります。

乾燥しているものは腐らないので、保存環境によっては大抵のものが腐らずに済むのでしょう。
コーヒーフレッシュも「腐らないから危険だ」と言われているのを見かけましたが、あれも主な原料が植物性油脂で水分の少ない食品です。フライドポテトも油で揚げてるから表面に油膜ができて水分を利用しにくいとかそういう理由じゃないのかな?マーガリンも油脂ですから簡単には腐らないでしょうね。2年も経ったら大分劣化してるでしょうから食べたいとは思いませんが。
こちらによるとやはり長期間放置された場合は分離などが起きるようです。
http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/20090715/1247652511

20℃では、いずれの種類でも差が大きくあらわれ、特に通常タイプは2ヶ月目から油が遊離してくるなど変化が大きく、風味、色調、食感いずれも劣化が進みました。

 クリームタイプも2ヶ月目から、ハーフタイプは3ヶ月目から表面がやや黄色くなり、明るさがなくなりました。さらに、両タイプとも4ヶ月目から柔らかさが増してきて、7ヶ月を超えると油が遊離したり、油臭くなってきました。

 10℃ではどのタイプも色調が幾分か落ちてきますが、7ヶ月を超えると風味がなくなり、9ヶ月目からは油が遊離したり、油臭くなったりしてきました。

腐らなければ良いというものではありませんねえ。しかしこうなると、窓際に置いたマーガリンが「この塊は2年たってもそのままで、ほこりにまみれ汚くなっただけだった。」という記述は果たして本当なのかと疑いたくなります。寒ければ長持ちするんでしょうけど日差しがあると不利ですね。
さておき、マーガリンが腐らないからといって、トランス脂肪酸が「いわゆるプラスチック=合成樹脂」であるとは言えません。脂肪酸と合成樹脂の間には大きな隔たりがあります。
英語のplasticという語は形容詞で塑性を表すのでマーガリンもplasticと形容できますが、これは固形を維持したまま自由に形を変えられる性質を示すものに過ぎません。一般にプラスチックと呼ばれる合成樹脂(ポリエチレンなど)とトランス脂肪酸には大きな違いが有り、脂肪酸を水素添加によってその様な物質に変えることはできません。
ですから「オイルをプラスチック化する」というのは、融点が低く常温では液体の不飽和脂肪酸を扱い易くする為に、水素添加によって飽和脂肪酸に変えることで融点を上げ「塑性を与える=プラスチック化する」という意味ですね。
こちらを参考にさせて貰ったのですが、同じ脂肪酸でも液体だったり固体だったりするのは「分子間力」の違いなのだとか。
トランス脂肪酸はプラスチックに全く似てないよ (マーガリン=プラスチック説の否定) - 趣味:科学

飽和脂肪酸炭化水素がまっすぐ伸びているので、お互いの分子が綺麗に並びやすい形状になってます。ホームセンターなんかで売られてる様な木材みたいな感じで、綺麗にまとめることが出来るので接触面積も大きくなり、分子間力も強い物になります。
対して不飽和炭化水素は折れ曲がっているせいで綺麗に並べません。こっちは切り落としたばっかりの枝を想像してもらえると分かりやすいと思いますが、綺麗にまとめることが出来ないので、接触面積が小さくなる為に分子間力も弱い物になってしまうのです。

今回問題になってる脂肪酸は高級脂肪酸と呼ばれる物ですが、これは炭素数12〜程度の物を指します。で、大体生体に使われるのは炭素数22くらいまでの物です。プラスチックは一番単純なポリエチレンでも数百以上です。これじゃ分子間力なんて比較になりませんよね。

という事で、高々数十度の融点しかもたない脂肪酸と、少なくとも100度以上の融点を持つプラスチック。常温でも変形可能な塑性を持つ脂肪酸(油脂でも可)と、常温では変形不可能な熱可塑性をもつプラスチック。どちらも確かに塑性を持ちますが、質が全く違いますよね。結局これは分子の大きさに由来する差な訳です。

脂肪酸とプラスチックでは分子の規模が大きく違い、分子間力も比較になりません。他の性質も異なります。

最後になったけど、脂肪酸とプラスチックは末端のカルボキシル基の有無という差もあります。これ無視しちゃダメですからね。これがあるおかげで脂肪酸は体内に吸収されてエネルギーとなるのですから。

合成樹脂としてのプラスチックになる、というなら「カルボキシル基」もなくならないといけませんね。簡単にできることでは無さそうな気がしますがどうなんでしょう。
さて、もう一つプラスチック云々が出てくるサイトを見てみましょう。トランス脂肪酸を危険視するのは元々コレステロールを気にしていた人が多いのかも知れません。
「プラスチック化」された油脂=トランス脂肪酸

この不飽和脂肪酸は、血中コレステロール値を下げる作用があります。また、常温で液体なので、体内で血液をいわゆる「サラサラ」の状態に保ちます。

不飽和脂肪酸は常温で液体だから血液がサラサラになる」って、食べた油がそのまま血管の中を流れているんでしょうか。飽和脂肪酸ばかり摂取していても高脂血症でなければドロドロということはないと思うのですが。(大量に摂取しても吸収しきれないで排泄するでしょうし)

本来、動物性油脂にはトランス脂肪酸がわずかに含まれて、植物性油脂には含まれないのです。

植物性でも入ってますよ?

トランス脂肪酸は油脂類に最も多く含まれており、マーガリン、ファットスプレッドショートニングに特に含有量が多い製品があったほか、バター、植物油脂、動物油脂にも比較的多く含まれていました。

http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content.html

脂肪酸の総量が多ければトランス脂肪酸も多くなります。

脂肪酸は細胞膜を構成する物質ですが、トランス脂肪酸で形成されるとその細胞膜は弱く、免疫機能が低下することも指摘されています。

トランス脂肪酸で形成されると細胞膜が弱い?免疫機能が低下する?何をどうするとそうなるんだ?
追記:細胞膜を構成する不飽和脂肪酸がトランス型に置き換わってしまった場合流動性が低くなるということが考えられ、動脈硬化の要因になるようです。

多くのファストフード店や惣菜のお店で水素添加された油脂は、ショートニングの表示で利用されています。 フライヤーの中に入ってしまえば、液体化するので、まさか固体の油脂が使われているなんて、と驚かれるかもしれませんね。

まるで固体じゃいけないみたいですね。血管の中で固まっちゃうと思ってるのかな?

水素添加マーガリンの害が最初に指摘されたのはドイツです。水素添加マーガリンの発売開始時期・地域と、クローン病(腸の慢性炎症疾患)患者の出現時期と地域が一致したことがきっかけでした。

時期・地域が一致しただけ?その後どうなったの?
他のサイトも少し見てみましたが、どうもトランス脂肪酸を危険視する話はこればっかり気にし過ぎのように見えます。良くあるのが飽和脂肪酸が血液をドロドロにするから良くない、トランス脂肪酸もそうだという話ですが、それならトランス脂肪酸より飽和脂肪酸の方を問題にするべきでしょう。トランス脂肪酸を多く含むというマーガリンやショートニングも、トランス脂肪酸は副生成物に過ぎずその主成分は飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸を減らせばトランス脂肪酸の摂取量も減らすことができますし、トランス脂肪酸の割合が低くても飽和脂肪酸の摂取量が多かったら意味が無いハズです。
とはいってもトランス脂肪酸にリスクが無いワケではありません。
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トランス脂肪酸を多く摂取するとLDLコレステロール濃度を上昇させる作用が確認されており、飽和脂肪酸よりもその作用が強いという報告もあります。LDLコレステロールの変化は摂取脂肪酸のバランスと総量に影響されますが、トランス脂肪酸に関する実験を総括すると、摂取総エネルギーの概ね5%以上のトランス脂肪酸を摂ると影響が現われるとされています。

何をどのぐらい食べると「総エネルギーの概ね5%」に達するのかちょっと想像できませんが、農水省のリストが参考になるかもしれません。
食品中の脂質とトランス脂肪酸濃度:農林水産省
特に多いのはポップコーンとショートニングかな?ハヤシルウなんてのもありますがこれは溶かしますからねぇ。

トランス脂肪酸の摂取が乳癌などの発症リスク増加と関係があるとする疫学研究報告があります。しかし同様の研究で、有意差はないが増加したとする報告や有意差はないが減少したという報告もあります。
飽和脂肪酸やn-6系脂肪酸(リノール酸など)に関する疫学調査でも、同様に脂肪酸摂取により乳癌の発症リスクが増加したなどと報告されています。脂肪自体について過剰な摂取が乳癌や大腸癌の増加と関係があるとされていますが、偏った種類の脂肪の摂取は有害な作用をもたらす可能性があると考えられるので、摂取バランスが重要と言えます。トランス脂肪酸等に関しても、非常に偏った摂取をしない限り、乳癌等の心配はないと考えられます。

トランス脂肪酸に限らずバランス良く摂取した方が良い、というありふれたお話。

トランス脂肪酸で問題とされるコレステロール上昇作用や発癌リスクは、脂肪酸の摂取量と摂取バランスに関係するものです。コレステロール上昇作用は摂取総エネルギーの概ね5%以上のトランス脂肪酸を摂った場合に問題になるとされており、欧米やWHOの専門機関はトランス脂肪酸の摂取を総エネルギーの1%以下にするよう勧告していますが、日本人は平均で0.7%程度とされています。さらに日本では欧米と比較して、魚類などからの多価不飽和脂肪酸摂取が多く、逆に食肉等からの飽和脂肪酸摂取は少ないため、平均的な食生活をしていれば、トランス脂肪酸の影響は心配ないと考えられます。発癌リスクに関しても同様に考えられます。

酷い食生活をしてなければ影響なさそうですね。
ちなみにここでもプラスチックについて触れられています。

油脂には常温で液体のもの(なたね油・大豆油・米油・べに花油など)と常温で固形のもの(パーム油・ヤシ油・豚脂・乳脂など)があります。油脂の構造はグリセリンに3つの脂肪酸が結合しトリグリセリドと呼ばれています。脂肪酸は炭素原子と炭素原子の結合の仕方で様々な種類があり、グリセリンに結合する脂肪酸の種類や配置によってなたね油になったり大豆油になったりします。よって、常温で液体と固体の油は脂肪酸が違うだけで同じような構造であると言えます。
プラスチック(合成樹脂)の構造は油脂の構造と全く違い、エチレン・プロピレン・塩化ビニル等の重合によって構造されています。油脂にありますトリグリセリドはありません。

油には脂肪酸が有るけれどプラスチックには無い。そもそも別物、ですね。
全く違う性質のプラスチックはともかく、トランス脂肪酸とそうでないシス型の脂肪酸はちょっと分子のつながり方が違うだけです。そのちょっとした違いが有害かも知れないというのは生体の奥深さでしょうか。このちょっとした違いで匂いも変わります。

鏡像異性体は沸点や水への溶解度などほとんどの物理化学的特性や、 鏡像異性体を有しない化合物との反応性において全く同じ性質を示す。 しかし、鏡像異性体とは異なる相互作用をするため、その塊である人間にとっては別物である。 例えば(R)-リモネンはオレンジの皮などに含まれる芳香成分であるが、 (R)-リモネンはオレンジの匂いがするのに対し、(S)-リモネンはペパーミントの匂いがする。

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/6575/co2/132.html

それだけ生物は複雑なんですね。例えば目の光を感知する仕組みにはシス型の物質が使われていて、これが光の刺激によってトランス型に変わることで情報を送っているのだとか。

ロドプシン は視細胞において光センサーとして働く分子で、オプシンと呼ばれる蛋白質に レチナール が結合したものです。簡単に言えば目において光を感知する分子です。そして視細胞内でのレチナールに含まれるある二重結合はシス型であることがわかっており、これが 光を感知する機能に重要 なのです。と言うのは、光刺激による11-シス-レチナールからオールトランスレチナールへの異性化で大きな構造変化を起こし、その構造変化をシグナルの始点として光の情報が脳に送られるからです。もしオプシン中のレチナールが安定なシス型だと光刺激を受けても構造変化しないでしょうし、もちろん飽和でも同じことです。あえて不安定なシス型の二重結合を用いることで、光刺激によってトランス型へと異性化する構造変化を巧みに利用 しているようです。ちなみにトランス型へ異性化したレチナールは暗所で酵素的にシス型へと戻されるそうです。

http://chemistry4410.seesaa.net/article/66348300.html

かように複雑な人体ですから、トランス脂肪酸の害というものが有っても不思議はありませんね。農水省にも色々と情報があります。
トランス脂肪酸の摂取と健康への影響:農林水産省
まぁでも、結局はこれでしょうか。

部分水素添加油脂に由来するトランス脂肪酸は、健康への便益が無いことが立証され、明確な健康リスクのある、工業的な食品添加物と見なすべきである。

特にこれといって益は無いというワケでして。減らせるなら減らすに越したことはないと。
後はこちらがちょっと気になりますが…

対照試験及び観察研究では、特に、例えばインスリン抵抗性が既にある、内臓脂肪症又は運動不足などの危険因子を抱える個人において、トランス脂肪酸インスリン抵抗性を悪化させる可能性が示唆されている。

何にせよトランス脂肪酸だけを避けることはできませんから、油・脂肪の取り過ぎに注意するという対応に変わりはないと思います。

知らなかった

一応700日とか経過してるはてな市民なんだけど、キーワード編集に入ってみたらはてな市民である必要があるって表示されてしまった。
30日利用しないと一時的に権利を停止されてしまうというルールをまったく知らなかったよ。
というワケでこれ書いたら元に戻るのかな?

気持ち悪い釣り人

こんなエントリがちょっと取り沙汰されたことがあって、大筋としては多分こんな感じの話だと思う。

  • こういう作品に問題が無いとは言えない。にも関わらず一切配慮が無く公開されること、それを当然と捉える感覚に疑問を感じる。

それはまあそういうこともあるかなと思うが、なんというかこのエントリ、非常に気持ちが悪い。何か引っかかるものがある。こういう良く解らない気持ちの悪さに関わっても多分ロクなことにはならないので、本来このままスルーするのが良かったのだろうけど、やっぱりなんだか気になる。
どうしてそういう気持ちの悪さを感じるかというと、まずタイトルと内容の不一致がある。
取り上げた作品の特徴を示して「それだけで非難に値する」といかにも作品自体を非難するようなタイトルを付けているにも関わらず、中身を見るとそうではない。「作品に寄せられた懸念を無視する視聴者」が本当のターゲットなのだ。
どうやら注目を集める為の「釣りタイトル」のようだが、わざわざ書き手と読み手の間で齟齬が生じるような真似をしておきながら本文でそれに対するフォローをしたワケでもなく、そのせいで殺到した作品擁護のコメントに対して、自分の主張を正確に理解して欲しいという態度を取っても良いものだろうか?
作品を攻撃しているようでありながら実際には「鑑賞者の幼稚さが作品を台無しにすることもある。」と書いているように視聴者を攻撃している。しかしそれに気付かない人だってあのタイトルなら沢山出てくる。「良く釣れる」ワケだ。そういう人が作品を擁護しようと必死になる程、この作品を好む人は批判を許さないように見え、書き手の主張を補強することになる。
こんな回りくどい罠を張る様な真似を意図的にやっているなら最低だ。
この作品を選んだことも作品自体の問題よりむしろ視聴者の攻撃に適しているからだろう。そもそも批判の動機がYouTubeのコメントであるようだ。
とはいえ作品自体に全く問題が無いとは私も思わない。
アニメ版「Cat Shit One」は現代戦を扱っている。それも米国人と中東のテロリストの戦いだ。(中東であることは描写から明らかだろう。砂地にターバンで米国人と戦闘とくれば他の地域を連想するとは思えない。)
戦争モノというのはしばしば軍事マニアと軍事アレルギーの平和主義者の間で物議を醸す。しかも平和主義者には反米の立場を取る人が少なくない。現代を舞台にした戦闘で米国人が活躍するアニメを作れば反発を感じる人というのはいるだろう。
しかも主人公は可愛らしいウサギの姿で、子供が見ても喜びそうに見える。
軍事アレルギーの人ならこれを見て反発を感じるのは当然だ。子供に戦争を肯定させる気か!と言い出しても不思議ではない。反米ならなおさら怒るだろう。米国人が英雄的活躍をして中東の人間はテロリスト役なのだから。判断力の無い子供に米国中心の価値観を植え付けるのか!なんて騒ぎかねない。
教育や政治に配慮の上で作った作品ではないことはインタビューを見ても明らかだ。

「戦争は決して褒められるべきものではありませんし、僕が描きたかったのはエンターテインメントとしてのミリタリーアクションでした。だから、敢えてキャラの心情を深く描いたりするのではなく、極力シンプルに"戦地における友情"だけが伝わるようにしました」。

http://cgworld.jp/feature/making/cs01.html

こういう作品なのだからレーティングだとかゾーニングだという話になるのは解る。それは必要かも知れない。素直にそういう話でいいではないか。
さて、そんな作品を見てIslecape氏はどうしたのか。

 この作品が特別残虐とも、子供の嗜虐性を助長するとも思わないが、もし子供が見るとして、そのシチュエーションは、眉をひそめる大人に隠れてこっそり見るものではないかと思う。いい大人(たぶん)が口を揃えて「楽しめばいい」などというのは論外だ。

と作品自体は容認すると同時に作品批判を受け入れない視聴者を非難し、

こうしたミリタリーマニアの「内輪がよければそれでいい」的な意識、どこかで見たなと思っていたが、少し頭をひねったら思い出した。性暴力を主題にした成年向けゲーム規制問題のときに出た反応と重なるものがある。

戦争モノを好む「ミリタリーマニア」を狙い撃ちにして、「内輪がよければそれでいい」的な意識と称して性表現の問題と結び付け、自分が楽しむことしか考えていないから作品の批判を許さないのだと言いたげである。
そして、ダメ押しで「ミリタリーマニア」に「ロリコン陵辱もの好き」を重ねて後者への嫌悪感を転嫁する。

ファンシーなキャラクターと激しい戦いのギャップを「楽しい」と言うのは、年端のいかない少女が性的に虐待されているのを見て「興奮する」と言っているのとそんなに変わらないような気がする。

性表現の問題は親にとって気になることだから、子供ウケしそうなキャラクターの登場する作品と絡めればかなり悪印象を与えられるだろう。ミリタリーマニアは子供の敵というワケだ。少なくとも軍事モノなんて良い大人が大っぴらに楽しむ上等な趣味ではないということだろう。
こうして「ミリタリーマニア」を十分に貶めておいてから「鑑賞者の幼稚さが作品を台無しにすることもある。」と結ぶ。
あまつさえ、作品自体は批判していないような体裁を取りながらも、

 知人の著書ですが、いちおうまだ在庫があるみたいなので、よかったら買ってください。タリバンも普通の人です。

とこの作品がタリバンを名指しで悪役として描いているように誤解を招きかねない形で本を紹介する。タリバンを一方的に悪者扱いするなという主張は反米的な人にウケるから、これもまた反対側の方を持つことによる軍事オタクへの当て付けだろう。
こうやってうがった見方をしようと思えばいくらでもできる内容なんだから、作品を利用して軍事オタクを叩いていると受け取られても当然だろう。わざわざこんな風にしてるなら酷いもんだし、ワザとやってるのでなければそれもまた相当なもんだ。
単に議論がしたいだけかとも思うが、それにしてもやり方があんまりじゃないのか。
こんな文章を見かけたけれど、

もちろん不注意でなしに、ミルクをこぼす自由はある

しかしその結果を引き受ける覚悟はあるのか

http://d.hatena.ne.jp/islecape/20100408/rumor

ミルクこぼれまくってるんじゃないの。
こんなやり取りも見つけた。

僕はあの作品を「けしからん!」と主張しているわけではないので(タイトルだけ見るとそう見えるでしょうが)、その点弁明させてください。一番問題だと感じているのは、作品と鑑賞者が醸成する、あの作品を一方的に肯定する空気です。

http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20100719/p4#c1279583940

 人を誤解したり、自分なりに解釈するのはかまわないけど、自分が誤解されるのはイヤというのは少々都合が良すぎないでしょうか。

http://d.hatena.ne.jp/tyokorata/20100719/p4#c1279594807

「弁明させてください」ってアンタ。誤解を招くやり方をしたのは誰だよ。「不注意でなしに、ミルクをこぼす自由」でしょ?
まったく何考えてるのかと思ってtwitter見てみたんだけど…あんまり深く考えてなんか無さそう。困った鮫タソだ。(この人アイコンが鮫なのね)

釣りばっかり気にする鮫タソ

どっちかというと一生懸命書いた「流言とデマとTwitterhttp://d.hatena.ne.jp/islecape/20100718/rumor2があまり受けず、釣り題ぎみの「もふもふ以下略」の方が伸びるという悲劇。

http://twitter.com/islecape/status/18873909020

釣り題ぎみというか、釣り題そのものですが。「ただそれだけで非難に値する」……「避難」じゃなくて「万死」にしておけばよかったかな?(ティエリアかよ)というか、ブックマークの分裂が美しくないなあ…… http://htn.to/o8Cp4h http://htn.to/JtT3Xc

http://twitter.com/islecape/status/18874989258

タイトルで注目を集める気満々ですね。そこ頑張るなら中身工夫…したらスルーされると思ったか。

「週刊オブイェクト」のJSF氏に呆れられる鮫タソ

@islecape 貴方は宮崎駿の豚戦争物の論評から逃げている時点でヘタレだな、としか。あれはドイツ兵もソ連兵も豚です。

http://twitter.com/obiekt_JP/status/19035146139

@obiekt_JP や、どうも。件のエントリのコメントでも同じようなことを言われたのですが、ちょっとピンと来ないところがあって。いまブログの方で批判に答える文章を書いているのですが、よろしければその後お声がけさせていただきたいと思っています。

http://twitter.com/islecape/status/19066436828

@islecape や、もう興味無くなったわ、貴方の主張には何の価値も見出せ無いし。

http://twitter.com/obiekt_JP/status/19068013498

@obiekt_JP そうですか。まったく叩きがいのない相手にお気遣いいただきありがとうございました。「週刊オブイェクト」はかねてから拝読しており、大変勉強させていただいております。どうぞ今後もご活躍を。

http://twitter.com/islecape/status/19068360150

お気遣い?されてるか?

笹原監督登場で恐縮する鮫タソ

こんばんは 率直な疑問としてお聞きしたいのですが、islecapeさんのcat shit one the animated seriesに対する批判は誰の得になることを目指して書いたのでしょうか? RT @islecape 内容に対する印象はエントリに書いたとおりですが!)。

http://twitter.com/sasaharakazuya/status/19086547121

@sasaharakazuya 特定の個人・集団を利するつもりはありません。あえて言うなら「表現の自由」のためです。「無粋な」批判に「黙って楽しめ」で済ますなら、議論のスタート台にも立っていません。「黙って楽しむ」派に「聞かない自由」はありますが、「言わせない自由」はありません。

http://twitter.com/islecape/status/19242488722

@sasaharakazuya ただ、僕が適当に書いた粗雑な文章がこのようにいくらかの反響を呼んでしまい、本来批判すべき部分以上を巻き込んで作品を不当に攻撃してしまったことについては、表現するものとして弁解のしようがなく、その見通しの甘さと無責任について幾重にもお詫びいたします。

http://twitter.com/islecape/status/19242771558

盛り上がったんで、良しとしましょうよ! RT @islecape @sasaharakazuya ただ、僕が適当に書いた粗雑な文章がこのようにいくらかの反響を呼んでしまい、本来批判すべき部分以上を巻き込んで作品を不当に攻撃してしまったことについては、表現するものとして弁解のしよ

http://twitter.com/sasaharakazuya/status/19244072706

@sasaharakazuya 寛大なお言葉ありがとうございます。そうおっしゃっていただけるのであれば――ネットニュースから記事を寄稿しないかというお話があったんですけど、それをすると「一般層」に悪印象を与えてしまうと思い、丁重に後ろ足で砂をかけて断ってしまって。いや残念でした。

http://twitter.com/islecape/status/19245604855

「適当に書いた粗雑な文章」を「一般層」に見せられる自信なんか無いワケですね。「粗雑」は謙遜だとか言うんじゃないだろうな。
無粋と自覚しながら批判する自由を行使するって言うんなら、わざわざ無粋な真似をする価値というものを見せて欲しかったもんですが。広く一般に見せられる程の意義は無いと。

叩かれそうになると及び腰な鮫タソ

叩きがいのない標的で申し訳ない限りQT: @sasaharakazuya 少数派をみんなで叩かなくてもいいじゃないですか〜w! RT @obiekt_JP 監督、戦争しましょう。取り敢えずこれが手頃な標的です。⇨もふもふしたウサギが主演する戦争アニメは、ただそれだけで非難に値する

http://twitter.com/islecape/status/19033264922

すいません。やっぱり、戦いたいんですか〜? RT @islecape 叩きがいのない標的で申し訳ない限りQT: @sasaharakazuya 少数派をみんなで叩かなくてもいいじゃないですか〜w! RT

http://twitter.com/sasaharakazuya/status/19041526294

@sasaharakazuya いえいえいえとんでもない。いま反省文について考えているところです。映像表現はさすがの出来ですね(内容に対する印象はエントリに書いたとおりですが!)。

http://twitter.com/islecape/status/19066688527

へー反省文書くんだ。大変だなぁ。今度は丁寧に書くんでしょうね。きっと監督も見てくれますよ。
…ああ、やっぱり不毛だった。

水分補給に気をつけよう

ちょっと雨が降らなかったり風が無いと暑くてたまらないこの頃、ちゃんと水分を取らなきゃ体調を崩すというより飲まなきゃやってられないって感じです。夏というのは冷たいものを飲み過ぎてお腹を壊したりしがちな季節ですが、そもそも水分の取り方なんてきちんと知らなかったりするんですよね。
てなワケで色々参考にさせて貰いましょう。

水は飲むだけではなくて、食事にも含まれて居るんですね。代謝水は食べた物を燃焼させる際に発生する水のコトで、コレを併せれば半分以上は食事由来の水分なんですね。

想定される2500mlのうち飲料水は1200mlでした。代謝水が300mlで食事は1000mlだけど、食事の内容によって増減しそうです。和食だとご飯は水分多いですよね。味噌汁とかスープは食事に含まれるのでしょうか。野菜や果物を好む人も多めになるのかな?

■汗かいた(下痢をした)→水分補給→低張性脱水

■汗かいた→飲まない→高張性脱水

だいたいこんな感じかなぁ?

脱水のタイプによって自覚症状も異なるし、水分補給の仕方が変わってくるのですね。だから、ただ単に水をがぶがぶ飲めば健康になれるというわけじゃあないんです。

脱水に種類があるなんて考えたことも無かったって人が多いかも。

  • 水分だけ補給してると液が薄まって浸透圧が低くなって低張性脱水
  • 水分を補給しなくて液が濃くなると浸透圧が高くなって高張性脱水

低張性脱水は知らないとやらかしそうです。高張性脱水は頑張り過ぎるとなっちゃいそう。
浸透圧なんて良く解らないという人もいますよね。塩や砂糖を沢山水に溶かすと、少し溶かした水より浸透圧が高いです。濃い方が高いです。浸透圧が低い溶液と高い溶液を、溶質(塩や砂糖)を通さず溶媒(水)を通す膜で仕切って入れると、溶媒(水)は浸透圧が高い方へ染み出します。水道水が目や鼻に入ると痛いのは水の浸透圧が低いせいで、細胞に水が入ってきて膨らむのだそうです。
…低張性の脱水が酷いと細胞膨らんじゃう?水分が多いと浸透圧を下げる為にナトリウムポンプというのが働くみたいですから破裂はしないでしょうけど、塩分がどんどん薄くなっちゃいますね。高張性だと水分がどんどん抜けそう。電解質は色々な働きをしてるハズなのであまり足りないと危険でしょうね。脱水症状を起こさないように水を飲んでいても塩分が足りないと痙攣を起こすなんていう話は聞いたことがあります。熱痙攣ていうのかな。肉体労働やスポーツに関わる人は知ってるんじゃないでしょうか。

図中に対応法を書きましたが、大切なのは脱水の原因を除去することだと思います。アタリマエなのですが、原因が無ければ脱水はおこりませんし、原因をそのままにしていては、脱水を繰り返すことになります。また、原因によっては基本の対処方法が不適切になる場合もあります。

図にありますように適度な塩分の飲み物が基本で、重症なら病院に行くべきです。
病気の人はもうちょっと大変みたいですね。

血糖値が高くなることで血液の浸透圧が高くなり、体内全体では水分は足りていても細胞内では脱水状態という事になります。これは水分を補うだけではだめで、血糖のコントロールが優先されますね。

以上のように、水が足りないからといって、ただ単に水をガブガブ飲めば良いということは無いのです。うっ血性心不全の持病がある人は、塩分を控えめにし、必要に応じて水分量を調整します。ガブガブ飲むと浮腫を促進しかねません。

糖尿病の人は水だけ飲んでもダメ。うっ血性心不全の人はうかつにガブ飲みしちゃダメ。
他にも色々。

高張性脱水は、喉が渇いてしょうがなくなるのが一般的ですので、自分で自由に水を飲める状態にある人は殆ど心配する必要は無いといっても良いでしょう。気をつけなければいけないのは、喉の渇きを自覚出来なくなった高齢者です。予防策としては、決められた時間に適量の水を飲む習慣をつける事が大事です。気温が高くなると不感蒸泄が増えますので、室温によって摂取量を調整することが求められます。

お年寄りは自覚的に水分を取る必要があるのですね。温度も考慮するのは結構大変かも。

消化管が未発達であり、免疫力も高くない時期ですので、下痢や嘔吐により水分が急速に失われる事がよくあります。吸収の良い経口補水塩を事前に準備しておくと良いでしょう。腸に炎症を起こした後は乳糖分解酵素の働きが低下する事がよく見られますので、乳製品は控えた方がよいでしょう。

いざと言う時の経口補水塩。備えあれば憂いなし。

何の為に汗が出るのかというと、体温を下げる為に汗をかくのですよね。(アタリマエすぎてすみません)しかし、汗の量が一定時間に一定以上の量となると、水分が体を伝って流れ出るようになります。汗で体温が下がるのは、気化による吸熱反応によりますよね?気化が追っつかない程の汗では、失われる水分の割に体温は減少しないのです。でも、体は熱いから汗をかこうとする・・・悪循環ですね。水をかけて体を冷やしてあげる事や汗を蒸発させやすいよう、タオルで拭き取ったり、適切なウェアを着るなどの対応が必要になります。

速乾性のスポーツウェアは脱水対策にもなるのですねー。健康の為にスポーツするならこの辺はお金をかけた方が良いです。身体を壊しちゃ意味無いですし。

ビールはアルコール飲料の一つで、このアルコールとはエタノールのこと。実は、このエタノールというのは利尿作用が有るんだよね。で、この利尿作用というのが、vasopressinと呼ばれる抗利尿ホルモン【ADH】(この場合アルコール脱水素酵素と紛らわしいなぁ)の放出を抑制する為に起こるものなのだ。

バソプレッシンは腎臓の尿細管に働いて水の再吸収を促進する作用を持っている。これが十分に働かないと、腎臓で濾過された水はじゃ〜じゃ〜と流れていってしまうのだ。脱水状態のヒトがビールで水分補給をという考えは、実のところ命取りとなりかねない危険な行為なのだった。せめて、アルコール度数3%くらいの飲み物じゃないとね。最近のビールは5%オーバーばっかりだから尚更だ。ウォトカなんて自殺行為かも知れないね。

成程、酒を飲んでるとトイレが近いのは沢山水分を取ってることだけが理由ではないんですね。再吸収が止まって、いくら水分を取ってもどんどん出て行っちゃう。こんなに飲み物を飲んでるんだから大丈夫とは言えないのでありました。
酒に限らず飲み過ぎるのは良くないです。最近はデトックスなんて言葉が流行ったりして、水を沢山飲むと健康に良いとか痩せるなんて話も聞きますが…

同じ1日4リットルでも危険な場合と比較的危険性の少ない場合があると思う。例えば、4リットルの水を1時間250mL程度の速度で16時間かけて飲んだ場合と1時間とか2時間程の短時間にまとめて4リットル飲んだ場合を比べれば、危険性は断然後者の方が高いと思う。腎臓の処理能力を上回る可能性が高いから、電解質異常を引き起こしてもおかしくない。死ななくても具合が悪くなる事請け合いなので、ガブガブ、グビグビ飲むのはやめておいた方がいいよね。

海外で「水中毒」になって死んだ人がいましたね。コンテストの商品が欲しくて無理をし、3時間超で7.5リットルも水を飲んだとか。
普通に飲める量以上を飲むのはやめた方が良いということです。ダイエットや美容の為に無理して大量に水を飲むのは身体に毒です。

抗利尿ホルモンの分泌調整がうまく行かない若しくは、腎臓でうまく作用しないヒトは大量に水を飲んだ場合、水の排泄が不十分で低ナトリウム血症を起こしてしまう危険性が高いと考えられる。でも、普段生活している上では大きな支障が無かったりするから、大量に水を飲んだ時に深刻な状態になって初めて気がつく事なんて有るかも知れない。自分が高リスク者であるのか否か分からないのだから、「水を飲めば健康になる!」と、無茶なガブ飲みはやっぱり控えた方が良いと思うよ。

健康になると思ってたら知らずにロシアンルーレットをしていたなんてのはイヤですね。

水を飲むことで痩せることができるかも知れないが、その場合は体をおかしくする可能性が高い。体を壊す意味で痩せるというわけだ。意外に思うかも知れないが、凄く冷たい水を大量に飲む方が、暖かい水を飲む場合に比べて痩せると考えられるの。というのは、体温よりも低い温度で体内に入ってきた水は十分に温められて、消化管を通過、吸収され、血管を経由し様々な経路で排泄される。水は人間が利用できるエネルギーを持たないから、当然水を温めるエネルギー分を余計に体は消費することになる。つまり、水が冷たく量が多いほど、余計に体はエネルギーを消費することになるのだ。それはその分痩せるという事を意味する。

又、冷たい水の方が胃に長くとどまる傾向にあり、満腹感は維持しやすい。更に、冷たい水をガブ飲みすることで消化管の機能低下を来たし、食欲低下をもたらすことも考えられる。体の事を考えれば、こんな方法で痩せようなんて思わないで欲しい。

冷たい水は余計にエネルギーを消費する。それにお腹がいっぱいになるし消化も悪くなって食欲が低下する。うーん、夏バテを避ける為には飲み物に気をつけないといけませんねぇ。
でもどんな飲み物が良いのでしょう?記事中でこちらがリンクされていました。同じ方の書いてるものですね。

 さて、体液の浸透圧はだいたい、280 mOsm/Lだそうです。
 この浸透圧に注目して液体を分類すると・・・
 体液よりも高いもの・・・ハイパートニック
 体液とほぼ同じ・・・・・・アイソトニック
 体液よりも低い・・・・・・ハイポトニック

 この3種類に分けることができます。
 そういえば、テレビのスポーツドリンクのCMで、「アイソトニック○○」なんてフレーズを聴いた覚えがありますね。
 やっぱりアイソトニックが水分補給に良いのでしょうか?
 
 ところが、必ずしもアイソトニックが水分補給に最適というわけではないみたいです。
 200 mOsm/L程度の浸透圧(ハイポトニック)の飲み物が腸から素早く吸収されるのですね。
 だから、薬局ではORS(経口補水塩)がおいてあったり、ペットボトル飲料にはハイポトニックを売りにした商品がにぎわっていたのですね。

ハイパートニックだと浸透圧が高いのですぐには吸収されず、体内で薄めることになるみたいです。体内の水分が腸に出てきてしまう高浸透圧性の下痢なんていうのもあって、水分の補給には使えません。ということであまり塩分や糖分の濃い飲み物はダメです。清涼飲料水は糖分が多いのでダメかな?ペットボトル症候群なんてありましたね。
浸透圧が低い方が良いなら水で良いじゃないかと思うかも知れませんが、あまり浸透圧が下がるとそれに対処する為尿として排出してしまい効率が悪いのです。これは自発的脱水というそうです。電解質濃度が下がる問題もあります。(水を飲む場合注意されるのは塩分だけどカリウムとかはいいのかな?)
スポーツドリンクの場合、運動する前にアイソトニック飲料で水分以外も補給し、運動で汗をかいて水分を補給する時はハイポトニック飲料というように使い分ける人もいます。
まぁとにかく早く水分を補給したいのであればハイポトニックが良いようです。アイソトニックのスポーツドリンクを薄めて飲む人もいますね。でもそれだと塩分が足りないみたいです。

そして、脱水からの回復には浸透圧以外の要素も関わっています。
 脱水によりNaイオンが失われる事が危険なのでしたね。
 Naを十分に含まない水分補給をすると、低Na血症(水中毒)になる虞があります。体の小さい子供ではその危険が高いのです。
 スポーツドリンクはNa濃度がそれほど多くないのでした。
 しかも、同じ浸透圧では、Naやグルコースがちょうど良い割合で含まれると、さらに水分の吸収が早くなる効果があるのです。
 Naはグルコースと一緒に吸収されるのでしたね。
 しかも、同時に水も取り込むために吸収が早くなるわけ。一石二鳥です。

 病気やひどい下痢の時には、望ましい分量のNaとグルコースが含まれたハイポトニック飲料を与えると良いようです。

スポーツドリンクも完璧じゃないんですかね。じゃあどうする?ということでこちらに続きます。

まず、ポカリスエットを麦茶ポットのような大きめの容器に移します。
 その中に、食塩を 2 g、あればレモン果汁を数滴垂らします。
 そして、空になったペットボトルに水 500 mlをはかり、ポットに加えます。
 軽く振り混ぜて、ちゃんと溶けたらできあがりです。

 500 mlのポカリスエットを薄めて1リットルにすると、浸透圧は 161mOsm/L
 Naが少ないという弱点は、食塩を 2 g入れることで解決させます。
 前回書いた理屈で言うと、食塩2gを溶かすことで、浸透圧は 68 mOsm/L増えるはずです。
 
 では、この組成を見てみましょう。
 エネルギー 14 kcal/dl
 炭水化物  3.4 g/dl
 Na     103 mg/dl
 浸透圧   229 mOsm/L

 なかなか、経口補水塩っぽいでしょう。

おお、ポカリスエットをベースに改良したお手軽ハイポトニック飲料だー。
経口補水塩って何?っていう人はこちらなんか参考になるかと。

口から入った水分・食べ物は小腸管腔に届きます。食べ物は分解(タンパク質はアミノ酸へ、糖質はグルコースへ)され電解質や水分などと一緒に吸収されますが、このとき水分は電解質の一種であるNaがあると吸収が促進されることが分かっています。
という訳で、水はNaと一緒に吸収されますので水分を補給する時はNaが入っているものが良いということになります。さらに、Naは糖質(グルコース)と共に(1対1の割合で)吸収されるので、水+Na+糖質(グルコース)が入っている飲み物だと効率良く水分を吸収できることになります。
グルコースなどの栄養やNaその他の電解質は小腸の表面にある様々なポンプによって吸収されますが、グルコースとNaが1対1の割合で吸収されるポンプがあり、これをNa-糖共輸送担体(SGLT1:sodium-dependent glucose transporter 1)と言います。水分は量が多い方(この場合は小腸)から少ない方(細胞外液)へ吸収されますが、Naや糖はSGLT1を使い量(濃度)が少ない方から多いほうに運ばれるためORSは細胞液よりも濃度が薄く(浸透圧が低く)なっています。このためNaなどの濃度が体液よりも高すぎても低すぎても吸収が良くないため飲みすぎたりしてかえって下痢や脱水を悪化してしまうこともあります。

なんか難しいことも書いてありますけど、要するに「グルコースとNaが1対1の割合で吸収されるポンプ」を働かせると水が一緒に吸収されるということが大事。
グルコースの能動輸送にナトリウムイオンの内向きの力が関わるとかそういう話も見たけどパスで。)
こちらにも代用品が色々載ってます。

ORSは薬局で購入可能であり製品として手に入れられます。しかし、いざという時に家庭においてないかもしれません。(小児がいる家庭や日頃から激しい運動をされる方などは常備しておくのも良いでしょう。)そんな時は先にも書いたとおり、水にNaと糖質が入っていれば良いので、砂糖40g(上白糖大さじ4杯と1/2杯)と食塩3g(小さじ1/2杯)を湯冷まし1リットルに良く溶かし、かき混ぜて適温にしたものを作ります。レモンやグレープフルーツなどの果汁を絞ると飲みやすくなり、カリウムの補給にもなります。
また、おかゆや味噌汁の上澄みと塩分を含まない白湯やお茶を飲ませると代わりになります。日本で伝統的に用いて来たように、胃腸炎の際に重湯に少量の塩分(食塩)を混ぜて飲ませる方法は、脱水の治療や予防に良いのです。昔の人たちが経験的にやってきたことが正しかったということで、世界各地に存在する民間療法です。家庭で重湯などを代替として使用する場合は塩分が高くなり過ぎないように注意し、また、ジュースや白湯などの塩分が少ないものを多く取りすぎないように注意しましょう。また、重度の症状の場合は病院でしっかり診てもらいましょう。

味噌汁でも良いんですねぇ。
昔から病気で胃腸の弱っている時におかゆを食べるのもなんだか納得できます。沢山の水分、デンプンから糖、梅干なんか入れたりして薄めの塩味でナトリウム…理に適ってるんだなぁ。
塩入麦茶なんてのもあるそうですよ。

学生時代、真夏の牧場でバイトした時に塩入り麦茶を知った
実に心身の欲しいものを満たした飲み物だった
夜に気温が下がってビール飲まないうちはトイレと無縁だった

塩入りコーヒー、子供の頃試した。正確には塩バター入りなんだけど
常飲してる人にはみそ汁みたいな感じだろうなと思った
ミネラルとカロリーと刺激嗜好物いっぺんに取れて一石三鳥

塩バター入りのコーヒー、どんな味なんでしょうねぇ。
麦茶は常備している家庭も多いでしょうけど、常備品だからこそちょいと注意が必要です。

いろんな種類の麦茶や、お茶、ハーブティーなどを水出し、お湯だしした場合のお茶の細菌数を調査。
それによると、沸騰させて作ったお茶は、時間がたってもほとんど菌数は増えなかったのに対して、
水出しだと、相当増えます。
水温35℃だと、一般生菌が10×10^1cfu/mlくらいから、12時間で、10×10^5cfu/mlくらいまで増加するらしい。

12時間で4桁アップ…1万倍?

12時間というと、朝出て行って、夜帰ってくるくらいまでですね。
すなわち、水出し麦茶を作って、それをペットボトルに入れて常温で外を持ち歩いたりなんかすると、細菌数はドンドン増加します。
冷やして魔法瓶などで温度が上がらない工夫をしたらマシなのかも(私はこれ派)

そもそも、茶葉パック自体からもグラムあたり10×10^2 cfu/g〜10×10^4cfu/gの菌が検出されてました。

とくに、単一茶葉ではなく、花やドライフルーツなどを混ぜたハーブティーなどのティーバックから検出菌数が多いとのこと。
ハーブティーを水出しして、常温で1日炎天下持ち歩く、っていうことはあまり想定できませんが、もしやってる方はちょっと気をつけたほうがよいかもしれません。

持ち歩くのは保冷した方が良さそうですね。それにしてもハーブティーの方が菌数が多いとは。健康を意識してハーブティーにしてもお腹壊しちゃしょうがないので気をつけたい所。
こっちもすごいですねぇ。

水出し麦茶は、冷蔵庫内で水に抽出している間にも
結構菌数が増えることが分かりました。
やはり、加熱工程がないので、初菌を叩くことが困難だからなのかも。
それにしても、一晩で3乗か。結構早いなあ。

麦茶のパックを投入した直後は検出不可能なのに一晩置いたら結構な事になってます。
しかしもっとヤバイのが水筒に移しただけで菌数が増えてる事。エライ事になっちゃってますねぇ。
ズボラな人は気を付けた方が良いですよ。家はその辺かなり適当なので冷蔵庫に常備してあった麦茶の入れ物は汚れっぱなしになりました。そんなに沢山飲むわけでもないから長期間置かれて味が変わりましたが、どことなく酸味のする麦茶は勘弁して欲しいですね。警戒して飲まなくなったら麦茶自体作らなくなりましたが…無くなるまでの間一体誰が飲んでたんだ?
まぁとにかく入れ物はキレイにしましょう。

個人的には煮沸消毒もありなんだけど、
うちで使っているポット&水筒を入れて沸騰させるだけのデカい鍋がない。
お湯を沸かしてポット&水筒に入れるってのも考えたんだけどお湯沸かすと暑いし。

以前、スポンジに熱湯をかけて消毒した時に、芽胞菌だけが残って芽胞祭りになったことが
あったので、今回は手軽に使える塩素を使用することにしました。
デメリットは、塩素の風味が残るので、殺菌後の水洗に結構時間がかかること。
約100ppmくらいになるように薄めた塩素でポット全体を満たします。(希釈は水道水で)

熱湯かけて芽胞祭り…きっちりやらないとダメなんですね。絶望少女ですね。
塩素臭が残るということだけど、ポット複数用意して殺菌と使用をローテーションさせるとかすれば良いかも?
衛生には気を付けて夏を乗り切りましょう。

アスパルテームについて主に畝山さんのブログ他を片っ端から読んでみた

最初に言っておきますが私は専門家の端にも引っかからない素人です。間違いが有ったらなるべく対応したいと思いますが、手に余る場合はそのように申し上げるかもしれません。
で、アスパルテームだかアステルパームだか判らなくなるアスパルテームですが。(ならない?)
ダイエットコークを始めとして様々な飲料・食品に使われている合成甘味料で、アスパラギン酸フェニルアラニンというアミノ酸でできています。砂糖よりも甘味が強いので、砂糖を減らしたり使わないことを売りにした製品に入っているワケですね。
ところがコレ、毒だと主張する人がいます。本当に毒性があるんでしょうか?
断って置きますが、私は別にアスパルテームを摂取しろと言うつもりなどありません。自分自身わざわざダイエットじゃない普通のコーラを選ぶぐらいで、なぜかと言うと味が気になるからです。アスパルテームだけでなくアセスルファムもエリスリトールも避けて砂糖の入ったものを選びます。
しかし気にならないのであればアスパルテームのような合成甘味料は糖分の取り過ぎによるリスクを避けられるメリットがあります。ですが嫌いだったり不安を感じているのであればアスパルテームなんて口に入れなくても生きていけますから我慢する必要はありません。また、合成甘味料は嫌だけど砂糖を避けたいのならこういうものも有ります。

マービー甘味料はトウモロコシなどの澱粉(デンプン)から作られる還元麦芽糖水飴を100%使用しています。
体内でインシュリンの分泌をほとんど促さないので、脂肪分と同時に摂っても大丈夫。つまり脂肪が体内に蓄積されず、血糖値も上昇させません。さらに、マービー甘味料は、糖尿病や肥満症などのカロリー摂取制限を必要とする方に適した低カロリー甘味料として厚生省の許可を受けており、発売以来25年以上にわたって、病院や薬局を通じて多くの方に使われています。カロリーコントロールが必要な方や、健康にダイエットしたい方など、ご家族皆様で、安心してご利用いただける甘味料です。

原料はトウモロコシなどのデンプンですし、麦芽糖もなじみがありますよね。食品は天然ものじゃないと心配な人でも大丈夫ではないでしょうか。これなら砂糖も合成甘味料も両方避けられます。
その気になれば果物の甘味を利用するとか砂糖が貴重だった時代の知恵も使えるでしょうから、探せば色々な方法を実践している人がいるのかも知れませんね。
ただし天然の材料を使った甘味料だから絶対安全というワケではありませんから注意するにこしたことはありません。砂糖でもそうですが、何であれ際限なく使うのはやめた方が無難です。

・妊娠中、授乳中の安全性については充分な情報がないので、通常の食品に甘味料として添加される量を超える大量摂取は避けた方がよい。

・血糖降下作用のあるハーブ、サプリメントや糖尿病治療薬との併用では、血糖コントロールに影響を与える可能性がある。II型糖尿病患者は注意が必要である。

ステビオサイドは血圧を下げる作用があるため、ベラパミルなどのカルシウム拮抗剤、血圧降下剤、血圧低下作用のあるハーブやサプリメントの作用に相加的に働く恐れがある。注意して用いること。臨床検査値などでもステビアが血圧に影響することがある。

ステビオサイドには変異原性、遺伝毒性、避妊活性、催奇形性などはみられない。しかしながらステビオールとステビオールの代謝物はin vitro で変異原性がみられた。
ステビアは、生殖に関して副作用をもつ可能性がある。ステビアの水性抽出物は雄のラットの精子の数を減少させ、精巣の重量を減少させる。ステビオールを食べたハムスターのメスでは子孫の数とその体重が減少する。

まぁ普通は大量に摂取しないでしょうから大丈夫だと思いますが。正直脅かしすぎですよね。「in vitro で変異原性」というのは培養した動物の細胞とか微生物で実験して見つかったということで、生きた動物だとまた違うのでしょう。でも妊娠中などは一応警戒してください。持病のある方も。
さてアスパルテームに戻ります。

えー、これはちょっと極端過ぎますかねぇ…でもアスパルテームが有害だという主張の根っこにあるものは見えていると思います。
具体的な害については発癌性・催奇形性・脳の異常・失明・躁鬱病などなど、重大なものが並んでいますが、根底にあるのは食品産業への不信、大企業と政府の癒着を疑う猜疑心、さらにアメリカの便利さにまかせたドラッグカルチャーみたいなものが日本の食文化を侵食しているという不安、といった所ではないでしょうか。
しかも「アスパルテームをめぐる攻防戦はFDA*1史上最大と言われ、いまだに語り草になるほどのもの」だそうで、そのような大反対にあっていながらレーガン政権になるとFDA局長が「元国防省の研究者アーサー・ヘイズ」に交代、アスパルテームが認可されてから現在に至るまで世界的なシェアで利益は莫大…疑いたくなるのも仕方ないかもしれません。

しかし仮に癒着が有ったとして、それはアスパルテームの有害性と関わりのある事なのでしょうか?
明確に害が有るのならそれを証明すれば済む話です。しかし害が無い事を証明するのは難しいでしょう。「強硬な反対にあっているが害は無かった」としたら?
十分な安全性を確認しないまま押し通したのであれば問題です。しかし現在まで長い間アスパルテームは使われ続けているワケで、本当に害が有るなら人体実験をしているようなものじゃないかと思います。それで害は証明されたのでしょうか?
「食品安全情報blog」にはアスパルテームの安全性を巡る記事が多く有ります。論文からの引用なども有ってかなり専門的な内容ですが、参考にさせて貰いましょう。

アスパルテームは毒か

「ADI」という見慣れない言葉が登場します。先にこういったサイトを見ておくと良いでしょう。

化学物質が有害な作用をしない量が「NOAEL」です。動物実験ですね。個体差が有るので複数の固体に投与して全て影響の無かった量を使います。*2
この時点でかなり安全な量ですが、動物と人間では違いもあるので念の為10分の1にします。それでも個人差で敏感な人がいるかもしれないのでまた10分の1にします。合わせて100分の1。
つまり動物に影響が無い量の100分の1が「ADI」です。
他にも「LD50(半数致死量)」とか「ED50(半数作用量)」とか載ってますが、半数致死量のような数値を出すにはそもそも死んで貰わないといけませんから、それだけ強力な毒性が無いと判らないでしょう。半数作用量にしても半数に害を与える程度の強さが必要ですよね。
量を増やすにしたってあまり膨大な量になってしまうと実験動物のラットなりに食べて貰うのが大変です。甘味料だったら甘味料を加えた餌というより甘味料しかない様な状態になってしまうでしょう。それで害が有ったとして、それは普通の餌をほとんど食べてないからじゃないの?ってことになりかねなません。偏食のラットじゃなぁ。
さて問題のアスパルテーム

イタリアのEuropean Ramazzini Foundation of Oncology and Environmental Sciencesが、2005年と2006年にアスパルテームを含む餌を与えたラットでリンパ腫と白血病が増加したと主張する二つの報告を発表した。EFSAがこの報告及びその他の研究を評価し、2006年5月に現行のADI 40mg/kg bwを変更する理由はないと発表した。

*3
「European Ramazzini Foundation of Oncology and Environmental Sciences」長いですが略して「ERF」は何度も出てきます。アスパルテームの有害性を主張する研究団体みたいです。

FSANZはアスパルテームの安全性を評価して食品への使用を認可した。FSANZはさらに2003年9月にアスパルテームの現状の摂取量を詳細に調査した。その結果平均的消費者はADIのわずか6%、高摂取群でADIの15%を摂取していることがわかった。この調査に基づきFSANZはオーストラリアにおけるアスパルテーム摂取量は健康に有害な影響が出る濃度より充分低いと結論した。

*4
「高摂取群」でさえも「100分の1」のADIと比べて15%の摂取量。仮に有害性が有ったとしても、この量で害なんて出るんでしょうか?

アスパルテームは砂糖の約200倍甘い甘味料で世界中でこれまで25年間ソフトドリンクや低カロリー食品などに使用されてきた。膨大な研究が、たとえたくさん食べたとしても、アスパルテーム代謝物が有害影響をもたらすほど蓄積することはないことを示している。アスパルテームをADI相当量摂るには成人で14本の砂糖無し飲料を毎日飲まなければならない。そしてなんらかの悪影響が出るにはそれを生涯毎日続けなければならない。

想定されたドリンクのサイズを知りませんが350ミリリットルでも14本はキツイですね。
わずかな使用量である事はアスパルテームのような高甘味度甘味料に共通のメリットで、様々なものが使われていますがいずれも微量です。

人工甘味料は、米国栄養学会ADAによれば、消費者がカロリーを削減し体重をコントロールすることや糖尿病のような慢性疾患を管理するのに役立ち、虫歯予防の可能性もある。

今日FDAが認可しているのは5つの人工甘味料で、これらは食品添加物として市販前に安全性を評価されて認可されている。認可された甘味料の典型的米国消費者の使用量はADI未満である。

アスパルテームは砂糖の200倍甘い。そのカロリーは砂糖同様4kcal/gであるが、使用量から考えるとカロリーなしとみなすことができる。ブランド名としては NutraSweetや Equalがある。1981年に初めて卓上用やガム、朝食シリアルや他の乾燥製品用として認可され、1983年には炭酸飲料に、1996年には全ての食品と飲料に一般用甘味料として使用認可が拡大された。

承認前にFDAはガンや有害影響がないという膨大な数の動物実験結果をレビューした。 この中にはヒトの摂取量の100倍以上高用量をラットに投与した研究も3つある。

アスパルテームはカロリーゼロでは無いんですよね。でも200倍甘いので使う量が200分の1です。
「ヒトの摂取量の100倍以上高用量」というのは通常摂取している量に対して100倍ということなのかADIに対してなのかどっちだろう。

アスパルテームは食べると体内でメタノールと二つのアミノ酸アスパラギン酸フェニルアラニン−に分解される。これらの物質は他の普通の食品からもっと大量に生じている。

フェニルアラニンが含まれるため、アスパルテームは遺伝的疾患フェニルケトン尿症の患者にはリスクとなる。この疾患の患者はフェニルアラニン代謝できないため、アスパルテームを避けるべきである。アスパルテームの規制には製品にフェニルアラニンを含むことを表示することを求めている。

どうもこの話が脳障害を起こすという誤解に繋がっているように思います。フェニルアラニンは他の食品にも含まれているのでアスパルテームに特異な問題ではありません。
工業用アルコールを使った劣悪な酒などで有害と知られるメタノールも微量なら食品に含まれる可能性があるようです。

アスパルテームは消化管でフェニルアラニンアスパラギン酸の二つのアミノ酸メタノール加水分解される。メタノール代謝によりホルムアルデヒド、次いで蟻酸に変換される。Soil & Healthの主張に欠けている重要な情報は食べる量が少ないということである。

実際メタノールをもっとたくさん含む食べ物は柑橘類やジュース、トマトなどたくさんある。どのような食品由来であってもメタノールは同じである。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070823#p13

2006年7月25日の記事は人工甘味料全般に触れていますが、サッカリンも不安を抱く人が多いと思います。

サッカリンは砂糖の200-700倍甘くカロリーはない。ブランド名としてはSweet'N Low、Sweet Twin及び Necta Sweetがある。サッカリンは卓上甘味料、焼いた製品、ソフトドリンク、ジャム、チューインガムに使用されている。

サッカリンは 1879年に発見され、1972年にリストから外されるまでは一般的に安全と認められる(GRAS)と見なされてきた。GRASは法律の定義では食品中に安全な使用の長い歴史があるか科学的根拠による。しかしもし新しい根拠により安全性に疑いがあればFDAはその使用を禁止したり安全性試験を要求したりできる。

1977年にFDAサッカリンが高濃度投与によりラットの膀胱ガンを誘発するとの懸念から使用禁止を提案した。それに反応して議会はサッカリン試験及び表示法Saccharin Study and Labeling Actを採択した。この規制は安全性研究が行われる間禁止を一時停止するものであった。同時にサッカリンを含む食品には、この甘味料に健康上のハザードがある可能性があり実験動物でガンを誘発することがわかっているという警告表示を要求した。サッカリンについてはヒトにおいて30以上の研究が行われた。

国立ガン研究所NCIによれば、さらなる研究の結果、サッカリンはヒトではガンを誘発せず、ラットにおける膀胱ガン発生メカニズムはヒトでは当てはまらない。

2000年にNTPはサッカリンは最早「発ガンの可能性のある物質」ではないと決定した。

2001年に連邦規制でサッカリンの警告表示の要求は取り除かれた。

*5
安全と認められていたものが後から使用を禁止された事で不信を招いたんですね。しかし現在は使用可能です。それはなぜでしょう。

このうち,グループ2Bに分類されるのが,実験動物に癌をおこすがヒトでは発癌性の問題はないと考えられる化合物などである。

この事例,つまり,かつては発癌性があり危険だといわれていた化合物が科学の進歩によって安全であることがわかった有名な例はサッカリンである。サッカリンはラットに膀胱癌をおこすが,これはラット特有の反応に由来し同様の反応は存在しないヒトには全く問題がないことが明らかにされている。

http://members.at.infoseek.co.jp/gregarina/I1H.html

リンク先に記述によればサッカリンは「グループ2B」です。

サッカリンが雄のラットの膀胱に対して弱い発癌性を示すことが報告され、ヒトでも可能性があるとしてFDAサッカリンの使用を禁止するよう勧告したのが1977年だそうです。ところがその後の研究で、サッカリンが雄のラットの膀胱にのみ発癌性を示すのは、高濃度の検体がもともと結石を作りやすい条件の雄のラットの膀胱で結石を生じ、その物理的刺激によるものだということが明らかにされました。これはヒトでは起こり得ないことで、その結果サッカリンは「ヒトに対して発癌性があると考えられる物質リスト」から外されています。

http://hw001.gate01.com/uneyama/sacch.html

猿を使った実験も行われ、その結果からも人に対しては安全であると考えられています。
他にアセスルファム-K・ネオテームスクラロースも紹介されています。ERFの話も出ていますが2005・2006年ということで前のと同じ話でしょう。
でもこのERFっていうのはどんな団体なのかな?

ERFって信用できるの?

イタリアの研究者らがアスパルテームの安全性に疑問を呈している。

研究者等は甘味料を投与されたラットが現在ヒトへ推奨されている量より少ない量でガンを誘発すると報告しているが、これはこれまでのアスパルテームが安全だとするほとんどの研究に矛盾している。

専門家らはこの研究は正統ではない方法で行われたもので、どうしてこの甘味料がガンを誘発できるのかを理解するのは困難であるとしている。アスパルテームは血流に入る前に分解されて通常体内に存在する物質になるからである。

イタリアのボローニャにあるCesare Maltoniガン研究センターのMorando Soffrittiらは8週齢のラット1800匹に最大3年の生涯にわたりこの甘味料を与えた。死亡後に組織を観察している。その結果20 mg/kgから雌の白血病が増えたとしている。WHOによればヒトにおけるアスパルテームの安全量は40 mg/kg体重/日で、これを超えるにはダイエットコーラ28缶以上飲まなければならない。

米国環境健康科学研究所の毒性計画議長のJohn Bucherによれば、通常このような試験ではラットは2年でと殺される。ガンは加齢とともに増えるので、発症するガンを全て見たい場合には死ぬまで生かす。しかし死ぬまで生かした場合、年齢の違う動物を比べることになるので通常の統計解析は問題がある。そのほかにもこの研究には奇妙な部分がたくさんある。

*6
まず、アスパルテームは分解されてタダのアミノ酸になるので、どうして害を及ぼすのか判りません。どういうメカニズムなの?という疑問があるワケです。そして今までの研究では害があるというデータが無いということなので、ERFの報告は他の研究と矛盾します。
通常の試験では2年でお終いの所を、死ぬまでずっと観察して癌になるものを探したみたいですが、どうも統計のやり方に問題があるようです。年を取ると癌になりやすくなるので年齢が違うと比較が難しいんですね。

実験の詳細は実験室内コロニーのSDラットを用いて生後8週間から0-10万ppmアスパルテームを生涯与えたものである。これは平均体重400gで20gの餌を食べるとしてFDAによるアスパルテームのADI 50 mg/kg bw/dayの0-100倍に相当する。対照としてこの研究所で過去20年間に行った実験の結果と比較しているが、個別の実験内容や全体の中のどういう例なのかは示されていない。RAMAZZINI研究所はこの実験で20mg/kg bwでもアスパルテームが多臓器発ガン物質であると主張し、これまでのバイオアッセイと結果が異なることについては自然死するまで飼育することと動物種の違いが原因である可能性を示唆している。COCの意見としては、自然死するまで飼育するというプロトコールは普通ではないこと、投与濃度の幅が非常に広いのに用量反応性が非常に少ないこと、最高用量はOECDの推奨する栄養状態に影響のない最大5%を超過し10%となっていること、飼料の説明がないが呼吸上皮の変化はアスパルテームの吸入による刺激である可能性があることなどを述べている。

*7
過去の実験結果というのがどういうものか示されていないというのは問題ですね。それじゃ比較した相手と何が違うのか判りません。死ぬまで観察するのも普通やらないということで使いにくいデータのようです。それに栄養状態に影響が無いように決めた量を超えて与えているので、その点でもやっぱり使いにくいでしょう。
「呼吸上皮」が変化したと報告されているみたいですが、飼料の説明がないということでアスパルテームをどうやって与えたのか判らないので、吸入させたとすれば吸入の刺激で変化したんじゃないかと疑われています。毒じゃなくてもそういうことは起きるでしょう。
「用量反応性」についてはこちらなど。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/kyh/res/dose.html
塩や砂糖みたいに安全と考えられているものでも大量摂取すれば毒になりますが、問題にならない量というのがあるワケですね。少量では安全な物質ならグラフにすると最初は横這いで途中から立ち上がる形になります。アスパルテームはADIが定められていますからそういうグラフでしょう。
タバコの例では真っ直ぐですがこういうのはどんなに僅かでも量に比例して影響があるということで、いわゆる発ガン物質はこうなるようです。この「閾値なし」になる物質はできるだけ排除した方が良いワケですが、アスパルテームの場合もそうなら過去の研究で判りそうなもんです。
投与濃度の幅が「0-10万ppm」ということで幅の広いデータが提出されたワケですから、それを見ても害が認められないというのはどんな結果だったんでしょう?
結局こんな評価に。

「毒性学のデータは非常に複雑なもので解釈には注意が必要である。全ての生命科学においてと同様偽陽性偽陰性がよくあり、そのようなデータを適切に解釈するには専門性が必要である。過度に単純化した解釈は間違った結論を導く。」

「最もわかりやすい例は最近のイタリアのラットでのアスパルテームがガンを誘発すると主張している研究である。これらの研究はアスパルテームやその他の食品成分の毒性について何らかの情報を提供できるようなものではなかった。実験に使用された動物は自然死するまで生かされ、すなわち加齢の結果を示すように、(加齢の結果、誰もが知っているようにそれは自然のプロセスで、必然的に死亡する)計画された。」

「実際この結果から言えることは、毎日ADIの100倍以上も与えられたにも関わらず、投与群も未処置群と同じだけ長生きしたということで、アスパルテームは安全であるようだということである。もしアスパルテームが彼らの言うように恐ろしく毒性の高いものであるなら、アスパルテーム投与群のラットは早く死ぬと考えるのが論理的である。イタリアの研究者らの主張は彼ら自身のデータから支持されない。」

間違った解釈だと言われた上に主張と逆の結果が見て取れると結論されちゃいました。
もっと詳細なのがこちら。

ERF研究の知見に関するAFCパネルの結論は以下のようなものである。

1. リンパ腫/白血病の頻度増加は、背景となる肺の慢性炎症性病変の高頻度と用量相関性の無さからアスパルテームとは関係ない。このような腫瘍は慢性呼吸器系疾患を患うラットの肺のリンパ肥大の結果生じることが良く知られている。この知見を説明する最も可能性の高いものは、このコロニーが慢性呼吸器系疾患に罹患しているため生じたということである。アスパルテーム投与群で僅かに増加したというのは偶然であると考えられ、従ってこれは無視できる。
2. 雌ラットの腎石灰化に沿った腎盂・尿管・膀胱の前ガン病変及び腫瘍性病変は、少なくとも高用量では投与に関連したものである。刺激性のある化学物質や腎盂石灰化を誘発する化学物質の高用量投与による影響は、ラットに特有のカルシウム代謝不均衡によるものである。従ってこれらの影響はヒトには当てはまらない。
3. 総悪性腫瘍数に関するデータはアスパルテームの発がん性の根拠とはならない。AFCパネルの意見としては、全ての腫瘍数の合計や腫瘍を持つ動物の合計を統計学的に処理することは正しくない。上述したように白血病や腎腫瘍は除外されるべきである。
4. 悪性神経鞘腫については、AFCパネルは腫瘍の数が少なく、用量相関が例え雄 で正の傾向があったとしても、幅広い濃度で非常に少ないことと診断の不確実性から、ERFの関連試験における全てのスライドの病理組織学的ピアレビューを行わなければ評価できないと結論した。

*8
1の「偶然であると考えられ」に引っかかる人もいるかも知れませんが、偶然でない場合にはある程度差が出るハズだということで、偶然と区別が付かない程度の差しか出なかったので無視されたという事です。
2では量が多いと障害が出る事を認めていますが、それはラットに起こりやすいもので人間は心配無いようです。
3は他の原因を考えられるものまで一緒に処理するなという話ですね。
4はもっと詳しく見ないと何も判らないということかな。
で、2007年に再びERFの試験が。

2007年に発表されたラットを用いた2つ目のERFの試験では、400及び2000mgアスパルテーム/kg餌の濃度(20 及び100 mg/kg体重/日)が用いられている。ラットへの投与は妊娠12日目から自然死までの間で、数は対照群が雌雄各95匹で低用量及び高用量群が雌雄各70匹である。著者らは悪性腫瘍のある雄の数が用量に関連して増加している、雄のリンパ腫/白血病頻度が高用量群で有意に増加した、雌のリンパ腫/白血病頻度が高用量群で有意に増加した、雌の乳腺腫瘍頻度が用量の関連して増加したと報告している。

ANSパネルは以下のように結論した:

・ 悪性腫瘍の頻度を合計して試験対象化合物の発がん性を評価するには、全ての腫瘍について発生時期や、腫瘍性でない、過形成、および前がん病変に関するデータを検討する必要がある。しかしながら著者らはこれらのデータを提出していない。リンパ腫や白血病のある動物の肺における炎症性病変の有無に関する情報が限定的にしか提供されていない。

・ 観察されたリンパ腫や白血病のほとんどが、慢性呼吸器疾患の特徴である肺の炎症性病変のあるラットで見られている。AFCパネルの先の見解通り、これらはアスパルテームの投与とは関係しないと考えられる。

・ 雌ラットの乳腺腫瘍の頻度ががん原性試験によりかなり違っていてしかも高頻度であることから、乳腺腫瘍頻度の増加はアスパルテームの発がん性の指標とは考えられない。さらにERFがもっと高濃度のアスパルテームを使用して行った先の試験では乳腺腫瘍の頻度増加は報告されていない。

全体として最新のERFの研究を含む全ての現在入手できるデータを基に、アスパルテームに遺伝毒性や発がん性を示唆するものはなく、アスパルテームのADI40 mg/kg体重/日を改定する理由はない。

*9
「著者らはこれらのデータを提出していない。リンパ腫や白血病のある動物の肺における炎症性病変の有無に関する情報が限定的にしか提供されていない。」ってまたかよ。
「観察されたリンパ腫や白血病のほとんどが、慢性呼吸器疾患の特徴である肺の炎症性病変のあるラットで見られている。」ダメじゃん。
「ERFがもっと高濃度のアスパルテームを使用して行った先の試験では乳腺腫瘍の頻度増加は報告されていない。」をい。
ついにはこんなことに。

2007年のRamazzini財団によるラットでのアスパルテームの発がん性試験論文について、Bernadene MagnusonとGary M. Williamsから、既に世界中の食品安全評価機関から問題点を指摘されていてそれらに全く答えていないこのような欠陥だらけの論文を掲載したEHPの編集者やレビューワーの見識を疑う、という手紙。

それに対するRamazzini財団のMorando Soffrittiの回答がすごい。用量相関の無さや偶然有意差がつく場合がある(単純計算でp<0.5を有意と判断するなら20回のうち1回は偶然有意差がつく)などの指摘に対して「どんな用量や年齢や体重でも、なんらかの影響が見られれば問題にすべきだ(whatever the doses at various ages and weights, the finding of any effect should be a cause for concern)」と答えている。

そういう意見が通るのがEHPという雑誌なのだけど・・・呆れるしかない。そんな理屈なら何だって有害判定されてしまう。環境系の人たちはそれがおかしいとは思わないのかな。それともわざと?

*10
ねぇ?

       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\      
    /   ⌒(__人__)⌒ \    <どんな用量や年齢や体重でも、
    |      |r┬-|    |      なんらかの影響が見られれば問題にすべきだ
     \     `ー'´   /
    ノ            \
  /´               ヽ              
 |    l              \
 ヽ    -一''''''"〜〜``'ー--、   -一'''''''ー-、.    
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒)) 

これって…

             /)
           ///)
          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     / 

って言ってるようなもんじゃないの?
はい結論。ERFの主張は信用できないし、アスパルテームの毒性は証明されませんでした。

10大学及び医学部から参加した国際専門家委員会が、1970年代以降からこれまでの500以上のアスパルテームに関する毒性学・臨床・疫学研究論文を調査した結果がCritical Reviews in Toxicologyの9月号に発表される。

委員会のメンバーであるBernadene Magnuson教授は、「メディアやインターネットでアスパルテームの安全性に関する疑問が常に話題になる。我々の研究はアスパルテームに関する全ての研究を包括的に評価したものである。」と述べている。

アスパルテームは現在の摂取量で、たとえ高用量摂取者でも安全である。アスパルテームに、たとえADIの何倍も摂った場合でも、発ガン性・神経毒性又はその他の有害影響があるという信頼できる証拠はない。

具体的に:

アスパルテームに発ガン性や発ガン促進作用はない
・ 記憶や学習能力などの神経学的影響はない
・ 行動や認知機能、神経機能や痙攣などへの影響はない
・ 生殖や乳汁分泌への有害影響はない
・ 糖尿病患者が使用しても安全で糖尿病患者の砂糖抜き食事に耐える一助となるかもしれない
アスパルテームと肥満に関連はない。逆に長期体重コントロールの一助となるかもしれない。
・ 脳腫瘍や血液系腫瘍発生との関連はない

ERFがあれだけ実験したんですからもう良いでしょう。「彼ら自身のデータから支持されない。」のです。
それでも心配だという人は居なくならないでしょう。害が有ると思ってるとそう見えるということだってあります。

気のせい?でもやっぱり気になる?

自分の息子(5-7才)は砂糖過敏症だと信じている35組の母子を対象にした試験で、研究者は子どもたちが砂糖群とアスパルテーム群に無作為にわりつけられると母親に話したが、実際には全ての子どもに与えたのはアスパルテームだけだった。この実験で自分の子どもには砂糖が与えられたと考えた母親は子どもの行動が多動になったと報告した、という有名な実験がある。保護者の期待が行動評価に影響することを指摘。

この場合砂糖を疑っているのにアスパルテームを与えたワケで、アスパルテームのせいだと思う人もいるかもしれませんが、重要なのは同じ条件なのに違う結果になったということですね。砂糖だと思い込んだ母親は影響があったと感じたワケです。
化学物質過敏症とか電磁波過敏症なんていうのもありますが、そういう症状は心因性だとも言われてます。そしてアスパルテームが体調不良の原因だと主張する人はやっぱり居るみたいです。
そういうものを気のせいだと言って片付けるのは簡単かも知れません。しかしイギリスのFSA*11は「逸話的根拠」も集め調査するそうです。

私は科学者としてある種の根拠は他のものより信頼できるものとみなす。例えば最良の方法で実施されてピアレビューを経て出版された二重盲検クロスオーバー試験の結果は誰かの経験談より重要である。

ピアレビューというのは専門家同士で審査しておかしな所がないか確認してから学術誌に載せてる、査読というヤツですね。
二重盲検クロスオーバー試験は…えーと。
薬の効果を試験する時、その薬の効果と比較する為に別の薬を用意します。可能で有れば何の効果も無い偽薬(プラセボ)を使うと判りやすいのでそうします。(例えば抗癌剤と比較するのには使えません。効かないと知ってて使ったら殺人になっちゃいますよね。)医師も被験者もどちらの薬か知らないのが二重盲検(ダブルブラインド)で医師だけ知ってるのが単盲検とか一重盲検(シングルブラインド)です。
クロスオーバー試験(交差試験)はグループAとグループBでそれぞれ違う薬を使った後、薬を入れ替えて続けます。グループAが薬A・グループBが薬Bの後は逆にしてグループAが薬B・グループBが薬Aです。公平ですね。
両方組み合わせて、正体を知らない薬を順に入れ替えて使えば完璧に近いだろうというワケです。
病は気からと言いますが、実際調子が良くなったり悪くなったりすることは知られています。ズバリ、プラセボ(プラシーボ)効果ってヤツです。さらに医師が薬の効果を知ってる場合はそこで思い込みが結果に対する評価を左右するかも知れません。だから二重盲検が必要なんですね。

とはいえFSAがリスクアセスメントを行う場合には、情報源による重み付けは行われるものの全ての根拠は重要でどれも割引されたりはしない。私は英国女性協議会の今年の10月の年次会合で逸話的根拠の利用に関して議論が行われ、「英国政府に意志決定の才に逸話的根拠の重要性を認めさせ、逸話的根拠を探し、記録し、厳密に調べてもしそれが本当であることがわかったら対応できるようなシステムを作るよう働きかける」動議が採択されたことに興味を持っている。

再現性のある根拠を示してピアレビューにより批判されることは科学の基本的プロセスであるが、FSAは科学だけを仕事にしているわけではない。FSAが助言を行ったり政策を決定したりする時には、より広範囲の根拠(個人の自由、規制上の制約、社会的経済的文脈、消費者のリスク嗜好)をもとにしている。この二番目の段階は科学とは異なり、最終的結論を出すまでに何度か繰り返される協議による。

私は逸話的根拠は、より厳密な科学的研究のきっかけとなると思う。その結果再現性のある根拠が得られればリスクが評価できる。

最近FSAはアスパルテームに関する逸話的有害事象についてどう対応するのかと尋ねられた。最近のEFSAの助言フォーラムで、私は人工甘味料アスパルテームの影響に関する消費者の逸話に基づく懸念に対応する研究プロジェクトを提案した。この提案は、自称アスパルテーム高感受性集団と普通の人との間で、報告された症状と生化学的パラメーターを二重盲検クロスオーバー試験により比較するというものである。EFSAはこの提案に好感触を示し、さらに検討するための会合を予定している。

「自称アスパルテーム高感受性集団と普通の人との間で、報告された症状と生化学的パラメーターを二重盲検クロスオーバー試験により比較する」もしもこの結果に差が認められたなら、アスパルテームの安全基準が見直されるかも知れません。アスパルテームが原因で調子が悪くなるという人が無視されているワケではないのです。
それは具体的には頭痛や胃の不快感であるようですが…

FSAはアスパルテームに反応すると主張している人たちに焦点を絞った新しいアスパルテーム研究を始める。アスパルテームについては一部の人々が頭痛や胃の不快感などのいろいろな症状が出ると逸話的に主張してきた。

FSAの主任研究者Andrew Wadgeは次のように述べている。「この研究はアスパルテームの安全性を調べるためのものではない。アスパルテームが安全であることは既に確認されている。この研究はアスパルテームの性だと狩猟されている逸話的報告を含む消費者の懸念に対応したものである。FSAの見解は、アスパルテームは安全に消費できるというもので、現状の使用法を変更することは薦めない。しかしながら我々は一部の人々がこの甘味料を食べると調子が悪くなると考えていることを承知しており、そのため何が起こっているのかについての知識を増やすことが重要だと考えている。」

ひらたく言えば「何が起きてるか判らないので調べます」って感じですね。さんざん調べて安全なハズのアスパルテームで問題が起きているのはなぜ?どうして?

科学にとって「逸話的根拠」の役割は何か?本当のところ逸話的根拠は科学的意味での根拠とはならない。それは観察で、しばしば主観的で、見られた影響は同時に変動した多くの要素による可能性がある。観察は我々に何かの問題の理解を助けることもあるが、それだけで終わるものではなく、試験可能な仮説にむけた最初のステップである。

従って逸話的報告は、関係のない人々の間で同じことが多数報告されるような場合には特に、しばしばさらなる検討に値する。科学に基づいた機関として、 FSAは科学的根拠に注意を向けているが、逸話的報告についても継続して寄せられる場合にはより詳細な検討が必要だと感じることもある。

本日開始するアスパルテームの予備的研究の場合がそうである。一部の人々がアスパルテームを含む食品や飲料で頭痛や胃の不快感を報告している。何年にもわたる膨大な研究とリスク評価によりアスパルテームは安全であることが示されているが、反応するという報告は継続している。従って何故人々がそのようなことを報告するするのかが理解できるのであれば良いだろうと感じた。

単にアスパルテームの毒性ということであれば科学的にはこれ以上調べてもしょうがないって感じなんでしょうね。調査するのもタダじゃないので、こういう問題は無視されてもおかしくない様に思います。しかしあまりに多くの訴えがあるのでしょう。アスパルテームは沢山使われていますしね。
アスパルテームが不調の原因だと思っている人を調べたら別の原因が出てくることだってあるかも知れません。みんな同じ条件だった場合にはそれが解決の糸口になるでしょう。
まるで違う条件の人から同じような訴えがあるなら?それは「しばしばさらなる検討に値する。」のだそうです。

*1:Food and Drug Administration:アメリカの食品医薬品局。有名ですね。

*2:LOAEL(Lowest Observed Adverse Effect Level:最小有害影響量)とかBMDL(Benchmark dose lower confidence limit:ベンチマーク用量信頼下限値)の時もあるみたいですね。

*3:EFSAはEuropean Food Safety Authorityで欧州食品安全機関です。

*4:FSANZはFood Standards Australia New Zealandでオーストラリア・ニュージーランド食品基準局です。

*5:GRAS(グラス)はGenerally Recognized As Safeで「一般的に安全と認められる」と訳される言葉。NTPはNational Toxicology Programで米国国家毒性プログラムです。

*6:WHOはWorld Health Organization世界保健機関…なんてみんな知ってるか。

*7:COCが何か私には良く判りません。イギリスのCOT「Committee on Toxicity and Chemicals in Food, Consumer Products and the Environment:食品・消費者製品・環境中の毒性と化学品に関する委員会」の発ガン物質に特化した部会であってるのかな?OECDって経済協力開発機構ですか?

*8:AFCパネルは「Panel on Food Additives, Flavourings, Processing Aids and Materials in Contact with Food:食品添加物・香料・加工助剤及び食品と接触する物質に関する科学委員会」らしい。

*9:ANSパネルは「Panel on food additives and nutrient sources added to food:食品に添加される食品添加物と栄養源に関する科学委員会」かな。

*10:EHPは「Enviromental Health Perspectives:環境衛生展望」かな。

*11:Food Standards Agency:食品基準庁