不法入国者に在留許可は下りるか?

これ見てちょっと引っかかったんで。

例えば、前のカルデロンさん一家のエントリについて、結構賛否両論の意見があるけど、俺が意識してるのって、一家、国、その回りがうまく回るような策しか考えてねえ。

 端的に言うと、「まずガキには罪はねえし、日本に生まれて、日本の義務教育きちんと受けて、日本に対する敬意を持ってたら、レッキとした「日本国民」じゃん?叩く理由なんかねえけどな」という話。

 両親については、「確かに不法滞在は拙いけど、不法滞在後は犯罪犯してなく、きちんと住民税等の公租公課納めてて、近隣住民との軋轢もねえんだったら、追い出す選択肢よりも、日本にいて、罰金等で不法滞在の罪を贖うので問題ねえんじゃねえか。」つー話なんだよね。追い出した結果、割を喰うのはガキなわけで。

 要するに、フィリピンに追い出したところで、誰が得するんだという話。蕨市は税収が減るだろうし、一家は例えフィリピンに戻ったところで、フィリピンって日本以上に仕事ねえからな。国あげて出稼ぎで外貨稼いでる国だし。

現実に誰も困ってないなら良いんじゃないの?ということで、これはこれで大事な考え方なわけですが。

残るは、国の面子と、法的にどうかという話だけど、そのために「在留特別許可」という制度がある。入管法50条に規定されてる法に基づいたレッキとした制度だ。

 法務省入国管理局のHPに、在留特別許可の事例が載ってるんで、見てみることを勧める。

 http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan25.html

 見りゃわかるけど、不法滞在でも在留特別許可がおりてるケースがかなり多い。ポイントとしては「入管法以外に法令違反はない」ケースかな。これ見てると、今回の件って、なんで下りないんだろうかと思うぐらい。

見てみましょう。

入管法第50条に規定する在留特別許可は,法務大臣の裁量的な処分であり,その許否判断に当たっては,個々の事案ごとに,在留を希望する理由,家族状況,生活状況,素行,内外の諸情勢その他諸般の事情に加え,その外国人に対する人道的な配慮の必要性と他の不法滞在者に及ぼす影響とを含めて,総合的に考慮しています。

素行とか他の不法滞在者に及ぼす影響も含めて判断されるんですね。
まず気になったのはほとんどの例が「不法在留」であり「不法入国」ではないこと。つまり入国した時点では何の問題も無く、滞在期限が過ぎても日本に残っている、帰らなかった人ですね。
不法入国の場合最初っから審査をごまかして日本に来てますから、期限切れの人とはちょっと違う扱いになるように思えます。不法入国は安全に関わるので国も態度を厳しくするんじゃないでしょうか。
と言っても不法入国者に在留特別許可が下りた例は少なくないようです。色々拾ってみましょう。

 1994年3月,インドシナ定住難民として本邦に入国し,同国人の夫及び本邦出生の2子とともに在留資格「定住者」を有して在留していたところ,スーパーで食料品を万引きして警察に逮捕され,勾留中に在留期限が経過し,懲役10月執行猶予3年の判決言渡しを受けたもの。夫及び2子は在留資格「定住者」で本邦に在留していたが,夫はC型肝炎,2子は小学校3年生及び2年生として本邦の学校で就学中であった東南アジア出身の32歳女性。
 在留特別許可の内容:在留資格「定住者」,在留期間「1年」

これは不法滞在のケース。万引きして捕まってる間に期限が来ちゃいました。てなわけで素行はよろしくないですね。しかし日本の学校に通う小学生の子供やらC型肝炎の夫やら抱えております。このまま返すに忍びないってことでしょうか。

1997年7月,成田空港から本邦に不法入国し,ホステス等として稼働していたもの。2001年9月に不法入国者として摘発を受けたが,摘発の1か月前から日本人男性と同居しており,2002年2月に同男性と婚姻したもの。当該女性は,3年前に別の日本人男性との間に子をもうけており,同子も在留資格を取得することなく不法残留していたが,婚姻した日本人男性が同子と養子縁組し,3人で同居生活するもの。不法入国以外の法令違反が認められなかったもので,子についても,本人とともに在留特別許可された。東南アジア出身の24歳女性。
 在留特別許可の内容:在留資格「日本人の配偶者等」,在留期間「1年」

不法入国者のホステスが日本人と結婚しました。別の日本人が作った子供を連れていてその子も養子になって一緒に許可。

2003年3月,成田空港から不法入国したところ,難民認定申請を行い,難民として認定されたアフリカ出身の22歳男性。不法入国以外の法令違反が認められなかったもの。
 在留特別許可の内容:在留資格「定住者」,在留期間「1年」

難民として認定されたケース。

1988年4月,在留資格「4-1-16-3」(平成元年法改正前の在留資格)及び在留期間「6月」の上陸許可を受けて就学生として本邦に入国した東アジア出身の夫婦が本邦において長男をもうけ在留していたが,1992年8月,在留資格変更等許可申請が不許可となったため,在留期限を超えて不法残留していたところ,2004年11月,夫が入管法違反で逮捕され全員が不法残留容疑で退去強制手続が執られたもの。一家は安定した生活を営み,かつ,本邦出生の長男は中学校1年に在学しており,難病である眼病の治療継続も希望していたもので,入管法違反以外に他の法令違反が認められなかったもの。
 在留特別許可の内容:一家全員,在留資格「定住者」,在留期間「1年」

難病の治療という理由もあって日本に残ることが望ましいということですね。

2003年8月,本国のブローカーの手引きで関西空港から不法入国したところ,来日費用と称して借金500万円があることを申し渡され,借金返済の名目で,日本人男性の仲介により日本各地のストリップ劇場で稼働させられ,劇場オーナーの指示により客との売春等の行為を強制させられるなどしていたもの。売春防止法違反被疑者として送致されるも人身取引被害者と認められ,国際機関,在日大使館等の協力・支援を得て帰国を希望した南米出身の17歳の女性。
 在留特別許可の内容:在留資格「短期滞在」,在留期間「90日」

これは酷い。不法入国したはいいがブローカーに騙されて借金のカタにストリップと売春。日本人もグルになった犯罪の被害者です。
帰国希望の為短期滞在が許可されました。

東南アジア出身の35歳女性
 1994年7月頃,偽造旅券を行使し,成田空港から不法入国した。1996年11月,日本人男性との間の子を出産し,2003年7月,当該日本人男性と婚姻した。婚姻後に日本人夫が子を認知し,当該子は在留資格「日本人の配偶者等」在留期間3年により在留している。本人は,在留期間の更新をしないまま,2005年2月,窃盗(万引き)により警察に逮捕され,同年4月,入管法違反及び窃盗罪により懲役2年8月執行猶予3年に刑に処せられたが,日本人夫は子を認知した頃から所在不明になっており,現在は本人が子を監護養育している事情が認められるほか,窃盗については十分反省していることが認められる。入管法違反及び窃盗罪以外に法令違反はない。
在留特別許可の内容:在留資格「定住者」在留期間「1年」

不法入国して日本人と子供ができて結婚。一度は在留資格を得たが、期限が切れてから万引きで捕まってしまいました。と・こ・ろ・が、ダンナ行方知れず。半分日本人の子供もいるし、万引き以外の犯罪もやってないので、そのまま日本で子供を育てることに。

東南アジア出身の49歳女性
 1985年7月頃,偽造旅券により不法入国した。インドシナ定住難民として在留資格「定住者」在留期間3年により本邦に在留していた夫(別国籍)と2000年頃から同居するようになり,2001年2月に本邦で婚姻し,その後も引き続き同居生活を営んでいた。2005年6月,入管法違反により警察に逮捕されたが,起訴猶予処分となった。入管法違反以外に法令違反はない。
在留特別許可の内容:在留資格「定住者」在留期間「1年」

難民として在留資格を持っている人と結婚しました。

南米出身の41歳男性
1991年10月,他人名義旅券で不法入国後,本邦において稼働を継続していたところ,免疫不全症に罹患していることが判明し,病院に入院した。いったん退院したものの,入・退院を繰り返すこととなり,病気治療のため,本邦での在留を希望して違反事実を出頭申告した。本国の医療事情を考慮する必要があると認められた。
なお,入管法違反以外に法令違反はない。
在留特別許可の内容:在留資格「定住者」在留期間「1年」

病気治療のために許可。帰国したら死んじゃいそうです。

東アジア出身の65歳男性
 1972年12月,不法入国後,現在まで本邦において生活していたものであり,2005年,本邦での在留を希望して出頭申告した。同人は相当期間にわたり本邦で生活し,本国に身寄りはなく,本邦での生活を希望している。入管法違反以外に法令違反はなく,生計の安定も認められた。
在留特別許可の内容:在留資格「定住者」在留期間「1年」

不法入国して30年以上も日本で暮らしていました。他に悪いこともやっていないし今さら追い出してもしょうがないって感じですか。

東アジア出身の68歳男性
 1963年ころに不法入国したとして,2005年,本邦での在留を希望して出頭申告した。現在,既に死亡している内縁の妻との間にもうけた実子と称す日本人と同居しているもので,親子関係を立証する客観的証拠はないものの,当該実子が引き続き父の面倒を見るとしている。
  なお,入管法違反以外に法令違反はない。
在留特別許可の内容:在留資格「定住者」在留期間「1年」

これは一体・・・「実子と称す日本人」が面倒見ているし悪いことはしてない。

東南アジア出身の41歳女性
 1995年9月,本邦に不法入国後,2000年,日本人男性と婚姻し,2001年,在留特別許可(在留資格「日本人の配偶者等」在留期間「1年」)された。その後,スナックを買い取り,経営していたところ,自身の経営する店において,同国人女性に借金を負わせて,ホステス兼売春婦として稼働させていたことから,2005年,売春防止法違反及び入管法違反(不法就労助長)により懲役2年6月執行猶予4年の刑に処せられた。
  本人は,これまでに2回退去強制手続を受けた経緯がある。

これはまた・・・日本人と結婚した後母国の人間を食い物にしていたか。んでばれちゃって在留許可されなくなった。

南アジア出身の41歳男性
 1996年4月,在留資格「技能」在留期間「1年」の上陸許可を受けて本邦に上陸後,コックとして稼働していたところ,稼働先が倒産し,不法残留した。不法残留後,日本人女性と婚姻したものの,入管法違反(不法残留)により警察に逮捕されたが,起訴猶予処分となった。本人は,当該日本人女性との同居を希望したが,調査の結果,本人は,過去に退去強制された経歴があることが判明した。他方,当該日本人女性は本人との離婚を考えている旨述べている。

これも許可されなかった事例。強制退去の前例があるのと、奥さんが離婚を考えているのが痛いな。

南米出身の19歳男性
 2001年12月,日系人と偽り本邦に不法入国し,在留期間更新許可申請に及んだが,当該申請が不許可処分となり,その後,所在不明となった。2006年,入管法違反で警察に逮捕されたが,起訴猶予処分となった。逮捕後,同国人永住者との婚姻が成立したことから本邦への在留を希望したが,調査の結果,婚姻に係る夫婦間の申立てには著しい齟齬が認められ,夫婦相互の協力・扶助があるとも認められなかった。

これは・・・色々工作してますな。不許可です。

東アジア出身の23歳女性
 2003年4月,在留資格「就学」在留期間「1年」の上陸許可を受けて上陸し,日本語学校に入学した。2005年,日本人男性と婚姻し在留資格変更許可申請に及んだものの,不許可となり,当該日本人男性とは離婚して不法残留した。2007年,在留資格「永住者」の同国人男性と婚姻し,その後,入管法違反により警察に逮捕されたが,起訴猶予処分となった。調査の結果,同居している旨申し立てていた当該同国人男性との同居事実は認められず,当該男性が申し立てた勤務先も1年以上前に解雇されていたことが判明した。

最初の結婚からし在留資格が欲しかったのか?って疑いたくなる感じですねぇ。

東南アジア出身の家族3名(父37歳,母36歳,子7歳)
 1990年11月,父が寄港地上陸許可を受けて上陸し,そのまま不法残留した。1996年5月,母が在留資格「興行」在留期間「3月」の上陸許可を受けて上陸し,その後,不法残留した。1998年,父母は知り合い,同居して,2000年1月,子が出生した。2007年,当局の摘発により退去強制手続が執られた。父母は婚姻しておらず,子は小学2年在学中であった。

これは期限切れてる人同士同居して子供が小学生。なんでダメだったんだろう?
こうやって見ていると大体許可が下りる例は、

  • 日本人か定住者の家族が居る
  • 病気などで日本に居ないとまずい理由がある

ってケースですかね。
ほとんどの場合素行が良い人達です。日本人と結婚してても素行が悪いと、特別な理由が無ければ許可されません。帰ると死んじゃうような人はしょうがないですが。国が殺すことになっちゃいますからね。許可された例で万引きしてる人も見かけますが、反省していれば他の理由とあわせて見逃して貰えることが多いみたいですね。
そうするとカルデロン一家は許可された例に近いみたいですけどねぇ、どうなんでしょう。許可された例だと父母の一方はちゃんと資格のある定住者だったりするので、このケースは微妙に外れるかな。
まぁ内訳を良く知らないんで、なんでこんなにこじれちゃってんの?って感じなんですが。

93年の日本への出発前夜。アランさんはビザ取得を依頼したブローカーから、他人の姓と1年早い誕生日に書き換えられたパスポートを受け取った。

日本で結婚した妻サラさん(38)は、06年7月に出入国管理法違反(不法残留)容疑で逮捕された

奥さんは普通に入国して不法残留かな?

入管側はこれまで、のり子さんだけなら在留特別許可を認める可能性があることを示唆しており

子供は悪くないからねぇ。

ところで、このカルデロン・のり子さん。

メディアでは「日本語しか話せない(タガログ語は話せない)」と報道されていますが、たぶん嘘でしょうね。日本語がたどたどしい両親と、家庭内で何処の国の言葉で話してきたんでしょうか?

なるほど。帰国して問題になるのは職がないことぐらいなのかな。それがでかいんだろうけど、だからといってむやみに不法入国を許すような真似はできないだろうなぁ。
「他の不法滞在者に及ぼす影響」も考慮して判断してるというんだから、こういうケースで許可が下りるかどうかっていうのはかなり厳しいような。せめて奥さんが不法在留でなければねぇ。