ヘンリーの法則

ヘンリーの法則ってヤツ、温暖化の原因がCO2で無いと主張する人に人気があるらしい。

ヘンリーの法則は、温度が一定の時に成り立つ)。ほとんどの場合、温度が高いほど k の値は小さくなる。つまり、p_{CO2} がおなじ場合、温度があがると N は小さくなる。つまり、水中の CO2 濃度が減る。つまりは、水にとけていた CO2 が空気中に放出される、ということだ。

なるほど。

さて、ここで、趣向を変えて、「スミオとミツコ」という小説から一部を読んでもらおう。

この小説は、CO2 と H2O のあいだの愛憎を描いた大河小説だ。タイトルの通り、主人公はスミオとミツコ。スミオは CO2 分子だ。炭素だからスミオとしたのだと思う。ミツコは水分子。なぜ、"水"'をそのまま名前にしなかったのかはよくわからないが、たぶん作者になにか大人の事情でもあったのだろう。

なにそれw
興味を持った人は読んでみようw
で、これに続く。

さて、温度が上昇すると、比例定数 k が小さくなる。つまり、温度が上昇すると、濃度 C を小さくする方向にはたらく。これが、槌田さんが、「CO2 の増加は温暖化の結果」であることの説明。

だけど、本当は、もう一つの変数、二酸化炭素の分圧 p_{CO2} についても考えないといけない。これは、空気中の CO2 の濃度に比例するものだ。こちらの効果も考えてやっと、海水中の CO2 の濃度を説明できるんだ。

それでは、p_{CO2} はどれだけ増加したのか。まず、産業革命前の CO2 は約 260 ppm だったとされている。その一方で、現在の CO2 濃度は 370 ppm 位。

海水の温度が上がると水中の二酸化炭素濃度を低くしようとする力が働くが、大気中の二酸化炭素濃度が高いと分圧が高くなり放出が阻まれる。

これをヘンリーの法則に入れてみよう。p_{CO2} が 260 から 370 に増加したにもかかわらず、濃度 C を減少させるためには、比例定数 k を 30 % 以上へらさなければならない。

k を 30 % 減らすには、どれだけ温度を上げればいいか?槌田さんは k の温度変化の図を示している。(図中、F(t) がこの記事における k にあたる)

産業革命から現在まで大気中の二酸化炭素が増加したことを踏まえて、その圧力に負けることなく水中の濃度を下げる為に必要な温度上昇とはどのくらいなのか?

さて、グラフを見てほしい。だいたいで構わない。0 度の水の k を 30 % 減少させるには、温度が 10 度あたりにならないといけなさそう。20 度の水の場合も、やっぱり 10 度程度上げて、30 度ぐらいにしないといけないみたい。

でかっ!10度ですってよ奥様!そんなに上がったら夏なんかどうなるんだ・・・

少くとも、ヘンリーの法則だけによる限り、産業革命以降に起きた空気中の CO2 濃度の上昇は、海洋からの CO2 の放出で説明できないんだ。

もし海洋からの放出で説明したいのなら、もっと複雑なトリックを考える必要がある。まあ、槌田さんは文章の中で深海からの海水がなんとか、ってことを書いているので、それで説明したつもりなのかもしれないけれど、それでは十分ではないんだよなぁ。多くの人が、ヘンリーの法則だと思っちゃうんだよね。

うーむ。何を説明してるんだろうなぁ。
そらそーとCO2による温暖化が否定されない場合、海水温上昇でCO2が増加したらもっと温暖化が加速してヤバイ気がしますね。でも濃度が増すと分圧が高くなって海に溶けるので割と小さな影響になるってことでしょーか。海よありがとう。
しかし。

海洋酸性化、っていうのは、CO2 の溶ける量が増えて、海の pH が下がる、つまり、より酸性になることだ。酸性化すると、海洋の生態系が変わる可能性があるんだ。僕の聞いた話だと、炭酸カルシウムの殻を持つ植物プランクトン(海にはそんなやつらがいるんだ) のある種のものが、この酸性化に弱いらしくて、このまま空気中の CO2 濃度が上っていった時に、生きられなくなる可能性があるらしい。だからどうなる、ってことは今後の研究を待たないといけないのだけど、これは海洋生物が吸収する CO2 が変化することで、空気中に溜まる CO2 の量にも影響し、ひいては今後の温暖化の状況にも無関係ではないから、気候学者も注目しているんだ。

でも、気候学者がなぜ注目しているか、なんてことはどうでもいい。ここで言いたいことは、海水中の CO2 が増えている、っていう観測事実がある、ってこと。だれも、温度が上がったせいで海水中の CO2 が減少した、海がアルカリ化してる、なんてことは考えていない。実際、観測でも、海水中の CO2 が増えている、ってことがわかっているんだよね。

この、海水中の CO2 増加は、ヘンリーの法則をちゃんと解釈することで、説明できるんだよね。比例定数 k の変化よりも、空気中の CO2 分圧 p_{CO2} が増加する効果がおおきいってことから海中の CO2 濃度の増加は予想できる。もちろん、定量的な議論をするのはちょっとむずかしい。でも、定性的な議論をすることは可能。単純な議論でも、意外に観測事実を説明出来るんだ。

温度の上昇以上にCO2分圧増加が大きく働いてCO2=炭酸ガスが海に溶け込んでいます。そして炭酸水は酸性なのです。
しっかし炭酸カルシウムの殻なんてもってる割には炭酸水だと死んでしまうとは・・・炭酸って名前に入ってても炭酸に強いワケじゃないのね。カルシウムに炭酸・・・コーラに骨入れとくと溶けるアレか。水で練ったものに水かけたら溶けちゃう感じなのかな?
さて炭酸飲料話は続きます。開けておくと気が抜けちゃうよね?

丸山さんが例に出したとおり、空気中に放っておいた炭酸飲料から、さらに気を抜くには、温めれば良い、というのは、正しいんだ。でも、それが海の場合はそうじゃない。

どうして違うのか。それは、炭酸飲料から空気中に CO2 が出ても、空気の CO2 濃度の変化が無視できるのに対して、海から CO2 が放出されたら、大気の CO2 濃度が変化してしまうからなんだ。つまり、炭酸飲料の場合は、いくら CO2 を出しても周りの条件を変えることはないのに、海は CO2 を出すことによって、自ら周りの条件を変えてしまう。

せいぜい2リットルぐらいの炭酸飲料と海じゃスケールが違いすぎるワケですね。大海っていうぐらいで大気の相手に不足無し。

密閉した容器の中の水に、CO2 が気体が溶けこんでいた。その容器を温めると、どうなるか?

密閉容器の問題では、水中から出てきた CO2 のせいで、水に接していた空気中の CO2 の分圧が変化する。だから、方程式を立てて解く必要がある。大学入試的には、温度を変えたことで、空気中の CO2 の分圧をボイル・シャルルの法則かなにかを用いて計算する必要があったりもするので、より複雑な問題が作りやすい。

だから、化学で大学を受験しよう、っていう理系の受験生には、ヘンリーの法則はおなじみだ。

ああ、この法則を誤解してるとすっげーバカにされちゃうんだ、そーなんだ。
てなわけでまたひとつ賢くなりました。ほんのちょっぴり。