蒟蒻畑

こんなの規制とかおかしいだろと思ったアナタ、僕とおんなじです。

人類史においてニコチンで死んだ人間は数えきれない。アルコールを嗜好品として自身において真に受容することなく早々に死んだ人間もまた、数えきれない。なあにかえって免疫力がつく、はむろん嘘である。こんにゃくゼリーは未だ戸羽口に立っており、そこで強制的に緞帳を下ろして構わないか。私は賛成でない。グローバルスタンダードは知らんが、キケンがアブないこんにゃくゼリーを人類とその叡智が嗜好品として獲得し真に受容する長い長い道程の、その突端に現在の日本人はいる。骨を手にしたばかりの猿人のように。私たちには河豚という誇るべき歴史と勇敢な死者の列がある。近代や法治国家や公共を袖にして、そんな与太を綴りたくなりもする。

まぁこちらさんは必ずしも正しいことを言ってるつもりではなくて、納得がいくかって話なんですが。
ここだけ抜いてみたらそうだそうだと頷いてしまうのが一般的な反応なんでしょうけど、間違いかも。

GIGAZINEの理屈だと「年に3件しか死亡事故のないフグの方が安全」とかいうバカな話になる、食べる頻度とか量も考えないと、という指摘。これがいわゆるリスクとハザードの問題ですね。危険そのものの大きさ(ハザード)と、そのハザードに遭遇する可能性の高さ(リスク)の、両方を評価しないと真の危険性は見えて来ないということです。

フグは、その毒性を考えるとハザードが大きい。こんにゃく入りゼリーも、実際に食べる頻度を考えると、窒息事故を起こすハザードが大きい。

常食しないもののリスクって測りにくいのね。

さらに表示を徹底し、形を小さくしたり、硬さを抑えれば、より改善されるかもしれません。しかし、後発メーカーが安易に似たような製品を作り、配慮に欠けたものを売ってしまう事態も起きているようです(これはシュレッダー事故の際にも指摘されていました)。業界団体が努力しても、その辺はなかなか難しいでしょう。

なんか「類似品にご注意ください」がマジで危険。

「リスクとベネフィットの対比で考えなきゃ」というのは、常々気にしていることです。で、「ベネフィットは?」と考え始めたときに、ぼくはうーんと考え込んでしまいました。

もちやフグのように伝統食品なわけでもない。ご飯やパンのように主食なわけでもない。
ダイエット用に、といっても特定保健食品でさえない。ある種の「機能性食品」ではあるのでしょうけれど。
習慣性があって、なくなると困る人がいるだろうというわけでもない。
経済効果はあるでしょう。伝統食品であるこんにゃくを守る、という側面はあるかもしれない。でも、こんにゃくが歓迎されなくなった、なんて話はあんまり聞かない。

なんかベネフィットがかなり小さそう。

うーん。無くなっても構わないものだと言われれば・・・そうだなぁ。

なにしろ、ものはお菓子です。フグやタバコやアルコールとは違います。ウイスキーボンボンや辛いお菓子、苦みのある食べ物などのように、「子どもや老人には向かない、不適切」というレベルでもありません。「子どもや老人には危険なお菓子もある」なんていう常識があるとすれば、まさにこの製品のために必要な常識なのかもしれません。

受益者自身が危険に遭遇する可能性はかなり少なく、被害者の多くはうっかり(不注意)とか誤認といった事故、まさにアクシデントとしてこの食品の危険に向き合う羽目になっているのではないでしょうか?(そうだとすると、やはり根絶は不能だということも言えそうです) 

さて、こうした事故を「消費者の自己責任だ」と言えるのでしょうか? ぼくは「馴染まないなあ」と思うのです。

主食じゃ無い。行事で食べない。習慣性無し。たまに死ぬ。・・・こう考えるときっついな。

ここまでをまとめると、「こんにゃく入りゼリーは、一般にハザードも小さく、リスクも低い。改善も進められており、ほとんどの場合あまり危険とはいえない。しかし、その小さいリスクやハザードに対しても、ベネフィットが小さい疑いが強い。また、被害者は、うっかりミスや誤認などのために事故に遭遇していると推測できる。そのミスや誤認も、仕方ないと考えられる部分もある。さらに、被害者のほとんどは受益者ではない。自己責任論は適用できないのではないか」といったところです。

嗜好品の規制なんていうのは、ぼくの好むところではありません。また、ゼロリスクを目指すことのむなしさも、これまでこのブログで何度か採り上げてきました。

しかし、こう見てくると「わずかながらでも犠牲者を出しながら、この製品を作り続けること、売り続けることに、どういう意味があるの?」と思えてなりません。ぼくが愛用者ではないから、というバイアスもあるかもしれません。でも、ちょうどいい比較対象がないぐらいに「受益者と危険に直面する者の不均衡が大きい」と思えてならないのです。

ゲーマー的にわかりやすくすると蒟蒻ゼリーは便利だがたまに致命的なファンブルがあるアイテムなんで素人にはオススメできないんだな。そんなもん売るのかと。

今回のマンナンライフの決断は、業界団体への事故の報告義務を怠ったことも理由かもしれません。しかし、それがなくても、作るのをやめちゃっていい製品だったのではないでしょうか。やめなければならない、やめるべきだとまで言える理由はぼくにはありません。でも、最大手がやめてくれるという判断には、ほっとしました。

こうして見るとメーカーもよくよく考えての判断ですかねぇ。

しかもマスメディアの論調とは、まったく逆な意見が多いのも驚きました。愛好者が多いのでしょうか、それとも「肥大し過ぎた消費者意識への違和感」「モンスター消費者的なものへの嫌悪感」でしょうか。

自分の場合は「モンスター消費者的なものへの嫌悪感」だな。バカみたいな事件でメーカーが自主規制とか賠償ってニュースが度々話題になってる。
それで目が曇っちゃいかんなぁ。
マンナンライフについてはこんな見方も。

むしろ製造中止によって消費者の飢餓感を煽り、警告表示などの対応をしっかり行なうことによって販売数量がさらに増加することが予想されますね。(この事例としては、偽装事件後に品薄となった赤福白い恋人など)少なくとも今回の報道による広告効果は数十億円はくだらないでしょうから、マンナンライフ念願の上場も視野に入るかもしれません。


...というような筋書きを描いた上で、マンナンライフの経営陣が自主的な製造中止を決めたのであれば、恐ろしくマーケティングの流れが読めているシャア少佐並みの凄腕ですね。この場合、ダラダラと製造を続けて非難に変わることが最大のリスクですから、これを回避した時点で勝負に勝ったと言えそうですね。運転資金が厳しいようであれば、投資したいなぁ。。

そういう読みならすごい危機管理能力ですな。
それからこういう試算も。

マンナンライフの事故発生確率=3÷42,900,000=約「1億分の7」
・他メーカーの事故発生件数=14÷21,450,000=約「1億分の65」

 この数字だけを見ると、マンナンライフ以外の製品における事故発生確率は、マンナンライフ製の「9倍以上」ということになる。
 13年間売上構成が一緒で、単価200円一律、という前提で計算しているので正確ではないにしても、他メーカー製のこんにゃくゼリーにおける事故発生率がマンナンライフ製と比べて高いのはほぼ確実だろう。
 それなのにマンナンライフばかりに注目が集まっている。どうもこれは不可解だ。この事故発生率の違いは異常だと思う。マンナンライフが事故を隠していたなら話は別だけど。

うーん、マンナンライフ・・・死中に活を見出すかな?