モテる人

この浮気主義者というのも、モテることの大きな要素の一つだ。と言うのも、女性というのは、「彼女がありながら自分に対して気が向く」ということに、大きな喜びを感じるらしいのだ。そして、どういう脳の構造かは分からないけれど、「自分と付き合うようになれば、もうその人の浮気性も収まるのではないか」と思うらしい。いやむしろ、「わたしの愛で、あなたの浮気性を治してあげる」とまで思うらしい。

きっと、多くの女性はそういうふうな「物語」を恋愛に求めているのだろう。多くの女性は、「他の人を捨ててまで、わたしのところに来てくれた」という物語に、気持ちよく酔わされる。そして、「そうまでして来てくれたからには、これはきっと本物の愛だ。彼はきっと、わたしとの間に本物の愛を求めているのだ。逆に言えば、彼が浮気性だったのは、これまで本物の愛を探し求めて彷徨っていたからなのだ。だから、わたしのところに来て、わたしが本物の愛を教えてあげれば、彼の浮気性も収まるのだ……」と、そんな妄想を際限なく膨らませる。

なんかこう、「多くの猛者を打ち倒したあの者の首を取れば諸侯の覚えも目出度かろう」というノリを感じるw

実際、彼にはそれを利用している節がある。

と言うのも、彼は付き合う女性に関しては非常に面食いで、とても綺麗な子を選ぶからだ。そして彼は、その彼女を公私を問わず積極的に連れ歩くようにしている。どんなところへも、彼女を伴って現れる。そしてみんなにその彼女を見せる。

だから、彼の新しい浮気相手というのも、たいていその彼女のことを知っているのである。その上で彼の浮気に応じるのだ。

それが、ぼくには最初不思議でならなかった。どうして女の子たちは、浮気だと分かっている人と付き合うのか? が、長年観察するうちに、そういう物語にコロッといかされているのだというが、段々分かってきたのである。特に「ああいう綺麗な彼女がありながら、わたしのところへ来てくれた」ということが、どんな女の子にとっても強力な必殺技になる。

「天下にその人ありと言われたあの猛将を従えながらこの私を欲するとは」って感じ?w

どうしてそういう軽蔑心を持っているかは分からなかったが、彼の浮気が女性に対してひどいことをしてやろうというサディスティックな気持ちからきている部分はあったように思う。そのため、何の躊躇いもないどころか、むしろ思い切ってやれたのだ。

またそういう浮気にホイホイと応じてしまう女の子があまりにも多いことも、彼の軽蔑心をより一層煽ったということがあるかも知れない。それが証拠に、彼の浮気は年を追うごとに多くなり、年を追うごとに節操がなくなっていった。彼は一種の浮気スパイラル――それはそのままモテスパイラルと呼んでもいいのだが――にどっぷりとはまり込んでいた。

このスパイラルは、どうやら際限がないらしい。というのも、女性というのは、彼が冷たくなればなるほど、男尊女卑になればなるほど、かえってその女心を刺激されるみたいだからだ。

「この人がこんなに冷たいのは、きっと以前、女性に手ひどい目に遭ったからだわ。だから、心を氷のように閉ざしてしまっているのだろう。だったら、わたしの愛で、本物の愛で、その氷を溶かしてあげる!」

などといった、また新しい物語を、女性はそこに見出してしまうのである。モテというのも、ここまでいくと本当に際限がなくなってくる。

名だたる猛将を手玉に取って乱世を生き抜く英雄ですかなw
最後は部下の反乱で死ぬ気がw

見事獲物を仕留めたら、それを家に持ち帰ってくる。その際、さりげなく村落を見回って、良い女を物色する(要するに、女の子と出会うきっかけをいろいろ作ることらしい)。

そうして、これという候補が見つかったら、とりあえず狩ってきた獲物をその子の家の前にポンと置いておく(何か贈り物をするのだそうだ)。その際に、まずは見返りを求めないのがポイントなのだということだ。その代わりに、相手の反応を見極めるのだという。

友人に言わせると、そういう贈り物を素直に受け取れない女性は、生命力を失った、人間らしさや女性らしさを失った女なので、自分の興味の対象外なのだそうだ。彼にとっての興味の対象は、例え躊躇いがちであったり遠慮しながらでも、最後にはそれを受け取る、したたかで逞しい女なのだということだった。

そのもらい方が彼のツボにはまると(ツボはいろいろあるそうだが、彼は自己愛の強い女性が好きなのだそうだ)、そこからもう少し深入りし始める。今度は、もう少し重たい贈り物を与え始める。

それと同時に、今度は見返りを求めるようにもする。その見返りとは、ただ一つ「セックス」だということだった。彼は、それ以外は何一つ求めない。安らぎだとか承認要求だとか、そういうションベンくさい戯言は吐かないのそうだ。彼はただ一つ、セックスするということだけを求め、それ以外は全部与えるようにする。

そうして、血のにおいをたぎらせながら、フェロモンを放出しながら、女と駆け引きするのだそうだ。おれはどこまで与えれば、おまえは代償を差し出してくれるのか?――と。

この時、相手が本当に良い女だと、「自分の命まで差し出しても良い」とさえ思えるようになるのだという。そういう気持ちにさせてくれるのだという。

そして、そういう瞬間が、彼にとってはたまらないのだそうだ。そういう瞬間に、彼は全ての呪縛から解き放たれ、この世界と一体になったような、開放感と自由を味わえるのだという。

シンプルでわかりやすい生き方だなー。
難しいこと考え無い方がモテるっていうのはありそうな気がする。