雷句誠のインタビュー記事

仕事場の写真とか載ってます。

当時の編集長がなかなか新人にチャンスを与えない方針だったというのもあります。ガッシュで連載を取ったときに当時の担当の編集さんだった人が第一感想で「雷句誠君が新人でがんばってるときって、明らかにおかしいから」って言われたんですよね。サンデー手帳というのがあって、それを見るといつ連載が始まったか全部明記されてるんですよ。それを見て、「ここからここの間、見て。新人の連載がほんのわずかしか無いですよ、これ、本当におかしいことだから。編集長の方針だったのかな」って感じで。それでもまぁ、端から見て「まだ連載の腕前じゃない」と感じていたのでしょうね。

G:
ということは、新人がデビューしづらいときにデビューしたほどの実力ということですね。

雷句:
そのときは担当さんのプッシュもあったと思います、とても仕事ができる人だったので。口はちょっと悪いのですがちゃんと仕事をしてくれました。その分、感謝もしています。そのおかげもあってできたような感じですね。

最初は面倒を見てもらってる感じがあったんですねぇ。

G:
普通は今までお話ししていたような感じで順調に仕事ができるわけですが、雷句誠さんの場合はいつ頃ぐらいまでは順調に仕事ができていましたか?

雷句:
3代目の担当までは順調でした。順調と言っても陳述書に書いてあるようなことがいろいろとありました。初代の担当さんは口は悪かったのですががんばってくれました。2代目の担当さんになって、周囲からは「あの人は切れ者だよ」「あの人はできる人だよ」というように言われていたのですけど、自分がそのときはまだ若いというのもあって、本当に相手が非協力的で…打ち合わせの時も「ツーン」という感じで「勝手にやれば?」みたいな…。自分も若いから、仲良くしなくちゃいけないと思っていろいろ話しかけても心を開いてくれなくて。たまに迫力で押すというかそういうときもありました。そういうのが繰り返されてエスカレートしていって、ついに電話越しでこちらから怒って「一回話し合いましょう」ときつい口調で言い始めたら「いや、あの、すいませんでした、電話ですべて吐き出してください」と。「いいからうちに来てください」と言うと「いや、電話ですべて吐き出してください、すべてとにかく言ってみてください」と。そこから結構協力的になりました。

G:
ああー、なるほど。するとそれから少しは改善したと。

雷句:
そうです。やはり感情をぶつけないと…。そこからはいい考えも出してくれるようになったので、ほかの方が言っていたような「この編集さんはできるよ」というのはこういうことなのかな、と。3代目になったときも、どんどん遅刻が常連になってきて、ある日、「あの、ちょっと来てください」と言ったわけです。「アシスタントはみんな上に行っておいてください」と言って、別の部屋で呼んで叱ったんですけど、やっぱりなめてかかられてるんですよね…。

G:
なめてかかられていると、もう態度とかそういうのでわかるわけですか?

雷句:
聞かないというか、「はいはいそうですね」みたいな…。やっぱり、後々になっても直らないわけです。こっちがまっすぐに本当に怒りをあらわにして「なぜこういうことをするんだ」みたいな感じで心の底から怒鳴ると、みるみるうちに顔色が変わって、本当にこれはまずい、みたいなことが相手に伝わるんですよね。それからはちゃんと正してくれるんですよ。というか、そこまで言わないとわからないのですよ。

今まで見た雷句さんの話だといつも「怒らないとこっち向いてくれない」って感じなんですよねぇ。話なんかいいから作業しろってことなのかな。

G:
大体、雷句誠さんが怒るまで我慢した期間というのはどれぐらいですか?

雷句:
どれぐらいか…しっかりとは覚えていないのですが、半年から1年ぐらいは…。

G:
長いですね。

雷句:
我慢してと言うか、ないとは思うのですが、2代目の人の時はアニメ化がかかっていたので「自分が若僧だから自分に対してだけこういう変な態度を取っているのかな、自分だけではなくてアニメの会社の人に対しても同じように無礼なことをしているのではないのかな」というちょっとした危機感もあって…。

G:
ああ、自分だけではなくて他の人に対してもやっているのではないか、という危機感ですね。

この辺も特徴的。雷句さんの話は誰かの為に怒ったっていうのが目立つ。正義感が強いとも取れるし、思い込みが激しいとも取れる。やっぱりガッシュなのかw

雷句:
陳述書にも書きましたけど、最初からあそこまで喧嘩を売ってきたのはあの人ぐらいです。

G:
珍しいですね、最初から喧嘩を売る態度というのは。

雷句:
結局ストレスで手の骨を折って、そのあとでしっかり話し合いましょうということで話し合ったのです。それでもまだ直後は威圧的な態度は変わらなかったのですが、そこからは段々仲良くなっていきました。4代目も最後の方はちゃんとできるというか、しっかりとした仕事ができる編集になったんです。でも、その、仲良くなってきたあたりで毎回担当が代わるんです。

G:
ですね、今までの流れを見ていると。普通の会社の人事異動みたいな感じで代わってますよね、これ。代わるときは何の前触れもなく突然代わるという感じなのですよね?

雷句:
そうです。

G:
担当の編集が代わる理由とかそういうのは言ってもらえたりしたのですか?

雷句:
「ちょっと異動になりますんで」とかそれぐらいです。何というか、普通は折り合いが合わなくて仕事ができなくなってきたら代わるというのはありだと思うのですけど、やっと仲良くなってきて、やっと普通に仕事ができるようになってきてから代わってるんですよね。

G:
段々うまくいかなくなってから代わるというのであればまだわかるのですが、うまくいくようになってきているのに「代わる」というのは非常に理解しがたいですね。

雷句:
これは自分の憶測になるかもしれませんけど、結局、編集長はいろいろと(漫画家に)仕事をさせたいワケじゃないですか。カラーとかやれば雑誌は売れますし。そういう、ちゃんと言うことを聞いて、言うことを聞かせて、カラーとかを持ってくる、その指示をちゃんと聞ける担当編集が編集長にとってはいい編集なのかもしれません。それでも自分はスケジュールがきつかったら断ります。逆にきつくても向こうが自分の体を気にしてくれて「何とかできませんか、無理だと思うんですが」というようにしてくれるのであれば考えます。さすがに100%とは言いませんが、70〜80%の確率で引き受けると思うんですよ。でもあからさまに頭ごなしにむちゃくちゃなことでごり押しするのは困るときがあるじゃないですか。3代目の人、4代目の人が私の言うスケジュールを聞いてくれるようになってからなぜか代わっちゃったんですよ…やっとここまで関係が築けて、お互いの気持ちがわかるようになったのかなというときになって代わっちゃうんです。

これは・・・都合を考慮するようになると「雷句の言いなりになってる」と判断して入れ替えてるのでは。編集者は編集部のスケジュール通りに漫画家を働かせろと、そういうことなのでは。

G:
陳述書にもストレスのあまりいらだってしまって「机を思いっきり殴り、拳の骨が右手の皮膚を突き破りました」というような描写があったのですが、今までの話を聞いていると雷句誠さんは結構ストレスを貯めてしまう方なのですか…?我慢する時間も長いように感じるのですが…。

雷句:
そうです、結構我慢します。いろいろな人に相談すると「常日頃から吐き出してしまえよ」と言われるのですが、「怒る漫画家」だとか「恐い漫画家」だとか言われるのもアレですし…。あとはやっぱり新人ですから、初めての週刊連載の新人ですから、やはり自分なりにしっかり全部言うこと聞いてやらなきゃという思いがあるんでしょうね…。最後はやっぱり…うん、本当にあれはおかしかったです…。

こういう人怒らせたくないなぁ。

雷句:
誤植した部分を指摘したらにらみつけてきたりだとかそういう態度を取ったりとか、できれば仕事をさぼろうとする姿を見ていると、本当に不安になってくるんですよ、しっかり管理しているのか?と…。そして、サンデーにおける連載が終わるということで最後の原稿を渡した2007年11月末に言いました、そちらに渡してある原稿をすべて返してください、と。白黒原稿はコミックスが出たら半年ぐらいで返してくれるんです。確実に定期的に返してくれるんですね。でもカラー原稿は広告だとかに二次使用、三次使用するので小学館の方に預けてあったわけです。だから手元ではなく小学館預かりにカラー原稿はすべてなっていたわけです。そうしたら最悪の予想が当たって「なくなった原稿があります」、と…。

G:
それが陳述書などに書いてある内容なわけですね。しかしおかしな話ですよね。実際に雑誌の編集にも携わっていた経験があるのですが、こういう「絵」「イラスト」などの原稿はデザイン事務所などに渡した段階でスキャナーでスキャンされてデータ化されてしまい、すぐに戻ってくるものなんですよ。二次使用とか三次使用とかをする場合でも、既にそうやってスキャンしたデータを使うのが普通のはずです。だから、「白黒原稿でも半年ほどしたら返してもらう」というのも、正直言うと、最短であれば印刷所に全データを入れ終わった段階で戻ってくる、戻すのが普通なんですよね…。戻さずに原稿を買い取りしてしまうという場合であっても、データが何かの理由で消失する可能性があるので、絶対、もとの原稿は大切に保管するのが普通です。それでいくとその小学館のシステムというのはおかしいんじゃないかなーとは思います。小学館としてもデータとしては持っているはずですよね。ということは、そうやってデータ化した段階で返すのが普通なわけで…もしかしたらマンガの業界というのは「すぐには返さない」というのが普通なのかもしれないのですが、ほかの出版ではちょっとあり得ないと思いますね。

GIGAZINEの人もおかしいと思った管理体制。
やっぱ竹熊さんが言うようにキチガイの業界だからなのか。

G:
ネット上などではまことしやかに「担当の編集者がストーリーを作ったり案を出したりしてストーリーに関わっている」と言われていますが、こういうことは実際、普通に行われていることなのですか?

雷句:
週刊サンデーの場合はわかりません。マガジンは関わっているとは聞いたことがあります。自分の時は結構、自分で作らせてくれましたね。最初の担当の人は「次はこういうキャラ出さない?」とかそういうことを言ってくれました。でもそういう話は本当に「種」みたいな感じでひとことふたこと程度です。あとは全部自分に任せてくれましたし、キャラクターの性格とか、話とかも自分で考えていました。

G:
じゃあストーリーの案とかを出してくることはあった、と。

雷句:
ええ。ネームを読んで、少し言ってくることはありました。あと、あの…ガッシュを読んだことは…?

G:
全部読んでます!

雷句:
ああ、ありがとうございます!!で、石版編ってあったじゃないですか。その石版を「ちょこっと今から少しずつ出さない?」みたいなアドバイスは初代の担当さんですね。最初は「1000人の魔物の戦い」ということを考えていたんですけど、担当さんが無理矢理、「100」に決めちゃったんですよ。できるかどうかわかんないし、みたいな感じで。でも、「人気が出てきて話を長引かせたい」となったときに「1000年前の魔物が残ってる」というのがいきなり出てくるとアレだから、今のうちからちょこちょこっと伏線張っていかない?ということができる人だったんですよね。

G:
どちらかというと「アイディア」という感じですね。

雷句:
そうですそうです。しかもやっぱりうまいじゃないですか、きちんとできるので。3代目さんまではちゃんとアイディアは出してきてくれました。でも、ストーリーは全部自分が考えていましたね。

G:
ある意味、理想的な関係ですね。

雷句:
なのに4代目の担当さんの時に、引き延ばしを命じられたのかどうかわからないんですけど…。

G:
ああ、無理矢理、がーっと…

雷句:
引き延ばしのアイディアは使いませんと断ったんですけど…その設定で何度頭の中でシミュレーションしても、ああこりゃだめだ、人気が落ちるばかりになっちゃうよ、と。

G:
これは無理、と。

雷句:
それでまぁ普通に自分の筋書き通りな感じで話を進めていくわけですけど、向こうのアイディアをごり押しする感じでずっとやってくる人で…

G:
何かにつけて引き延ばしのためだけのアイディアを言ってくる、と?

雷句:
そうです。アイディアを入れなければ、やはり不機嫌になってくる…。それで、手を折ってそのあとでいろいろ気づいたんですけど、ゼオンが出てきたときですね、担当さんが言った言葉が「ザケルガっていう呪文は手から出るザケルなんですね?」と…。「いや、ガッシュは口から出して、ゼオンは手から出すんですよ。ガッシュゼオンも(ザケルガ自体は)同じですよ、同じ雷系の呪文ですから。ザケルガは(ガッシュが出す方もゼオンが出す方も)同じランクの呪文なんですよ」というのが読者なら言わなくてもわかるじゃないですか!そのときに「ああ、そうか、変なアイディアをごり押しして、かみ合わなくて苦労した原因はこれか」と思って…。

G:
つまり、担当の編集が、担当している漫画家のマンガを読んでいないとわかった瞬間ですね。

雷句:
いろいろと、あるのです…。

石版編の人は何代目担当だったのかな?
4代目は読まなくても設定ぐらい把握しなくて良いのか。今時はWikipedia見るって手段もあるのだが。

G:
アシスタント時代から、今までずっといろいろな編集を見ていると思うのですが、昔の時代の編集さんと今の時代の編集さんとを比べるとなんだか段々劣化してきているような感じがするのですが、どうでしょうか?どのあたりで明確な違いというのを感じますか?

雷句:
えーっとですね、やはり、4代目になったときです。遅刻とかは怒れば何とかなるんです。でも、「自宅のFAXは壊れている」「まだFAXは壊れている」とか、明らかに仕事放棄じゃないですか…それはやっぱりちょっとおかしいと思ったんですよ。マンガの原稿を返すときは3代目まではちゃんと手で持ってきていたんですよ。紛失したときに運送会社のせいにしたくないということで。それが4代目の方からかな…うん、5代目の人からはもう確実に、あからさまに郵送にしていました。「本当にいいの、これでいいの?」みたいに思っていたのですが…。つまり、編集者が原稿を直に手で持ってくるということはなくなっていきました。それが劣化ですね。5代目の時は誤植を注意したらにらみつけてきたというだけで「ああもうだめだ」と思いましたね。

G:
郵送というと、経路を記録するとかそういうタイプの郵送ではなくて、要するに、普通の郵便ですか?

雷句:
普通に宅急便です。原稿紛失があったことがわかったあとも宅急便でした。ああもういいや、と…怒ったらもう負けだから、と…。腹を立てるだけ自分が損するだけなので…。

原稿送るのに宅急便で追跡無し。雷句誠が呆れてるんだから、これは業界的にも珍しいのかな?

G:
不運にもいろいろ変わったというか、そういう編集さんを多く見てきたわけですが、漫画家にとって「理想の編集者」とはどのようなものであると考えていますか?

雷句:
そうですね、やっぱり一緒になってお話しを作ってくれる人です。自分のマンガを愛してくれるのが一番うれしいです。自分のマンガを愛してくれていて、読んでいてくれれば、やっぱり見当違いなアイディアというのは出ないはずなんですよ。愛してくれているのがわかるようなアイディア、例えば、このキャラがこういうことをすればもっと面白くなるはず、みたいな感じです。お話しが活かせるアイディアを持っている編集さんがうれしいです。やっぱり、愛がない編集さんのアイディアは、どう考えてもうまく転びませんし、作品を作っていてもストレスだけがたまりますので。強いて言えば、さらに言えば、自分から「今度の回はここが舞台なので取材に行ってきます」とか「この回で役に立つ文献とか資料とかを探してきます」とかそういうこともやってほしいです。というか、昔の編集さんはやっていたんですよね…。

G:
よく聞きますね、そういうのは。

雷句:
でも今はそういうのを求めると、あからさまに嫌な顔をするので、あの、もう、自分の知り合いの漫画家さんも「頼むと嫌な顔されるから絶対に頼まない」と言っていましたね。そういうことになってます。あとは「直し」を出すなら、責任を取って「何時でもいいから連絡ください」みたいな一言は欲しいです。自分もあまり編集さんに苦労をかけたくないので、FAXとかもちゃんと編集さんが起きている時間帯、お昼頃に流しています。あと深夜とかにたたき起こすような電話は一切かけていません。

G:
えーっと、編集者の人は資料とかは一切揃えてくれない、と…?

雷句:
ええ、まったくしてくれませんね。まったくというか、初代担当さんが言った言葉で「ガッシュだけは取材一切無しでやろうと思ってるから」と。「それは一体なんだ…?」と思いました。出鼻でそう言われましたね。とは言いつつも、その人はほかのマンガの時には、マンガに出てくる乗り物の会社に行って取材をするとか、そういうのはしっかりやってました。ただ、ガッシュに対してはやっていませんでしたね…。

取材しない宣言って・・・なにそれ?

G:
今までの担当になった編集さんというのは、「金色のガッシュ!!」の専属というわけではなかったのですか?

雷句:
初代から3代目までは複数持ってました。4代目と5代目は専属でした。あと、サンデー編集部には連載している漫画家さんと同じ数の編集部員がいると思うんですよ。それならなぜ一人の編集さんに複数の漫画家さんを担当させるのかというと、使えない編集者がいるんです。まったく担当を持っていない編集者が本当に、ごろごろいるんです。「なぜ担当を持たない編集さんがいるんですか?」と聞いたら「いや、あいつは平気で大御所とかに無礼な態度を取るから、任せられないんだよ」と。

掛け持ちの人は能力がある人だから、専属になって対応が酷くなったのね。

雷句:
あと、初代の担当の方があまりにも口が悪い方だったので一回、当時の編集長に相談したことがあったんですよ。そうしたら「いや、あいつがどれだけ働いていると思っている。本当に今の編集部は働かないんだよ。あいつがどれだけ役に立っていると思っているんだ。あいつはがんばっているから、なんとかやってくれ」と言われました。

G:
なるほど。陳述書にも書いてありましたが、口は悪いけれども、仕事はちゃんとしている、と。

雷句:
そうです。今でももしかしたら本当に、担当を持っていない、持たせてもらえない編集者が何人もいるんじゃないかなとは思います。

G:
編集の人数が足りないから複数の作家さんを受け持つというのならわかりますが、そういう理由は…使い物にならない編集を置いておくというのはちょっと…。

雷句:
上の方の人も本当に困ってましたね。言うことを聞かない、と。こういうことを言うと「いや、そんなことはない」と言われるかもしれないんですが、当時の編集長の叫びは身に染みましたね…本当に。

取材しないのも掛け持ちで無理を重ねているからか。始めに宣言することで負荷を安定させようってことだな。
しっかし言う事をきかない編集が居るって・・・まさかコネで入った人ですか?
もしかして小学館は会社食い物にされてんの?

G:
先ほどは連載を持ってから、編集者によるストーリーへの口出しとかアイディア提供とか、そういうのを聞いたのですが、今度は漫画家として商業誌デビューに興味のある漫画家のタマゴ、そういう立場の場合、編集者からはどれぐらいストーリーに関するアドバイスなどがあるのでしょう?

雷句:
自分の場合は二言、三言でした。これの設定をこう変えない?とか。話に口出しすると言うよりは、新人の読み切りというのは雑誌に載るか載らないかわからないものじゃないですか?だからこのキャラをもっと魅力的にしようとか、変なクセを持たせようとか、その程度です。あとたまに、方程式を教えてくれたりします。方程式というのはあまりよくはないんですけど、まったく話ができない新人にはまず一回、方程式を覚えさせるといいので。ここでこうなって、ここに敵がいて、ここでこの伏線を前に張っておけば、一つのお話しになるよ、みたいな。

G:
ああ、お話しの作り方みたいな感じですね。

雷句:
そうです。それでまずちょっと作ってみようとかそういうのはあるのですが、それだけやっていても延々とデビューできないんですよ。本当に方程式だけのマンガなんてつまらないじゃないですか。読んでて先が「読める」じゃないですか。それを打破していくのが個々の才能になってきますね。キャラクターに光を持たせたり、特別な罠を仕掛けたり、それぞれの作家さんの才能でそのあとは方程式を離れて…。

G:
基本から応用みたいな感じですね。

雷句:
そうです。だから新人というものは編集からのどんな無謀な意見でも面白くしていくのが、常識でした。逆に言えば、月刊連載と言ったときも話の打ち合わせのときに「次どうしましょう、編集さん?」と聞くと「次、女医出さない?いわゆる、女性の医者だよね」「…はい」「じゃ、よろしく!」これを「30秒打ち合わせ」と言うんですね、とても印象に残ってます。やっぱり新人なんてそんなもんです。自分も結局、何を言われてもあとは自分で揃えて持って行く、それで気にくわなかったら直しを出されて。じゃあ今度はこうやって、編集を驚かせてやるぞ、みたいな感じでやっていく、と。この段階でも悲鳴を上げている若い子はたくさんいるんですけど、一応自分はその段階でも結構踏ん張って面白いものを作り上げて持って行っていました。

方程式から「30秒打ち合わせ」ですか。こうやってアイデアを無理にでも搾り出すことになるんですねぇ。面白くなるまでとにかくやるのが基本。
こっちは週刊新潮のインタビュー記事に対する弁明。

みなさんも、読まれた方が多いと思いますが、私ももちろん読みました。
で、インタビューよりも内容が何と言うか・・・凄い状態になってまして・・・
まあ、とにかく、事実とそうでない部分と、行ってみましょう。はぁ・・・

ということで。インタビューを受けた側の言い分。

まずはアシスタントに対して自分が言った言葉。
「この裏切り者」「嘘つき」「前からおかしいと思っていたんだ」「こんな人間とよく仕事ができたもんだ」「どこまで馬鹿にするんだ」まず、全部違います。まずコレに関しては、怒り出すと言うと書いてありますが、自分が怒るときは仕事でのミスや不具合のときのみです。なぜ人の人格に関して怒らなくてはいけないのかわかりません。仕事に必要ないのです。しかもこの件に関して、新潮さんのインタビューは『「嘘つき」に関して酷い扱いを受けたアシスタントの証言がある。』と言う事だけでした。その他の言葉はこのインタビューでは出てません。

「酷い扱いを受けたというアシスタント」の証言に基づく記述か。実在するのか疑っても良いかもね。

「どこまで馬鹿にするんだ」この言葉は、ガッシュが終わったらもう小学館の仕事はしないと言っているにも関わらず、何も無かった振りをして仕事を持ってくる編集者には言いました。まあ、それ以前にも陳述書に書いたような対応を編集者にさんざん取られているので・・・。との事でアシスタントに向けた言葉ではありません。編集者に対しても、仕事を持ってきた編集部に直接FAXで伝えた物で、怒鳴る事はありません。

編集者には言ったけどアシスタントには言ってないと。誰が誰に言ったかなんてのはどうでもいいのかね。いかにもゴシップ的で印象の強い言葉だけ伝えたらそれで良いみたいな。

「アシスタントが買い出しに行って、20分で帰って来ないと激怒するんです。元の仕事場では、階下の人間から、静かにしてほしいと苦情を言われた時、『静かにしろ!』と印刷した紙を、仕事場の壁にびっしり張ったそうです」(漫画編集者)

アシスタントには買い出しを頼んでますが、朝、昼、晩の3回をそれぞれ別のアシさんに頼んで行ってもらっています。ですから、平均的な買い出しの時間が解るのです。その中の一人が遅いと、周りのみんなにも迷惑がかかるのでそれで注意します。(この事はインタビューでしっかりと答えましたが新潮さんは書いてくれませんでした。)

「『静かにしろ!』と印刷した紙を、仕事場の壁にびっしり張った」コレはもう何と言うか、無茶苦茶です。その張り紙をした事も無いですし、自分の仕事場(昔も)は夜の音には気を使っているので苦情を受けた事もありません。(本当です。アパートの時は特に気を使ってました。)

買出しの平均時間を出して注意はしているということだけど、内容は触れてない。書いてくれなかったということだけど、どんな注意をしたんだろう。
騒音と張り紙については否定。いつも怒鳴ってるイメージで書かれたか。

「うまく背景が描けなかったことがあったのですが、雷句先生は壁を穴が開くほど殴りつけました」(別のアシスタント)

コレは一部本当です。自分は、仕事に関して本当に怒ったら壁を殴ります。穴もあけました。でも、しょっちゅうではありません。壁を殴ったのは2回。机は拳ではなく握った手の小指側の腹(?)で叩く時があります。机に拳で殴った時は骨折をした1回のみです。あと、「背景が描けない」と、いうよりは、締め切りが迫ってるのに急がない。何度教えても同じミスを繰り返す。などの時です。ミスなどは、普通に注意をし、技術を教え、直しなどを出します。しかし教えた事を全く無視した仕事を何度も持ってきたり、仕事に対してふざけてる態度が直らなくなってきたら怒ります。仕事なのです。遊びではありません。週刊連載の厳しさを教えるためもありますが、本気で怒るとやっと、アシさんも本気で仕事をし、技術がしっかりと上がる人が出ます。ですが、上記の経緯でアシさんに一度目に怒って、その原因が直らず、しばらく様子を見て2回目怒っても直らなかった時は、その後冷静にそのアシさんと話をして、「ゴメン、家では育てられない。」と、辞めてもらいます。やはり漫画の厳しさ(特に週刊連載)を知っているので、自分の所で育てきれない、無理かもしれないと思った時は申し訳ありませんが、辞めるか、別の仕事場へ移ってもらっています。(自分じゃダメでも他の先生だったら育てれるかもしれないから)アシスタントは漫画家になるための道です。就職なら、しっかりとした会社の方でしなければ行けません。自分自身も一つの連載が終わったら、次の連載が上手く行くとは限りません。コレは全ての漫画家さんに言える事です。だから、この辺りは厳しくしています。きっと、今回新潮さんのインタビューに情報を出したのも、自分の所では育てきれなかったアシさん達だと思います。

壁に穴を開けたのは本当。拳で殴ったのは壁を2回と机を1回。机で骨折した。殴るのではなく振り下ろすように叩くことは良くある模様。
アシスタントの仕事振りが改善しないと怒るが、漫画家に成る為の修行だから厳しくやっている。その為、自分の下を去ったアシスタントがネガティブな評価をしていると考えている。

「夜中に編集さんに大量のファックスを送りつけ、用紙がなくなるほどの嫌がらせをしたこともありました。内容は、”お前はいつも俺を馬鹿にしてんだろう”といった類のものでした」(同)

これは全くの嘘です。ちなみにこの質問、実際のインタビューでは「夜中にアシスタントに大量のファックスを送りつけ・・・」でした。自分が「何のために夜中アシスタントに大量のファックスをするのですか?」と聞くと、新潮さん「なんの・・・ため・・でしょうねぇ・・・」と、答えていました。そして、記事になってみたら上記のように『アシスタントのファックスに』が『編集のファックスに』に変わっていました・・・もちろんこのインタビューの会話は録音してあります。ちなみにいえば、新潮さんのレコーダーでもちゃんとこの様子は録音してあります。

元々「アシスタントに大量のファックス」をしたという件の質問だったものが、何の為にと聞き返したら答えに詰まり、記事では「アシスタントに嫌がらせ」が「編集に嫌がらせ」に変わった。
録音も持っている。

「少年サンデー編集部に送ったファックスには、”このままでは、いつか本当に人を殴り、傷害事件を起こしそうで怖い””この文章を読んでも自分がおかしいことはわかるでしょう”などと書いていたんです」(先の漫画編集者)

コレは本当です。いわゆるアシさんにケガをさせて、自分の右手を折った時のファックスです。アシスタントさんをケガさせてしまった時点で本当にもうダメだと思いました。ですから、このファックスの書面の続きで「ファウード編が終わってから、1年でガッシュを終わらせてください。それ以降、週刊少年サンデー、及び(株)小学館でのお仕事を一切お断りさせてください。」とのファックスを送りました。あの時は、本当にあのままサンデー編集者との仕事を続けていたら、本当にストレスに耐えきれないと危険を感じました。上記の内容は、当時のサンデー編集者のやり方に「警告」も含めて出しました。当時、編集者が原因かどうかは解りませんが、とても精神的につらい状態でがんばっている、サンデーの漫画家さんの噂を人づてに聞きました。自分はこう言う編集者の仕事の仕方でも負けずにがんばるぞ!と、がんばった有り様がこの事件です。憶測かも知れませんが、当時の編集部への「警告」も含め、このファックスを送りました。もちろん、こう書くことでサンデー、ひいては小学館を出る覚悟が本気であるという意思表示も入っています。

追い詰められた精神状態で脅しの意味合いも含めて過激な文章を書いた模様。
で、随分酷い個所もありましたが弁護士が動いたそうで。

一応、この記事の件に関してはすでに今日の夕方、弁護士さんとの相談はすませてあり、行動を起こしてもらっています。

ちなみに新潮さんのインタビューはとても攻撃的ではありましたが、一応、自分がお願いした件とかは記事に出さないなど、(詳しくは書きませんが、自分の師匠である藤田先生まで巻き込もうとする姿勢が出ましたので、「そういうことはしないで下さい。」とお願いしたのです。)記者としての「義」は果たしてくれましたよ。最後は小学館に非があると書いてくれましたしね。

嫌な思いをしたみたいですが、はっきりお願いした部分は聞き入れてくれたという感じでフォロー。

で、やはり申し訳ありませんが、もう週刊新潮さんのインタビューをお引き受けすることはありません・・・ちょこっと・・・懲りました・・・

やっぱりもう嫌だそうです。