こりゃすげぇ

あずまんが大王スペイン語版だそうなんですが。

春日歩「なー パンツ一丁の『丁』ってなに?」

春日歩「一『枚』とちゃうの?

水原暦「突然だな おまえ。なんだ パンツって……」

千尋「拳銃とか一丁って言うよね。たしか」

春日歩「拳銃…… パンツ……」

春日歩「武器と関係が?

水原暦「もういい だまってろ」

さて、これは注釈を付けたとしても翻訳は不可能でしょう。丁ないし枚といった接尾語は、ヨーロッパ系言語には存在しませんから。そこで西語版では、かなり思い切った訳を試みています。
http://sowhat.magical.gr.jp/spain/manga/ad_bragas.jpg(西)


Osaka: Una cosa. Por que las BRAGAS son en plular?
(なぁ、どうしてパンティは1枚でも複数形なん?)

Osaka: Es una sola pieza, no?
(布切れ1枚だけやんか?)

Koyomi: Y eso a que viene? Sera porque metes las dos piernas.
(どうしてそんなことを…… そりゃぁ、脚は2本あるからだろう。)

Chihiro: Porque claro, una RECORTADA por ejempro, tiene dos canones y es singlar. Fijate.
(そういえば、ライフル銃なんかは2丁あっても単数形だよね、たしか。)

Osaka: Una RECORTADA... Unas BRAGAS...
(ライフル…… パンティ……)

Osaka: Tienen alogo que ver las armas y las bragas?
(武器とパンツに何か関連が?)

Koyomi: Uff, yo paso.
(うっ。あたしパス。)

 なんと、拳銃とパンツというモチーフはそのままに保ちながら、「複数あっても単数形」と「ひとつだけでも複数形」というスペイン語文法に即した話題に変更しているのです。お見事。

他のも超がんばってます。すげぇぞ翻訳者。
これ、元はなんだと思う?

gente: Tirar!! (不定詞)

Osaka: No es "TIRAD"? (命令形じゃないん?)

gente: Tirar!! (不定詞)

Osaka: Tiiirar... (不定詞)

Osaka: Oye, no es "tirad"? (ねぇ、命令形の方がいいんとちゃう?)

Tomo: Calla y estira! (黙って引っ張れ!)

「オーエス」ですよ。
これは想像が付きますね。

Tomo: Que habeis pedido? Yo ESCALOPE CON ARROZ.
(何を注文した? あたしは牛カツレツとご飯の盛り合わせ〜)

Koyomi: Ah, pues yo...
(あ〜 私は……)

Tomo: No!! Son FIDEOS AL CURRY!!
(あ!! 細切りパスタのカレー風味だ!!)

Tomo: Todos a cubierto! Ese caldo mancha mucho!
(みんな隠れて! この煮汁は染みになるのよ!)

日本独自の食べ物を上手く表現してる。

 こうなりました。本書の末尾に、4頁にわたる訳者あとがきが掲載されているのですが、それによると最初はカレーラーメン(Curry Ramen)にしようかと考えていたそうです。でも、それだと今度はラーメンの解説が必要になりますからね。スペイン語でラーメンは“Fideos chinos en sopa”なので、そのままでは通じませんし。フキダシの枠内に収めるという制約により単語数を減らさなければならないという条件下で考えると、 “Fideos al curry”というのは良くできた訳です。

ラーメンも駄目じゃん!って思ったワケね。ってさすがに日本詳しいなw

Profesor Sr.Kimura: Porque me gusta estar rodeado quincean~eras!!
(何故なら15歳ぐらいの女の子が好きだから!!)

――わざわざ年齢指定しています(^^;) スペイン語にも「高校」に相当する単語“bachillerato superior”はあるのですが、制度が違うために大学予科の19歳あたりまで含んでしまうんですよね。欧米のハイティーンは胸郭部の発育が大変に優れていらっしゃるので、木村先生の射程範囲外でしょう。そこで「女子高生」が有する言外の意味を込めるために、15歳にしたものと思われます。

年齢下がったwwwwww

 閑話休題。方言については訳者も非常に苦労されたようで、あとがきに試行錯誤のあとが載っています。スペインも南部に行くと方言がありますから、アンダルシア弁をしゃべらせようともしてみたとか(^^;) で、結局どうしたかというと、スペインでもあまり使われない、もってまわった言い回しを使うことで、独特な言葉を話す人物という描き方をしています。

大阪弁って翻訳する時は鬼門になるんだな。ここまで親しまれてる方言を無視するわけにもいかんし、馴染みがあった上で特徴的な言葉を探さなければいけないんだから大変だ。
ある地方の言葉が国内全域に広まっているという大阪弁の状況はもしかして物凄く特殊なのでは?