常温核融合なんて夢物語です

絶望した!翼賛記事に疑問を持たず「夢がある」とか好意的に評価する輪に加わった、自分の脇の甘さに絶望した!
これね。orz

相当すごい人なんだな。公開実験にこだわるってのは実証主義的というか、文句言わせねぇって矜持を感じるような。

ああ笑えよ!気が済むまで笑えよ!
何が矜持なものか。ありゃとりあえず公開実験という形式をとっておけば批判も受けて立つ姿勢に見えるので、穴だらけの実験でも信用が得られるという一種のトリックだ。ごまかしの手段だ。*1そんなもの信じて間抜けなヤツめ。
ともかくこれを見てくださいよ。

ガ島通信さんが既に書いている事だが、この記事の最大の問題点は、常温核融合Wikipedia:日本語記事がアレなことになっているので英語版で)という議論が紛糾しており、過去に間違いの山が積もり死屍累々な分野に対し、一方的な翼賛記事を書いてしまったことにある。過去の経緯を踏まえ常温核融合と聞いたらまず疑ってかからないようでは、この分野の情報をきちんと伝えることはできないだろう。

紹介されているガ島通信より。

学会で発表されることが科学的に正しいことを担保しているわけでもありませんし、常温核融合については、ざっくりと事情を知る際に有効なウィキペディアを見ても、さまざまな議論があることが理解できます。もう少し慎重な扱いが行われるべき事象でしょう。

にもかかわらず、この記事はプラスの評価だけ掲載し、それも二番目は「匿名」コメントでまったく補強になっていません。無理にインパクトのある記事にしようとしたのではないかと疑われます。

http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20080614

こういう微妙な分野なのにあまりに好意的な評価をされている時点で疑うべきでしたね。ああ俺の大馬鹿者め!
で、公開実験をしたこの人ですけど。

さて、記事中に出てくる水野氏は北海道大学工学研究科、エネルギー生産環境システム講座の助教をされている。
・産学プラザ研究者DB:水野忠彦
・北大工/原子力環境材料学研究室・水野助手

60 才を超える定年間近な人であるにもかかわらず助手という時点で、アカデミックな分野である程度長い人なら「ああ、成程そういうことね」と頷くだろう。今はそうでもないが、独立行政法人化前は、大学が研究者の首を切ることはよほどの不祥事でもない限りは無理だった。トな方向に行ってしまう研究者というのはいつだって少数ながら存在するが、「研究内容がトである」というのはレイオフの理由にはならないのだ。
そういう場合どうなるかというと、早い段階で判明したならこんな風に万年助手となる。
万年助手の全てがトな人な訳ではないが、何か変な研究をしていて万年助手というのは、眉につばをつけるべき十分条件だ。
同様の例としては昨年九州大学を退官された「ししゃ科も会」の高尾氏などがよい例だろうか。
こういう話は多分アカデミックな世界の外にはあまり出ないので、覚えておいて損はないぞ。
#もっともこういう人は今後は任期更新の際に切られるんだろうけれど。

万年助手には気をつけましょう。
自分の様に知識が無い人間でも判断できるポイントだから、覚えておくに越したことはない。判断材料は多く持つ方が良いのだ。

さて、日本の常温核融合をウォッチする上で、資料として欠かせないのがこの本。
Amazon.co.jp: 固体内核反応研究〈No.1〉: 高橋 亮人, 山田 弘, 大森 唯義, 秋本 正, 沼田 博雄, 岩村 康弘, 水野 忠彦: 本
刊行が1999年なので既に十年前の本なのだが、この頃既にまともな核物理学者は常温核融合に見切りをつけていたので、国内の常温核融合ウォッチングの参考書としてかなり有効な本だ。
なんせ執筆陣を見ると、今回のニュースに出てきた人間が三人とも載ってるからな。

北大の水野氏と岩手大の山田氏もだが、記事中で匿名になっていた「ある大手メーカーの有力研究員」というのも、ほぼ間違いなく三菱重工岩村氏だ。
逆に言うと、現在日本で常温核融合の肯定的なコメントを取ろうと思ったら、彼らや阪大の荒田センセのところにでも行くしかないということ。
高齢化率が尋常じゃなく高い分野なので、あと10年もすれば消滅しそうだな。

なんということだ・・・そんなに有名だったのか。しかも一人じゃねぇ。orz

次に肝心の実験内容の信頼性についてだが、2chの関連スレに投げられていたこのコメントが全てだと思う。

ということで引用されたレスから。

でも、その計算は 原料のフェナントレンの1%が反応した と想定してるよ。
原料のたった1%が核反応しただけで、計算上は今回の30倍の反応が起きる。
過剰熱の発生は+30℃ではなくて、30倍の+900℃になるはずで、反応容器は溶けてしまう。

この研究者は、どういう事前予測を立ててこの実験を組んだんだろう?
普通は「予想以上に反応が進んでも装置に余裕があるように」考えて実験の計画を立てるでしょ?

つまり、この人は、核反応を期待してなかったって思えるわけよ。
本気で核反応が起きると予想していたなら、もっとゴツイ装置を組んでるはず。
この実験は「熱が出たよ、すごいでしょ」とアピールするためだけに
その辺にある装置を組んだお手軽実験だったんだと思う。

入れたものがマトモに反応したら事故が起きるような状態で実験するバカとは思えません。「公開実験」で注目されるためのパフォーマンスだったんでしょうね。あーあ。

つか、電気炉の加熱のオーバーシュートかどうか、普通フェナントレン入れない場合の
温度変化との比較とかをやるもんじゃないのかな?
比較して余剰熱出たのなら、まあ核反応じゃないにせよなんか起きたらしいと言える
かもだが、それもしないで設定値から上がったと言ってるだけっぽいんだよな、コレ。

対象実験無し規準無し。こんなもんになんの価値がありましょう。あーもう!故意はしゅーどさーいえーんす!せめてジジイじゃなくて白衣の似合う(ry

つまりはそういうこと。
私が常温核融合のニュースをまるで信用できない理由の一つが、こういう実験系のいい加減さや安全管理の不備にある。

あと「国際常温核融合学会」というのは、常温核融合の研究者だけの、いわば身内の集まり。
身内の集まりでしか発表できないうちは、常温核融合はニュース価値が無いと私は考えている。
本気で外部の検証に耐えるものができたなら、もっとでかい学会に出てくるはずだから、そのとき改めて検証すればいい。

はい。学会ったって色々あるというお話ですね。
さて極めつけが最後のこれ。

ついでに今気付いたんだが、この人普通に高尾センセと同列に語られている。というか面識もあるらしい。
「水野忠彦 高尾征治」でぐぐったら大当たりだった。
似たもの同士だとは思っていたが、本当につながりがあったとは。

今後、量子の世界の謎がどんどん解き明かされるにつれて、原子転換とニュートリノとの関係や、原子転換と腸内細菌や微生物との関係なども色々分かってくるんじゃないかって思っています。これは推測ですが生体内原子転換には腸内細菌や水や温度が深く関わっているように思います。さらに想念や気のような見えない命のエネルギー、つまり僕らがライフプラズマって呼ぶ原子転換を促進するある種の生命エネルギー。これはたぶん共利共生のご褒美に腸内細菌や微生物が私たちの体に引っ張ってきてくれているっていうか、供与してくれてるんじゃないかと、そんな気がするんですよね。

なにその駄目すぎるトップ3。
記事の内容もあいまって腹筋を破壊されるかと思ったぞ。

    /::::i::::、:::ヽ、:::\:ヽ:\::ヽ:、:ヽ:、:',    早  駄
    /::i|::l::ト、ヽ::、:ヽ:、:::::\::ヽ::l:ヽ:i::i:::!    く   目
   /:/:!:::!:|::ヽ:\ヽ:::、:\::ヽ:ヽ!:::i::|:::!::!   な  だ
   !ハ::|::::i::l:|心、:ヽ::\:ヽ_\、\:ヽ:|!:|:|i.  ん
    i、:!:|:、N{、ヒjヽゝ\ヾイ ヒj >、ヽi:、:|:l:   と   こ
     ヽ:!::トヽ ̄ l! `  ` ̄´ |::l::|:|j:,!:!  か  い
      ト、::! u         j |::/lj:::!リ  し  つ
        ヾ、  丶 -    u リイ:|リ   な   ら
        リヽ ‐、ー- 、_   /イ:::i    い  :
       rー'"ト:l゙、   ̄   ./  , |::!    と   :
      / ヘ ヾ ヽ、 _,. '   / |:'     

記事のブックマークコメントも参照。
はてなブックマーク - 幻影随想: 北大の常温核融合ネタについて調べてみたよ

この分野は何故か工学者ばかりで物理学者が一人もいないという/原理を知っている物理学者は筋の悪さを認識しているが工学者は原理より現象が先に立つのでそれを見抜けない。

ああ、確かに物理学者じゃねーや。ははは・・・(乾いた笑い)

やはりそうだったか・・・あっさり状況だけから論破されるとはね。面倒くさがらずにエネルギーの計算すればよかった。あと、触媒に利用されていた白金の先物市場で関係者がインサイダー取引してないか要チェック。

先物取引か・・・そういうのが目的の人もいないとは言えないもんな。

そもそも、信憑性のあるものだったら、BBCやCNNなどの世界的大衆テレビで報道されるよな。

だよねぇ(遠い目)*2
これも見ときましょう。

 たとえワシントンで開かれる国際学会で発表と言っても、常温核融合を信じる学者の会である「国際常温核融合学会」で発表することは、学問的評価が与えられたということとはまったく次元の違う話であるということを、この記事を書いた記者さんはわからなかったのだと思います。

いまさらだけど記者も素人ばっかだからなぁ。

 プロの科学者ならば、おもしろい未知の現象を見つけたら興奮するし、発表したくなる気持ちはわかるのですが、実験によって得られた現象に再現性があったとしても、その結果を説明するのに、すでに棄却された仮説である「常温核融合」を持ってくるというのは、私からみると科学者としては「自殺行為」に見えてしまいます。

 「常温核融合」というロマンを捨てられない気持ちはわからないでもないですが、我々が利用することのできるエネルギーを生み出す可能性がまったくとない「未知の反応」を常温核融合という名で呼び続けるのは、大学で生きていこうという人間としてはあまりにも危険な行為であるように思われます。

「未知の反応」ならここまでみんなに突っ込まれないかわりに話題にもならなかったんだよなぁ。

 Wikipediaによると、この方も10年ほど前には「常温核融合の正体は原子核が他の原子核に変化する『核変換』現象だったという、当初考えられていた常温核融合に対する解釈とはまったく異なる内容の論文を発表している」そうなので、そっちの方面で地道な基礎科学をやって楽しむという道はなかったのでしょうか。

 人目を引こうと、暴走してしまったのだとしたら、本当に気の毒な感じがします。

トンデモにはなんとも言えない悲哀があるな。
コメント欄の議論も良いです。
kikulog*3でも「科学と擬似科学の間にあるグレーゾーン」についてやりとりされたのを見たことがあります。明確に「ここからはトンデモですよ」と言い切れるものでは無いんですよね。誰もやらない研究を続けてる万年助教授が、確証の得られない事を追求し続けていてもそれはトンデモじゃありません。理論の立て方、実験の方法が正しいなら、単に証明できていない仮説であるというだけで、ちゃんとした科学です。
常温核融合だって、水野さんみたいに適当な実験で結果ばかり求めるんじゃなくて、しっかりした検証を積み重ねていくなら立派な研究分野です。夢を追い続けていて良いと思います。ただ、お願いだから正しい方法でやってくださいよという、ただそれだけのことなんですがねぇ・・・

ところで「核変換」てあれですかさっきのライフプラズマ・・・

*1:本人は本気で信じてやってるのかも知れないが、実験の不備にも気付かないで信じたい結果を出す「実験」をするのは自分で自分を騙しているようなものだろう。

*2:平行法で裸眼立体視できそう。

*3:と学会の菊池誠がやってるブログ。