国連が認める最貧国

今週のCBSドキュメントは3本ともかなり面白かった。その1本目、プランピーナッツの話。
国連が途上国の中でも最下位と認める貧しい国、ニジェール。その貧しい国の子供を救う携帯保存食プランピーナッツ。
名前の区切りはプランピー・ナッツでPlumpのぽっちゃりしたという意味からプランピーというスラングがあるんだとか。ピーナッツとかけてプランピーナッツという複合語なのだろう。
ピーナッツバター・粉ミルク・砂糖・ビタミン及びミネラルを混合したもので袋入りのペーストになっており、脂肪と蛋白質に糖分という基本的な栄養分に補酵素も含まれる総合栄養食。
国境無き医師団が栄養失調の子供を治療する際に渡す他、配給も行って貧しい子供達の栄養状態改善に努めている。
日本ユニセフ協会 特集:栄養不良

急性で重度の栄養失調になってしまった子どもはとても危険な状態なので、入院して少しずつ治療をしなければいけません。しかし家族が貧しいと、お母さんが付き添いのための費用(食事代等)を払えない、家を空けてしまうとほかの子どもたちの面倒を見る人がいない、畑仕事が遅れてしまうなど、いろんな理由で、子どもの入院を拒否するお母さんがとても多いです。それで子どもが死んでしまうのはやはり放っておけないので、一日3パック必ず食べさせて、一週間経ったらまた外来に診療に来てくださいというような指示を出し、家に持ち帰ってもらうように作られたのが「プランピー・ナッツ」です。

だいたい1パック500キロカロリーで、治療の際に必要な微量栄養素も添加されています。かどを切ってそのままチューチュー吸えばいいので、衛生的にも安心です。粉ミルクをわたすと、汚れた水で溶いてしまって下痢の原因になることがしばしばあります。 

ニジェールの人々は月収1ドルでヤギやラクダに乗って生活しているという。入院費用が払えないのも無理は無い。

「プランピー・ナッツ」は急性の消耗症、特に緊急の治療を必要とする重度の消耗症のためのものなので、実際に「プランピー・ナッツ」を必要とする状態にあるのは、5歳未満の子どもの約2〜3%です。急性の消耗症でも骨と皮のようにしわしわになってしまう場合と、むくみがでる場合があります。 

右の写真の女の子は見た目には元気で、すぐさま治療を必要とする病気の状態でもないので、本当にわかりにくいです。

5人に1人が5歳までに死亡するそうだが、貧しさから診察を避けるということもあるのだろう。今すぐに治療が必要な状態なのかどうか見極めるのは難しいから、迷っている間に手遅れということになってしまう。そうしたことを防ぐ為かMSF(国境無き医師団)は体重測定を行っている。
http://www.msf.or.jp/2007/04/16/5770/post_76.php

2006年、国境なき医師団(MSF)は、重度・中程度を問わず急性栄養失調に陥っているすべての子どもの治療に、そのまま食べられる栄養食品(RUTF)であるプランピーナッツを利用することにおいて、望ましい成果を挙げた。しかし、ニジェールにおける栄養失調との闘いに向けた動員は進んでいるものの、いまだに対応は不十分である。MSFは2007年、すべての3才未満児のニーズに合わせた栄養食品をハンガーギャップ(端境期の飢餓)の時期に配給するという、新たな戦略を試みる予定である。プログラム責任者補佐を務めるイザベル・ドゥフルニーが説明する。

私たちの目標は引き続き、全急性栄養失調率(GAM)への取り組みを強化することですが、介入の効果を高めるため、その方法を変えようとしています。ギダンルンジ郡では、ハンガーギャップの時期に大半の子どもたちの体重が減少し、多くの子どもが中程度の栄養失調に陥ります。そこでこの時期の間、月に一度、約5万人いる3才未満児全員にPlumpy’doz(プランビードーズ、ビタミンとミネラルを強化したミルクとピーナッツのペースト)を配給する予定です。この栄養食品はプランピーナッツとよく似ていますが、ビタミンと微量栄養素の配合が改良されています。

2007年には、重度の栄養失調の患者数がわずかであった2006年に匹敵する成果を挙げるとともに、今より運営が容易なプログラムを開発できることを期待しています。それはまさに賭けのようなものです。5万人の子どもたちに食糧配給を行うのは至難の業です。私たちは、栄養食品が有効に機能し、その結果、配給する量が減ることを願っています。また、配給の実施に関してはニジェール当局が持つノウハウにも大きく依存することになります。

第2段階では、WFPとニジェール政府が配給を引き継ぐことを望んでいます。この点については、2つの問題が残っています。第一に、栄養失調の治療に関与する関係者が政治的意志をはっきりと示さなければなりません。第二に、RUTFは1kg当たり2〜3ユーロ(約320〜470円)と、いまだにコストが高すぎます。私たちは、プランピードーズの費用を削減するためのさまざまな方法、特に現地で生産する方法を模索しています。

http://www.msf.or.jp/2007/07/09/5849/post_119.php

ハンガーギャップ(端境期の飢餓)が始まり、農村部の住民は食事の回数を減らすことを余儀なくされています。彼らは次の収穫期までの4ヵ月間、既に乏しい備蓄のミレットを制限し、ミルクや豆などの食料を買うための少ないお金をやりくりしなければなりません。食糧事情は家族ごとに差がありますが、3才未満の子どもの栄養状況は比較的似通っています。幼い子どもは主食にミレットを食べ、たまにミルクが加わる程度なので、栄養の偏りの影響を最初に受けます。急成長期の幼い子どもは特定の栄養素を大量に必要とします。しかしここでは、食物摂取量が豊かで多様な国々では一般的に使用されている、必須栄養素を豊富に含む特定の乳児食を手に入れることは出来ません。子どもたちは栄養不足のため感染症にかかりやすくなり、彼らの大多数が、身体が生存のために体内の蓄積エネルギーに頼り始め、次第に消耗していく急性栄養失調のレベルにまで達しています。

母親も飢えている為ろくに母乳は出ないし、粉ミルクを配給しても水が汚れていて下痢の原因になってしまう。ハンガーギャップの時はひえなどの雑穀(ミレット)を潰して水に溶いた粥が僅かにあるというような状況らしい。
余りに食べるものがないから、やせ細った番犬はいても猫が一匹もいないというのは驚く。食べられてしまったのだ。

子どもが急性栄養失調に陥ると、免疫システムは正常に機能しなくなり、死亡する危険性が非常に高くなります。呼吸器感染症や胃腸炎などの子どもにとってはありふれた病気であっても、栄養失調の子どもの場合には、即座に合併症へと進行し、死亡の危険性が高くなるのです。大多数の子どもは、合併症を発症する前に最寄りの栄養治療センターで、そのまま食べられる栄養食品(RUTF)を用いた治療を受けます。また、耳感染やマラリアなどの合併症を伴わない病気に感染した場合には、適切な治療を受けます。医学的監視を毎週実施することで、子どもの体重が増加していなかった場合、あるいは病状が悪化している場合の迅速な対応が可能となります。約1ヵ月間にわたって子どもに栄養治療食を1日2回与えて、彼らの面倒を主に見るのは母親たちです。急性栄養失調児の95%が生後6ヵ月から3才までだということが分かっています。この年齢層はちょうど離乳期にあたります。離乳期は、母乳以外の固形食を食べ初めてから急成長期の終了までの、子どもの重要な過渡期にあたります。また、毎年の急性栄養失調のピークが、ハンガーギャップの時期の6月から10月と重なっていることも判明しています。

番組でも栄養失調になりやすい3歳までを乗り切ればかなり生存できるという話だった。
その為にプランピーナッツが活躍しているのだが、それでも手遅れの子供を看取るのは日常茶飯事。極度の栄養失調では皮膚が変色して崩れたり、傷に見えるような形で裂けるようだ。そして心不全などで死に至る。

2006年は、中程度の段階で治療することにより、重度の急性栄養失調の増加を未然に防ぐことに成功しました。しかし、何千人もの子どもが5〜6ヵ月という短期間に栄養治療センターに押し寄せました。さらに何万人もの子どもが栄養不足に陥って病気にかかりやすくなり、症状が悪化する子どももいました。2006年には栄養治療センターと診療所において実にのべ25万人の診察を行いました。
今年は、死亡の危険性が高い子どもの治療を栄養治療センターで行うことにしました。さらにギダンルンジ郡では、急性栄養失調になりやすい生後6ヵ月から3才までの子ども全員に対し、栄養補給の実施を拡大することにしました。私たちは、2006年の入院数に基づき、昨年はギダンルンジ郡でこの年齢層の子どもの半数が急性栄養失調にかかったと推定しています。そこで今年5月からは、RUTFを毎月4袋配給しています。栄養失調の危険性がある子どもには、毎日スプーン3杯分のRUTFを与えます。この分量には1日に必要な必須栄養素が含まれており、250キロカロリーが補給できます。これは通常の食べ物に加えて摂取すべき補助食品です。この配給は約6万3千人の子どもを対象に収穫期まで継続して行われます。病気にかかった子どもは栄養治療センターか、最寄りの診療所に搬送されます。今では、5才未満の子どもはニジェール保健省の医療施設で無料の治療が受けられるようになりました。
成果について評価するのは時期尚早ですが、MSFがRUTFを配給している地域の子どもに関しては、栄養治療センターへの入院数がやや減少してきています。さらに、この地域の子どもが入院施設への搬送を必要とする合併症を引き起こすケースも少なくなっています。これは明るい兆候です。

良い方向に向かっているようだけど、今までなぜなかったんだろう?
「小倉マーガリン」みたいに脂肪分と糖分が組み合わさったものが高カロリーであることは知られている。特に女性にはこの組み合わせの誘惑が強いものだということも身にしみてわかっている方が多いだろう。吉川美代子だって「ダイエットの敵」と笑っていた。プランピーナッツは甘いから子供も喜ぶらしいし。
以前は強化ミルクが使われていたが、配合の調整に医療スタッフの手が必要であったとか。カロリーメイトみたいなものは世界中、少なくとも先進国にはあると思うが、本当になぜ今までこういうものが開発されなかったのだろうか。不思議だ。
それから最後にピーター・バラカンが言ってたこともちょっと疑問。
途上国の貧しい子供にはアレルギーが無いそうで、今回のニジェールでも医師がそう言っていたのだが、ピーター・バラカンは大気汚染などに原因があるんじゃないかと言っていた。
しかし本当にそうだろうか?
アレルギーは免疫が異常な働きをする疾患なのだから、飢餓状態で免疫が弱って感染症にかかり易い状態の子供がアレルギーになるのは珍しいのでは?なんでも環境汚染のせいにするのは良くない。アレルギーのように原因不明なものはみんな環境汚染のせいにされてしまう。そこはちょっと待ったって感じだ。