NHKの真価

アニソンからそのまま続けて見てしまった番組。
「エンターテイナー華麗なる技の秘密2」
さまざまな分野のエキスパートを招き、その技を科学的に分析するといういかにもNHKって感じな番組だった。

マルチタスク

最初はいっこく堂
腹話術というのは口を閉じたまま喋るわけで、普通なら唇を使う音は出せない。ところがいっこく堂はそれを克服してまったく制約の無い会話をしているのである。
これ、伊集院光がUp’sで言ってた番組で、彼がいかに驚いていたかと共に事のあらましは知っていたのだが、知ってて見てもやっぱりすげぇ。
唇を使わずにパ行などを発音する方法は、考えるだけならそう難しくない。大方の想像通りで舌を代用にするのだが・・・習得に7年要したという。
そしていっこく堂といえば代表的な芸として思い出すのが衛星放送だが、どうしてあのようなことができるのか?
実は「マルチタスク能力」が優れているのだという。異なる作業を同時にこなす能力というわけだが、簡単なテストが2つ登場したのでやってみるとこの能力の凄さを感じられるだろう。

  • 五十音平行処理

「あ・い・う・え・お」と発声しながら「い・う・え・お・か」と一つずらして文字を書く。気をつけていてもつい同じ文字を書いたり考えてしまったりするはず。
すごいのがいっこく堂はテスト後半になると「だんだん成績が上がる」ところ。余裕あるな。

  • 一人じゃんけん

左手でグー・チョキ・パー、右手はそれに勝つパー・グー・チョキを左右同時に出し続ける。つまり一人でじゃんけんして右手をずっと勝たせる。これもおぼつかないはずだ。
通常、人間が何かに集中する場合は前頭葉の活動が高まるらしいのだが、実験中のいっこく堂は頭頂部の活動も高まる。これは物事を俯瞰して客観的な分析を加える時などに見られる活動だという。
会話も前頭葉が活動するのだが、ステージで喋る時にはやはり頭頂部を使っている模様。
本人も、ステージで自分はすごく客観的だと納得していた。観客からどう見えるか常に考えているし、動作も複数の人形が自然に動くよう気を配っている。そんないっこく堂は並列処理の鬼なのである。
ちなみに現在新技を練習中で、来年ぐらいには見られるとか。

トータルパフォーマンス

二人目は稲垣正司。バトントワリングの世界選手権で11年連続優勝という凄まじい経歴の選手である。彼の演技は速く・強く・正確。全てにおいて優れた完璧な演技を見せる、超人と言うに相応しい男。

  • 皮膚感覚

身体に吸い付くように高速で回転しつづけるバトン。目だけで捉えていては絶対に不可能な演技をバトントワラーは実行する。なぜバトンを正確に回転させることができるのか?その秘密が触覚である。
バトンの伝える圧力から重心を把握する研ぎ澄まされた感覚によって目隠しをしてもバトンが回せる。
傘も回せるw

  • 距離感覚

高く投げ上げたバトンの落下地点へ正確に移動する。バトンを正確に投げる。実際の軌道を把握する。稲垣選手は優れた距離感を持っている。
例えばコーンを2本立て、そこから同じ感覚で立つ3本目のコーンになるつもりで移動する。普通の人はずれてしまうが彼は正確に移動できる。離れた場所にバトンを投げても初見で目標へ命中させるコントロールの良さ。
しかし特筆すべきはその視力である。彼は「深視力」が高い。深視力とは視覚によって距離を測る能力であり、スポーツ選手では重要になる。
検査では箱の中で並んだ棒の間を前後に移動するもう一本の棒があり、直列したと思ったらボタンを押すことで誤差を測る。球技選手で7ミリぐらいが平均らしいが、彼の成績はなんと1ミリ以下という驚異的な精度だった。
ちなみにこの脅威の肉体の持ち主はシルク・ドゥ・ソレイユに入団するそうな。

兄弟という名のユニット

兄弟で即興を交えた連弾を行うピアノユニット、レ・フレール。その特徴は交差する腕と弾むリズム、何よりぴったり息の合ったプレイの見事さにある。
観測されたデータとしては打鍵が強いことと、本当に呼吸がシンクロしていることが分かった。
打鍵の強さは交差によって自然な指運びが可能になることで維持されている。交差させない普通の連弾では小指側に向かうと干渉するので強く引けない。
呼吸のシンクロは優れたプレイヤーのセッションで時折見られる現象とのことだが、この兄弟、なんと日常的に同じ呼吸リズムで活動しているのだ。兄弟なので遺伝的に近いということもあるが、大家族の中で幼い頃から並んでピアノを弾いていたことが現在の能力に繋がったと思われる。
仲が良いか聞かれて微妙な反応をしていた二人だが、即興演奏で困る時は無いかという話をした時、
「いきなりありえない速さで引き始めてついていけなかったり・・・」などと思い出しながら話す口ぶりは楽しそうに見えるのだった。
また、即興といってもデタラメに引くわけではないので、明確に役割分担が成されている。メロディーラインは掛け合いをするので右手は二人ともメロディを引くが、左手は弟がベース・ドラムに相当するパート、兄がそれに応じてカッティング、アクセントをつけるといった具合。
番組では譜面に起こしてバンドに演奏させていた。構成はリードギター・サブギター・ベース・ドラムの4パートで各腕に対応というわけ。
それにしても本当に楽しそうに演奏する兄弟だったなぁ。