アトキンス式

別にダイエットに熱を上げてるわけでもないが、前々から気にはなっていたのがアトキンス式ダイエット。何なんだ?というわけで。

まずはリスク

長期的影響に関する研究は少ないが、数少ない研究は1年後からは体重がもとに戻り、副作用が出ることが多いようだ。頭痛、筋肉の痙攣、下痢あなどが始まる。これは、炭水化物の不足がもたらす症候に一致する。これらは、単純に、組織に血糖を供給するのに十分な炭水化物が不足していることから起きる。成人の一日当たり炭水化物最低必要量は150グラムだが、このダイエットをする人はその5分の1しか摂取していないことになる。

 全粒穀物パンやシリアル、果物、野菜の摂取の制限は健康なダイエットとは言えず、心臓病や癌の危険も増やす。研究者は、長期的影響の研究を欠くこのダイエットは推奨できないと結論する。

http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/foodsafe/news/04090301.htm

やはり炭水化物を極端に制限するのは無理があるのでは。

専門は違うものの本職によるわかりやすい解説

健康ということさえ無視すれば、これでやせられるのは自明なのである。というのは、我々はこれと同じ原理で、短期間にげそげそ痩せていく人をいつも見ているからである。それは何かといえば、コントロール不良の糖尿病だ。

糖尿病では、Ⅰ型Ⅱ型の違いはあれ、組織に糖を取り入れるインシュリンが働かなくなるので、血中に糖がいくらあふれていようと、その糖はほとんど利用できず、組織は脂肪(部分的には蛋白質)の分解のみによってエネルギーを得なければならない。アトキンスダイエットで炭水化物を極端に制限した状態と同じになるわけだ。

http://med-legend.com/mt/archives/2004/03/post_235.html

人為的に低血糖症状を起こしてやるわけですな。この医師が実際に見てきた、糖尿病併発の患者の話もあって面白い。

All About糖尿病ガイドの河合勝幸氏

自身が糖尿病患者ということもあり、リスクも隠さず詳しく紹介している。
http://www.somos.co.jp/solution/028.htm

インスリンはエネルギー源のブドウ糖を細胞の中に取り入れたり、脂質 、タンパク質の代謝に関わる大切なホルモンです。
脂肪細胞はそのインスリン支配下にあります。血液中にインスリンがあれば、中性脂肪をせっせと合成して貯えます。インスリンが少なくなると中性脂肪を分解してエネルギー源として放出します。
太っている人はインスリンが効果的に働かないことが多く(これをインスリンレジスタンスと言います)、身体は必要量以上のインスリンを分泌しています。

この状態ではインスリンが常にあるので、低カロリーダイエットをしても脂肪の分解がなかなか進みません。かえって大切なタンパク質が減ってしまうのです。
インスリンダイエットは、インスリン分泌を刺激する食事の炭水化物を思い切って減らして、脂肪が効率的に分解できるようにしようとする考え方です。
具体的には炭水化物管理食です。

太っていると痩せないんですね。これはつらい。

今、アメリカで人気のあるポピュラーダイエットの大半が『低インスリンダイエット』です。アメリカでは心臓病を減らすために、まずコレステロールを槍玉にあげ、官民総出でローファット運動をしましたが、肥満は増える一方です。脂肪摂取はたしかに減少しましたが、その分炭水化物が増えてしまいました。
90年代になって農務省が 『フード・ピラミッド』を提唱して、更に高炭水化物食を推奨しましたが、全く効果がありません。太っている人に高炭水化物食を薦めるとどうなるでしょう?今までの話しでお分かりのように『減量』がますます難しくなるのです。
『低インスリンダイエット』が大衆の支持を受けているのはこういう背景があります。
代表的なものとしてアトキンス・ダイエット、シュガーバスターズ、ザ・ゾーンなどがあります。

栄養学の言葉では『ケトン ・ダイエット』と言います。いつの時代にもこの考え方は存在しました。Dr.アトキンスが1970年に活動を始める前は 、Stillman Dietというものがありました。その前は空軍パイロットの間に流行したのでAir Force Dietと呼ばれました。
信じられないかも知れませんが、高脂肪、高タンパク、低炭水化物食はヤセられるのです。

脂肪が減っても炭水化物で補うのでは意味が無い。それどころかインスリン分泌を促し食欲が増してしまう。それにしても空軍で流行したとは・・・

糖尿病でヤセるのと同じ原理ですから著しくバランスを欠いた食事です。医師であるDr.アトキンスは栄養補助食品と薬でサポートする体制をとりました。

「危険を承知で対抗策も用意した上でやる」っていうのが重要。
http://www.somos.co.jp/solution/029.htm

断食をすると3日目ぐらいから空腹感がなくなると聞いたことはありませんか?体が脂肪を多量に消費すると『ケトン尿』が出る状態になります。ケトンについては後述しますが、この状態は同時に食欲を無くさせるのです。冬篭りをしているクマさんは恐らく『低インスリンダイエット』をしているのですよ。だから、それ程空腹ではない筈です。

豊かな時代の『低インスリンダイエット』は、おいしいものを食べながら体を飢餓状態(ケトン尿)にしようという、ちょっとトリッキーな手法を用います。もちろん、いつまでも極端な低炭水化物食を続ける必要はありません。これは減量のために、体の『代謝カニズム』の変更をうながす『踏み切り台』に利用するのです。

食事が元に戻ったら代謝も戻るのでは?よくわからないな。

ヒトは1日50g以下の炭水化物摂取では、"ケトーシス"になるとされます。ケトーシスというのは体に"ケトン体"が異常な濃度に高まる症状です。
ケトン体(ketone body)とは聞き慣れない言葉ですが、ペンキを薄める"シンナー"を思い浮べてください。シンナーの成分の"アセトン"は代表的なケトンです。あんなものが体の中で作られているのです!

1日50g以下の炭水化物ではインスリンが十分に分泌されません。そうすると、最初の質問で答えたように中性脂肪が遊離脂肪酸に分解されて、どんどん血液中に放出されます。
一方でインスリンが無いので脂肪合成がストップします。
そうすると余ったエネルギーの行き場がなくなって、脂肪合成ではなく『ケトン体』というアセトンやアセト酢酸が多量に作られるようになります。
この『ケトン体』という物質は、日常の空腹時には大切なエネルギー源として体はごく普通に利用しています。脳はブドウ糖しかエネルギーに使えないなんて平気で言う医師が大勢いますが、そんなことは決してありません。脳はケトン体を元のアセチル-CoAに戻す酵素を持っているのです。

ケトン体は健康な人では血中3mg/dl以下ですが、多くなると呼気として体外に吐き出したり、ケトン尿として排泄します。アトキンスダイエットのような『ケトンダイエット』で急激に痩せられるのは、脂肪を分解して作る『ケトン体』を尿からどんどん捨ててしまうからです。
本来、このような状態はインスリンを十分に分泌できない『糖尿病』か、食物の無い『飢餓』の時に現われる症状なのですが、代表的なアトキンスダイエットでは1日の炭水化物を25gに制限して人為的に『ケトン尿』を作り出します。
ケトンは尿の試験紙(薬局で市販)で簡単に測ることができます。

ケトン体、簡単に測れるというからにはデータもあるのかな?炭水化物が50gでヤバイのに25gとは恐ろしい・・・
医学都市伝説では「尿からどんどん捨ててしまう」ということに懐疑的でしたね。記憶違い。疑問視したのは余った脂肪酸が腸から排泄されるといったこと。

てなわけで、このダイエット法はこと減量ということに関して、表面的な合理性を貫壁に保っているのである。自分で納得するためにいろいろ資料を集めてみたが、普通の臨床レベルの生化学常識からは、ツッコミするのは難しい。気になるのは、使われなかった脂肪酸はどこに行くのだろうと調べても、はっきりしたことがわからなかった点。腸から排泄されるなんて、怪しいダイエットサイトには書いてあるのだが、そんなことあるかねぇ。どんな形であれ、食ったものはエネルギーとして使い残せば身体にたまるはずなので、その辺が今ひとつ説得力不足である。

このダイエット法に対する正統的な栄養学や医学の批判というのも、結局はそこに集中している。レビューもいくつかあるが、短期的には成功するが、長い時間をとればあまり成功していないという言うものが多い。まあ、たしかに私なんか毎日フライドチキンとベーコンエッグばっかり食ってるので、鮭茶漬けとタラコおにぎりの夢見るようになってますものなぁ。たいがい、こっそり炭水化物食うようになりますぜ。

http://med-legend.com/mt/archives/2004/03/post_236.html

責任をもって「危険はない」と言い切れる人は誰もいません。
『断食道場』が心配ないのなら、『低インスリンダイエット』も同じ意味で心配いりません。
最も気になるのがケトアシドーシス(酸血症)と高タンパク食の腎臓への影響です。

自分でインスリンを作ることが出来ない1型糖尿病の人が、インスリン注射をしていなかったり、量を減らしすぎたりすると、血糖値が上がると共にケトン体を主とするエネルギー代謝になります。そこにインフルエンザ等の病気、けが、運動などの身体的ストレスが掛かると、肝臓でケトン体が急激かつ大量に作られます。
ケトン体とは"アセト酢酸"などですから、呼気や尿から体外に出す能力を超えて体内にたまると血液を酸性に傾けます。これがとても危険なDKA(糖尿病ケトアシドーシス)です。

こえぇ・・・肝臓壊れないか?酒飲みはやめた方がいいダイエットかもしれない。思ったのだが、肉食獣である猫の小便が酸っぱい臭いなの、もしかしてこれと関係ある?

メルクマニュアルからダイエットについてつまみぐい

食事 - 11. 栄養障害 - MSDマニュアル家庭版

ダイエットで約230グラムの脂肪を減らすには、体が消費する1日の総カロリーより200kcal少ない食事を10日間続けなければなりません。消費量よりも400kcal少なく摂取すると、5〜7日で約230グラムの減量が可能です。約450グラムの体脂肪は約3500kcalを蓄えます。

230g/weekだと月に1キロ痩せないね。

最も一般的な減量ダイエットでは、1日の総摂取カロリーを1200〜1500kcalに抑えます。1200kcalより少ない食事では、タンパク質、鉄分、カルシウムといった必須栄養素が欠乏しがちになります。健康を保ちながらダイエットするには、食物繊維と水分を増やすことで、普段の食事と同量の食物を摂取すべきです。また、飽和脂肪と糖類を控え、抗酸化物質を含め必須栄養素はきちんと摂るようにします。

少ない量の食事を数回に分けて食べるのは減量に有効ですが、それにはいくつかの理由があります。普通、食後はインスリン値が上昇します。多くのカロリーを摂取すると、それだけ多くのインスリンが分泌され、特に炭水化物が多い食事では顕著です。高いインスリン値は体脂肪の蓄積を促進し、食欲を増進します。しかし、少量の食事を数回に分けて食べれば、インスリン値が高くなることはなく、体脂肪の蓄積を防止でき、食欲を抑える効果もあります。

血糖指数は、血糖値を管理する必要がある糖尿病の人や、運動後に血糖値を回復させる必要のあるスポーツ選手に役立ちます。しかし、減量ダイエットをしている人には役立ちません。血糖指数が最も高い食品と最も低い食品で炭水化物が消化される速度の差はほんのわずかで、減量ダイエットをしている大半の人にとって、ほとんど意味はありません。血糖指数の高い食物を避けても減量が促進されることはなく、かえってビタミンやミネラルなど大切な成分を含む食品を排除することになってしまいます。

一部の専門家は、高タンパク質ダイエットを長期間続けることを推奨していません。高タンパク質ダイエットを長期間続けると、腎機能が損なわれ、高齢者に起こる腎機能低下の一因になるという研究結果もあります。腎疾患や肝疾患がある人は、高タンパクの食事を摂るべきではありません。

炭水化物を非常に低く抑えたダイエット(1日100グラム以下)も、ケトン酸の蓄積(ケトーシス)を引き起こす可能性があります。体が必要とする量のエネルギーを摂取しないと、体は脂肪を分解し、その過程でケトン酸をつくります。少量であれば、ケトン酸は何の症状も起こさずに腎臓からすみやかに排出されます。しかし、多量のケトン酸は吐き気、疲労、吐息の悪臭などを引き起こし、脱水によるめまいや電解質バランスが崩れることによる不整脈など、重い症状が生じることもあります。低炭水化物ダイエット(または他の減量ダイエット)をするときには、多量の水を飲んでケトン酸を体外に排出する必要があります。

低炭水化物ダイエットをすると、蓄えられていた炭水化物(グリコーゲン)がエネルギーに変わるため、最初の1〜2週間はかなりの減量がみられます。グリコーゲンが分解されると多量の水も排出されるため、さらに減量が加速されます。しかし、蓄えられていた脂肪がエネルギー源として使われはじめると、体重が減る速度は遅くなります。低炭水化物ダイエットは脂肪を多く摂りがちなので、カロリー摂取量が体の必要量より多くなってしまいます。この場合、グリコーゲンが使い果たされると減量は止まってしまいます。

GI値否定されますたw低炭水化物ダイエットの高脂肪食も。

1日の総摂取カロリーを減らすには、タンパク質や炭水化物ではなく脂肪の量を減らす方が簡単で有効です。脂肪の摂取量を1日あたり10グラム減らすだけで、約900kcalのカロリー削減になります。体重を減らすには、脂肪の摂取量を減らしたからといって、タンパク質や炭水化物を増やすべきではありません。しかし、脂肪の摂取量を減らす主目的は血液中のコレステロール値を抑えることであり、ダイエットをしている人では、その必要がある人もいれば、必要ない人もいます

悪玉悪玉と言われているLDLだって必要なものだということを忘れてはいけない。

血液中の余分なコレステロール動脈硬化の引き金となる、という事実はよく知られていることである。動脈硬化とは、動脈の内壁に血の固まりが形成され、血管が狭くなったり狭くなった血管が詰まったりする病気である。コレステロールは肝臓で作られ、細胞膜やステロイドホルモンを作るため低比重リポ蛋白質(LDL)の中に入って細胞へと運ばれていく。そして細胞にたどり着くと、細胞膜にあるLDL受容体(LDL-R)を介して細胞の中へ取り込まれていく。この働きはコレステロールを含むLDLを血液中から減らすこととなる。LDL受容体の異常やコレステロールを多く含む食事(肉、卵、バター等)の過剰な摂取によりLDL受容体の働きが悪くなると、血液中に余分なLDLコレステロールが蓄積し、動脈硬化の発症につながっていく。このように血液中や組織に余分なコレステロールがあることは好ましくないため、肝臓からコレステロールを運び出すLDLが「悪玉」、逆に肝臓へ戻す高比重リポ蛋白質(HDL)が「善玉」と呼ばれているのである

http://eprots.protein.osaka-u.ac.jp/cgi-bin/eprots_jp.cgi?PDB%3A1N7D

食物繊維を多く含む食品を増やすことで、高脂肪食品など高カロリーで満腹感が少ない食べものを減らすことができます。しかし、グアルガムやセルロースといった食物繊維のサプリメントは、減量には効果はありません。

食物繊維は便秘対策オンリーですか。

市販されている飲料タイプのダイエット製品の中には、タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルが適切な比率でバランス良く配合されているものもあります。しかし、それ以外の製品では、甘くておいしい飲みものにするために炭水化物の比率が大きくなっており、必ずしもカロリーが低いとは限りません。逆に、こういった飲料タイプのダイエット製品は、体重を増やそうとしている人向けのサプリメントとしての方が役立ちます。

なんてあんまりなお話・・・